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Re: 少女と少年の恋語り『第6話更新!』 ( No.33 )
日時: 2013/06/08 20:48
名前: 四ノ宮 ◆8HAMY6FOAU (ID: gWH3Y7K0)

Scene7____『 高鳴る鼓動は止まらない 』____。



あたしはどうかしたのだろうか。

『奏代さんは優しいね!』

微笑まれて、
高鳴ったあたしの鼓動。



________ドクンッ________




今まで、感じた事もないこの高鳴りを、
あたしはどうすればいいのだろうか。



「弥生ちゃんっ!パスっ!!」
「……っ!!」

味方からのパスを受け取ったあたしは、
相手のディフェンスはあたしを通られまいと両手を広げる。

「……」
「ぅわっ!!」

そんなのあたしには関係なくて。
スッと相手をドリブルを打ちながら通り抜ける。
それから、ゴール下まで一直線。

パシュッ____

あたしがほおったボールは弧を描き、
そのままリングに入って行った。

『うわぁぁぁぁ!!』
『すげぇ!あいつ、何点目だよ!!』

そんな歓声が聞こえた。
だけど、あたしは下を俯き加減に向いていた。

「弥生ちゃんっ!すごいです!!」
「流石ね!本気出すとすごいわ!」

デコちゃんとイリアちゃんがあたしの肩を叩いて、
褒めてくれる。

「弥生ちゃんの活躍で、バスケは優勝間違いなしね!」

イリアちゃんのそんな声に、
あたしはやっと顔をあげた。

息がきれてきた。
前半飛ばし過ぎた。

「?大丈夫です?すごく顔が真っ赤……汗も……」
「えっ、本当ね。……貴方が汗かくほど動くなんて……」

イリアちゃんが困惑したように言った。

あたしは基本、体育は嫌いだ。
それは勿論動くのがめんどくさいから。
けして運動が出来ない訳じゃない。
むしろ、勉強よりか得意だ。
あと、もう一つ運動するので嫌いなのは汗をかくこと。
あのベトベトした感覚がとても嫌いなのだ。
だから、普段の体育では本気を出さない。適当に流すなどをしている。

だけど、そんな汗をかくことが嫌いなあたしが今、
服まで濡らし、髪からも汗が滴っている。

「後半戦を始めます!!選手は位置へ!」

水分補給をしっかりして、
あたし達は女子バスケの後半戦に臨んだのだった。



ピッーーーー!!

「やったーー!!優勝だぁぁぁ!」
「い、イリアちゃん……苦しっ」

試合終了を告げる笛の音と共に、
イリアちゃんがデコちゃんに抱きついた。

あたし達、2年3組は女子バスケで優勝した。

「……はぁっ」
「やったわーー!!弥生ちゃんのおかげよー!」

あたしがボーとしていると、
今度はあたしが抱きつかれた。
それと同時にあたし達2人は床に倒れた。

「イリアちゃん、……お、も……」
「それ以上言ったら、ぶっ飛ばすからね!」
「……うん」

笑顔で言われたあたしは口を閉じる。

「にしても、今日はどうしたの?」
「……え?」
「いつもは、絶対こんなに積極的に体育には参加しないじゃないの」
「……」

イリアちゃんの言葉に、
あたしは答えられなかった。

どうしてだろう。
あたしはなんで、
こんなに動いたんだ……。
ただ無心に、
あたしは動いていた。

どうして……。

ふっ、とあたしは思い出した。




『奏代さんは優しいね!』




「っ?!」
「弥生?!」

あたしの顔が急に熱く熱をおびはじめた。
真っ赤であろうあたしの顔を隠すために、
あたしはイリアちゃんを押しのけて立ち上がった。

「弥生ちゃん!!」
「どうかしたの!?」
「っ……ちょっと、トイレ!!」

呆然とする2人を置いて、
あたしは走り出した。


どうしたんだっ?!あたし!


あたしはただただ、
知らない感情に戸惑っていたんだ。


(どうしたんだろう、弥生ちゃん)
(さぁ……急にトイレに行きたくなったんでしょ)
(うん。多分、違うと思うよ?)