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Re: 彼は天邪鬼 【オリキャラ募集中】 ( No.157 )
日時: 2013/06/22 23:38
名前: 莉遠 ◆gX.y9FxA6g (ID: gYu/uyWc)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode

NO.27『だから言ったじゃないか』


人間は嫌いだ。人間は信用できない。


昔はそうでもなかった。自分にいつも親身になってくれる両親がいて、心の底から笑いあえる友達もいて、熱心に指導してくれる先生もいた。彼らのことは信用していた。


だが、そんな気持ちもあの事件、たった一つの事件で消え去ってしまった。


あれから友達は同情してくれた、だがそれはただ自分を異色の人間として見ていただけだ。先生も自分に気にかけてくれた、だがそれはただ自分の生徒が問題を起こすのを危惧していただけだ。



雛罌粟:お願いします、またもう一度捜査をしてください。

警察官:あのね、君は犯行現場にいたくせに犯人の顔を思い出せないんでしょ?犯人は証拠も残してない、目撃証言もない、怨恨から色々な人を調べても皆アリバイがある。これ以上調べても無駄なの。

雛罌粟:それが一般市民に対する態度ですか?

警察官:何もやってないわけじゃない。ちゃんとポスターで情報提供を呼び掛けてる。悪いけど、3年前の事件より、今の事件の方が解決の可能性はだいぶ跳ね上がるんだよ。それで多くの人が幸せになる。勿論、君の事件だってちゃんと扱っている。だが重点が置かれなくなるのくらい理解してくれよ。


と言いくるめられた。最低だ。一般市民の味方だと豪語する警察でさえこういう態度をとる。余計人間不信になってしまいそうだ。



涼太:よっ、また断られたって感じだな。

雛罌粟:・・・嫌味か?

涼太:別に嫌味じゃないよ。理不尽な人間だとそうなると思っただけだよ。

雛罌粟:そうか。・・・ていうか、お前なんで警察署にいるんだよ。


ここは警察署。雛罌粟はそういう用があるのだが涼太はなぜだろうか・・・


涼太:ああ、近くで見つけたひったくり犯をしばいたら事情聴取でここまで連れてこられちゃってね。そうしたらお前と遭遇ってことよ。

雛罌粟:・・・・・本当に偶然か?

涼太:偶然。



雛罌粟は若干不快に思ったため、何も言わずにそこから立ち去ろうとした。



涼太:お前、まだ何も変わってないみたいだな。人間は信用できない。前そう言ったよな。

雛罌粟:・・・言った。それがどうした。お前には関係ない。

涼太:関係ある。なぜならお前は俺のクラスメイト。たかがクラスメイトだけどそういう縁があるんだよ。

雛罌粟:そういうのは嫌いだ。不愉快だ。お前のことは嫌いじゃない。だから今のうちに俺の前から消えてくれ。殴りたくなってきた。

涼太:ま、ここで殴るのはまずいわな。警察だからな。だが、奇遇だな。俺もお前のこと殴りたくなってきたんだよ。外出ようぜ。



雛罌粟ならまだしも涼太がこんなことを言うのは珍しい。まあそんな感じで2人は外、警察署から少し離れた空き地に行った。



雛罌粟:こんなことをする時間はないと・・・


とすべて言いかける前に涼太は雛罌粟をぶん殴った。とても怒りに満ちた目をしている。雛罌粟はその場に尻をついた。


雛罌粟:お前・・・何を・・・・・

涼太:お前何考えてるんだよ!まだ警察に通ってるってことはまだ過去の事件を引きずってるってことだろ?そんでそうなってる理由を理不尽な人間なせいにする!お前のやってることはただの我儘だよ!

雛罌粟:何・・・だと・・・・・


涼太がこんな大きな声で人を怒るのは相当珍しい。そのことに少し驚いているが、だがそれよりやはり自分のやっていることがただの我儘だと言われた怒りの方が大きい。


雛罌粟:お前にはわからないんだよ!親がころされた俺の・・・

涼太:わかんねぇよ。ただ人間が嫌いとか言ってるけどそのお前だって人間だろ!人間だから・・・人間だからまだ立ち上がれるんだよ!


そう・・・どれだけ高尚なことを言ったとしても、雛罌粟は人間なのだ。俺と違って・・・


涼太:人間だからまだ居場所なんていくらでも作れるだろ!ただお前がそれを放棄して現実から逃げてるだけだ!

雛罌粟:何お前が熱くなってるんだよ。お前がそんな風に頭に血を上らせるのは珍しいな。だけど・・・


雛罌粟は立ち上がって涼太を殴った。なんかの青春ドラマみたいな展開になってきた。


雛罌粟:どんな風に言ったって俺は変わらない。犯人を見つけ出して復讐する。それが俺の生きる目的だ。

涼太:・・・・・じゃあ、仮にそれを達成できたらどうする?


不意を突かれた。雛罌粟は何も返せなかった。



なんでだろうか、人間は嫌いだ。だけどこいつのことはなぜか嫌いになれない。こいつのことはなぜか・・・信用できる。



涼太:だから言ったじゃないか。お前がやってんのはただ自分が弱いってことを演出してるだけだ。そんな作り上げられた悲劇なんて、誰も感動するわけねぇんだよ!


涼太はふーっと息を吐いて落ち着いた。


涼太:とにかく、勿論犯人は悪い。捕まるべきであり、警察もちゃんと捜査するべきだ。だけどそれでも、今のお前は間違ってるよ。



人間なのに・・・人間を拒絶するなんて・・・・・・







続く