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Re: 少女と少年の恋語り『オリキャラ募集終了』 ( No.13 )
日時: 2013/06/01 13:25
名前: 四ノ宮 ◆8HAMY6FOAU (ID: NRm3D0Z6)

Scene4____『 桐生くんと優くん 』____。


それは、放課後のことだ。
デコちゃんとは帰り道が違うから、正門のほうで別れた。
と、正門を少し過ぎた道の所にに何やら見覚えのある背中が。

「あれ……本当、どこだろ?……うわ。俺、馬鹿?」

目の前には辺りをキョロキョロ見渡す転校生の桐生 佳主馬くん。
何やら、探し物のようだが見つからないようだ。

「……大丈夫?」
「ぅわ!……あ、君」

声をかけたら、桐生くんは驚いたように此方を向いた。

「何かなくした?」
「あ、うん。……ちょっと、指輪を」

そう言って、困ったように微笑む桐生くん。
あたしは何と無く、彼にとっての大事な物なんだなと思った。
だからあたしは、その場にしゃがんで地面をキョロキョロ見渡した。

「え?あ、あの」
「ここら辺に落としたの?」
「あ……うん。カランッて音がしたから、多分」
「そっか」

そう言ってから、あたしはまた地面を見るのに集中した。
ここの道は割と広くて、小さい物を落としてしまうと意外と見つかりにくいものだ。

「…………」

しばらく探していると、桐生くんもしゃがんで一緒に探し始めた。
なんとなくだけど、少し嬉しかったような気がした。
どうしてだか、あたしには分からなかったけど。

「……ん?」

その時。
電柱の影の草むらで、何かが光ったのが見えた。

「……」

すすすすすっと近づいて、草むらに手をのばした。
小さめの硬い物が指先に触れて、あたしはそれをキュッと掴むとそっと取り出した。

それは赤い小さい石が埋め込まれたシルバーの指輪。

「……桐生くん。」
「え?」
「あった」

呼びかけて、すっと指輪を差し出すと桐生くんの顔がぱあっと明るくなった。
そして、指輪を摘まんでいるあたしの手ごとギュッと握りしめた。

「あっ、ありがとう!奏代さん!」
「あ、うん」

あたしの名前を知っていたのは驚きだった。
それに、こんなに喜ぶとは……さぞかし大切な物だったんだろう。

「本当にありがとう。良かったー……無くしたら優になんて言われるか」
「優……?」
「え?」

優という名前をあたしは知っていた。

「佳主馬。何してるの?」
「あ、優」

その声を聞いて、あたしは振り返った。
そこには思った通りの人物。

「……久しぶり。優くん」
「君……なんで、佳主馬と」
「え……?優と奏代さんと知り合いなの?」

優くんは桐生くんのその声に答えない。
あたしをキッと睨みつけたまま。
彼の視線は冷たい。
それもしょうがないかと思うけど、なんとなく哀しい。

「……流石だね」
「優?」

突然、優くんがあたしの方に近づいてきた。

「佳主馬を誘惑しようって?」
「……」
「君はそういう人だよね、散々弄んだあげく捨てる……
佳主馬もそうしようって?」
「……」
「っ!……なんか言ってよ!」

あたしは口を開かない。開くことなんてできない。
あたしが言えるのは、たった一言だけ。

「……ごめん」
「っ……!?……」

あたしがそう言うと、優くんは一瞬目を見開いてから悔しそうに顔をしかめた。
あたしは俯いて、自分の足を見つめる。
手に力が入るのがわかった。ギュッと手のひらを握ると、爪が食い込む。

「……行くよ。佳主馬」
「あっ、待ってよ!優!」

先を歩く優くんを桐生くんが追いかける。
あたしはその背中をずっと眺めていた____。



(ごめん)
(あたしには、)
(これしか君にいう事が)
(できないよ)