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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 少女と少年の恋語り『オリキャラ募集』 ( No.19 )
- 日時: 2013/06/03 20:34
- 名前: 四ノ宮 ◆8HAMY6FOAU (ID: J0PYpSvm)
Scene4.5____『 心が泣く。悲しい、寒い 』____。
複雑な気持ちがあたしを支配していた。
「ただいま……」
家の扉を開けて中に入ると、知らない男の人の靴と赤いヒールとが並んでいる。
タバコの匂いがあたしを包み、微かに空気が白くなっていてあたしは玄関の側の小窓をすっと開けた。
「……」
不自然に閉まっているリビングのドアの前を通り過ぎて、自室に向かう。
自分の部屋に入った途端。一気に力が抜けて、ドアの前に座り込んだ。はぁ、と
息をはいて、のそのそとカバンの中から携帯を取り出した。
「……優、」
あの頃、あたしは彼のことを優と呼び捨てしていた。でも今となってはあたし達は他人だから優くんと遠回しに呼んでいた。それでも、苗字で呼ぶのはなんとなく距離が遠い気がして、あたしは嫌だった。彼を遠ざけたかったのに。あたしは彼を名前で呼ぶ。
「あたしは……最低だ」
彼を離していたいけど、彼に側にいて欲しい。いや、違う。
誰でもいい。誰か、側にいて欲しい。
「っ……寒い、なぁ」
体育座りで、あたしは自分の膝を抱え込む。
温かい場所をあたしは求める。
身体は温まったって、心は冷えている。
どうしようもなく、あたしは________
________『愛』を、求めている。
ギュウと、自分の膝を抱える力を強めた。
寒い。
寒いよ。
誰か、助けてよ。
孤独は嫌だ。
一人は嫌だ。
側にいて。
優しくなくなんていい。
あたしの________……
「側に、いてよ…………」
一筋の雫が、あたしの頬を伝った。
何度となく流したそれは、
乾くことなど知らず、
あたしの瞳から流れ続けていた________。
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