コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

デート【32】 ( No.81 )
日時: 2013/07/13 00:55
名前: ゴマ猫 (ID: QXDbI9Wp)


雷が鳴りだすとまもなくして、叩きつけるような激しい雨が降り出してきた。

「ちょっとやみそうにないね」

「……うん」

お土産を売っている店の中に入り、俺と橘さんは雨宿りをしている。
橘さんは、やっと立てるようになったようで、今は俺の背中からおりて、店の窓から外を見ている。

——そういえば、さっきは意識しないようにしてたけど……俺、橘さんをおんぶしてたんだよな……ちょっとだけど、手もつないだし。
今さらだけど、恥ずかしくなってきた。

「桜井君?」

「うおっ!?」

気づくと橘さんが俺の目の前に居た。

「どうしたの?」

「い、いや、何でもないよ」

慌てて平静を装うが、どうしても橘さんの顔を見ると、胸が高鳴ってしまう。
橘さんは、少し不思議そうに俺の顔を見つめていたが、何か言いたい事があったのか話しはじめる。

「そろそろ……帰らないと、遅くなっちゃうかも」

店内にある壁かけ時計に目をやると、時刻はすでに18時を過ぎていた。
帰るのに3時間かかる事を考えると、確かにそろそろ出ないと遅くなってしまう。

「そっか、すっかり忘れてたけど、帰りも同じ時間かかるんだよな」

——でもこの天候じゃ、うかつに動けないな。窓ガラスに当たる雨粒の音を聞きながら、ゆっくりと時間は過ぎていった。

————

やっと雨が小降りになった頃には、日もたっぷりと暮れてしまい、パーク内も閉園の時間が迫っていた。

「もう少し早く小降りになると思ったんだけどなぁ」

「仕方ないよ。天気だけは、どうしようもないもん」

やや小走りで、テーマパークを出た俺達は急いでバス停へと向かう。
雨が降るとは思ってなかったので傘を持ってこなかった俺達は、パーク内でマスコットキャラが描かれた傘を買った。
……これもお揃い……だよな?

バス停に着くと、俺は時刻表を確認する。

「えーっと……19時……19時」

指でなぞって探していくが……19時のバスが見当たらない。

「さ、桜井君。……バス、18時で終わっちゃってる」

「えっ?」

日曜日のバス運行は、この地域では18時までしかないらしく、平日でも20時までという早い時間で終わるみたいだ。
……見間違えたみたいだ平日と休日を。

「……ご、ごめん、橘さん。俺、時刻表見間違えてたみたいだ」

ガックリと肩を落として橘さんに謝る。

「そ、そんな、気にしないでも大丈夫だよ。他にも帰る方法はあると思うし」

橘さんはそう言って、俺を励ましてくれる。
……あぁ、大事なデートの最後に何やってんだ俺。