コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 羊との再会【5】 ( No.8 )
- 日時: 2013/06/02 20:44
- 名前: ゴマ猫 (ID: ugb3drlO)
誰もが寝静まる深夜2時、俺は自宅から歩いて5分の所にある羊神社に来ていた。
ここに来た理由は他でもない。
最近のおかしな現象の発端がここにあるんじゃないかと思ったからだ。
おかしな現象とは、俺の物忘れが激しくなった事。
少し前までこんな事はなかった。
だが最近じゃ、レポートの提出から、帰りの夕飯の買い物まで本当に色々な事を忘れている。
小さな事だけど、覚えてないってのは気持ちが悪い。
そう、忘れていると言うより覚えてないのだ。
「…………」
石段を上がり、鳥居をくぐる。
夢で見ていた光景とまったく同じ。
さっき見た夢が、無性に気になってここまで来たのだ。
「……ここで確か、羊を見たはずなんだが……」
夢の中で羊を見た場所を探す。
夢では入り口付近に居たが、どうやらこちらでは居ないようだ。
「……ってか、こんな夜中に何やってんだ俺? 大体、こんな市街地に羊なんて居るわけないじゃないか」
何か確信めいたものを感じてここまで来たが、よくよく考えれば羊のせいではなく、何かの病気って可能性もあるじゃないか。
「……帰ろうかな」
そう思った時、目の前を青白く光るものがフワフワと横切った。
一瞬、見間違いかと思ったけど、確かにその光は神社の裏側へと消えていった。
「あ、あれは夢で見たやつ」
俺は無意識の内に、光を追って駆け出していた。
裏側に着くと、青白く光る物体が瞬いていた。
そして次の瞬間、パッと消えてしまった。
「もし、夢の通りなら……」
そう思い、神社の入り口付近に戻ると、そこには真っ白な毛皮の羊が居た。
「お、お前……夢の中に出てきた羊!!」
「やっと来たのか。随分と遅かったのだな」
羊は見た目と裏腹の低音ボイスでそんな事を言う。
ってか、羊が喋ってる!!
一応、確認のため頬をつねってみるが……痛い。
どうやら現実らしい。
「……なぁ、もしかしてなんだが……最近俺の物忘れが激しくなったのってお前が関係してるのか?」
恐る恐る尋ねてみる。
羊の表情は変わらないが、こちらを見て口元が動きだす。
「やっと気付いたのか? そうだ。前に会った時罰を与えると言っただろう」
前に会った……?
じゃあ、あれは夢じゃなかったって事か。
「じゃあやっぱり、ここ最近の出来事は、お前の仕業か!!」
「相変わらず無礼な奴だな。その様子だと、反省して謝罪しにきた訳ではなさそうだな」
羊は呆れたとでも言わんばかりに話す。
待てよ……。
ここで羊を怒らせて、このままだったら大変困る!!
ここは1つ反省したと見せて元に戻してもらうのが賢明だな。
「あっ、いや、羊様。先日は大変失礼しました!! 深く反省していますので、元に戻していただけないでしょうか?」
深々と羊に頭をさげる。
どうよ? 元に戻るためならプライドは捨てる!!
「……ふむ。お前がそこまで反省してると言うならば、考えてやらん事もない」
よっしゃあっ!! 作戦成功!!
実のとこ、俺が羊に何をしてこんな事になってるのかよくわかってないのだが、謝って済むならそれで良いと思う。
「……じゃあ」
「ただし、1つ条件がある」
「へっ?」