コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

デート【28】 ( No.70 )
日時: 2013/07/07 10:56
名前: ゴマ猫 (ID: tHinR.B0)


「占いの館へようこそ。今日はどのような事を占うのかね?」

やって来たのは、よく当たると評判(らしい)の占いの館。

怪しい黒のマントに身を包んだお婆さんが、俺達に問いかけてくる。
占い師っていうより、童話に出てくる悪い『魔女』って言った方がイメージにぴったりだ。

しっかし、占いとかって何占ってもらえば良いんだろ?
自分の未来とか? 恋人同士なら相性とか、今後2人はどうなる? みたいな事聞くらしいけど。
隣りに座っている橘さんを見ると、何やら考え事している感じで、まだ占ってもらう事が決まってないみたいだ。

「ふむ……決まってないようなら、先に私の方であんた達の今後を占ってやろう」

占い師のお婆さん(占い婆)が、時間がかかりそうなのを察して、勝手に占ってきた。

「あの……手とか見たり、カード使ったりしないんですか?」

占い婆は、ジッと俺の目を見るだけで、手相を見たり、カードを使う気配がない。

「そんな事せんでも、目を見ればわかる」

1分ほど占い婆と見つめ合うと(変な意味ではない)占い婆はふぅっとため息をつき、話し始める。

「お前さん、この先に大きな苦難が待ってるかもしれん。……いや、もう始まっているのかもしれんが」

——驚いた。
心の中に隠している事を見破られたようで、思わず目が見開いてしまう。

「だがその時こそ、お前さんの強い気持ちが大事になってくる」

強い気持ち……か。

「桜井君、大丈夫? 顔色が悪いよ?」

「あ、あぁ、大丈夫だよ。なんか悪い結果だと、不安になっちゃうよね」

心配させないように、なるべく明るい声音と表情で返事をする。
——いけない、いけない。せっかく2人でデートなんだし、暗い顔は厳禁だよな。

「では、次はそこのお嬢ちゃんか」

「は、はい」

占い婆は橘さんの目をジッと見つめて、少しの沈黙の後、ゆっくりと話し始める。

「お嬢ちゃんは、近い未来に、再会する人物がいるようだな。その人物は、お嬢ちゃんが一番会いたかった人かもしれん」

橘さんが、一番会いたかった人? 誰だ?
すっごい気になる。

「さて、占う事がもうないなら次の客人を呼ぶが?」

「あっ、待って下さい。あの……わ、私達の相性とかって占ってもらえますか?」

橘さんのその言葉を聞いた瞬間、俺の心臓が跳ね上がった。
……つまりその、気になる人として、俺の事を見てもらってるという事で良いんだろうか? ……って、いくらなんでも、それは自意識過剰か。
占い婆はしばらく俺達を見つめた後、話し始める。

「ふむ、相性は良いぞ。お互いよく似ているようだな。ただ、遠慮しあってうまくいかない事もあるようだから、そこは気をつけなさい」

……すっごい恥ずかしいんだが。頬を軽くかきながら隣りを見ると、橘さんも同じような気持ちだったのか、顔が真っ赤になっていた。

「もう良いか? では、次の方ーー!!」


占いの館を出ると、橘さんが話しかけてきた。

「さ、桜井君、ちょっとここで待ってて!!」

「えっ、あっ、ちょっと」

言うが早いか、橘さんは駆け出していってしまう。……なんかあったのか? 
近くにあるベンチに座って、しばらくその場で待っていると、一組のカップルが占いの館から出てきた。