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Re: 少女と少年の恋語り『参照100突破!』第5話更新! ( No.30 )
日時: 2013/06/06 20:24
名前: 四ノ宮 ◆8HAMY6FOAU (ID: kUrH10r6)

Scene6____『 君は優しいね 』____。



あたし達、2年3組は只今作戦会議中である。

「バレーは優勝狙えるわ。うちのクラスには4人もバレー部がいるもの」
「知ってけど、部員は二人までしか試合に出れない」
「それは分かるわよ。だから、どうこの2人を活用していくかってことで……」

クラス委員長の高本くんと、副委員長の早苗・R・イリアちゃんが難しそうに話しているのを、クラス全員が見守る中。
突然の大きい声で会議が中断された。

「はーい!皆ぁ、ちゅーもーく!!」

可愛いピンクのジャージを着込んだ、我らが担任の森島 郁子先生。
通称、森ちゃん。

「いーい?今日の球技大会わぁ学年優勝すると……願いを一つ!何でも叶えられまーす!!」

森ちゃんの発言に、クラスの皆が凍りついた。
デコちゃんなんか、口があいてる。

「あの……先生?それは、どういうことで……」

桐生くんは苦笑いしながら、森ちゃんに言った。
なんでも、願いが一つ叶うなんて。
そんな簡単なことがあるずは……。

「そのままの意味よぉ?校長先生のお宝に、何でも願いの叶う仏像があるみたいなの。それでね、優勝したクラスには!願いをお願いする権利が与えられるらしいわ!!」

「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」」」」

桐生くん転校以来初めて、
クラスが炎上した___。



「絶対勝つわっ、私は絶対に勝つ!!!」
「イ、イリアちゃん……燃えてるよ」
「ほんとだ」

早苗グループ令嬢は、今、真っ赤に燃えていました。

あたしはジャムパンをもしゃもしゃしながら、
その様子を見ていた。
デコちゃんは「熱いっ、熱いよぉ!イリアちゃん!」とか言って、
自分のでも火を出して、敵を見据えていた。
相手グループの皆さんが怖気ずいてる。

球技大会初戦の一発目は、女子バレー。
我らが3組VS運動神経抜群の女子ばかりがいる1組。

イリアちゃんとデコちゃん。
あと、バレー部2人に運動神経が比較的にいい女子2人が、
今相手チームと戦っている。

あたしは勿論、待機組。
バレーは動くから嫌だ。
運動は全部動くけどさ。

応援席にあたしは座っていた。
小さくなったジャムパンをぽいっと口に放り込んで、
試合を見つめる。
そのとき、近づいて来た影があたしの横に座った。

「桐生くん。男子はどうしたの?」
「終わったんだ」

微笑みを浮かべた桐生くんだった。
綺麗な汗を流しながら、微笑む彼はなんとも爽やかだ。

「あれ?奏代さんはバレー出ないの?」
「んー……球技嫌いだし、運動も嫌い。」
「それは答えになってないよ……」

苦笑する桐生くんを一瞥して、あたしはふとある事に気がついた。

「桐生くん。」
「ん?なに……」

ふわっと、桐生くんの茶色の髪に自分のタオルをのせる。
それから、タオルの裾をつまんで桐生くんの目元に持っていく。

「えっ、え、ちょ。奏代さっ!」
「動いちゃダメ」
「っ……!」

キュッと空いてるほうの手で、桐生くんの腕を掴んで逃げようとする身体を抑えた。それから、優しく瞼の上の汗の雫を拭き取った。

「よし」
「え……っと。なんだったの?」

コシコシと目元をこする桐生くんを見ながら、
あたしは言った。

「汗が」
「汗?」
「うん。目に入りそうになってたから」
「え」
「汗って、目に入ったら痛いし。知らせたほうがいいんだろうけど、桐生くんが動いたら落ちそうだったんだ」
「……」

そう言ったら、桐生くんは俯いた。
あたしは、黙り込む桐生くんの顔を覗き込んだ。
何か、まずい事をしただろうか。
少しだけ、緊張する。

でも、その緊張は杞憂に終わったようだ。

「ありがとう、奏代さんは優しいね!」

彼はそう言って、
とても優しく笑ったのだった。





________ドクンッ________







心臓が、あり得ない音をたてたのを

あたしは感じていた。