コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- 羊との再会【6】 ( No.9 )
- 日時: 2013/05/04 22:38
- 名前: ゴマ猫 (ID: S9l7KOjJ)
深夜3時……俺は羊神社を後にして帰路についていた。
なんでも俺の異変は、羊にかけられた呪いらしい。
放っておくと、3ヶ月後には俺の記憶が全部なくなって真っ白。
つまり、何もかも忘れて思い出す事もできなくなる。
初めて羊神社に行ってから1ヶ月が経った。
最近の物忘れの原因は、そのせいだろう。
「はぁ……にしても、あの条件はな……」
呪いを解くために出された条件は、『とある女の子を、心の底から笑顔にする事』だった。
その女の子には、羊がお世話になった事があるんだとか。
それで恩返しがしたいが、羊は夜しか出てこれないらしく、俺に頼んだという訳だ。
女の子の似顔絵? 的な物はもらったけれど、これだけで探すのは、まるで雲をつかむような話しだ。
名前も、年齢も、住んでる場所すらわからない。
一体どうしろって言うんだ? 気分は犬のお巡りさんだ。
泣きたくなってくるね本当。
そんな事を考えていると自宅に着いていた。
こっそり出てきたため、見つからないように部屋に戻らないと、杏あたりにうるさく言われてしまう。
——ガチャ——
ゆっくりと扉を開けて、中に入る。
静まり返った家の中へそろり、そろりと音をたてないように歩く。
やってる事はまるで泥棒みたいだ。
2階へ上がろうとした瞬間、廊下の電気がパッとついた。
「…………」
「……何やってんの? 洋一」
一番見つかりたくない相手、杏に見つかってしまった。
「い、いやぁ〜。最近、運動不足だからさ〜ちょっと散歩をしてきたんだよ」
あくまでも明るく、「怪しくなんてないんだよ」っという雰囲気を全面に出したが、杏は訝しげに見てきた。
「……ふーん。どうでも良いけど、夜中に徘徊して周りに迷惑かけないでよね」
杏は俺に冷たい言葉を投げつけると、栗色のショートカットの髪を揺らして部屋へ戻っていった。
……泣いても良いですか?
部屋に戻った俺は、精神的な疲れのせいか泥のように眠った。