コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ロイ〜ケダモノと呼ばれた少年〜 ( No.100 )
- 日時: 2013/07/07 09:40
- 名前: ぴんくのうさぎ ◆v8I1Bhr5SU (ID: DFRKYlWL)
はい、そしてやってきました七夕当日!!w
締切って訳ではないですが、死ぬ気で書き上げました←
なので、少々雑かもしれませんw……あ、それはいつものことだって?……すみません。
とりあえず頑張りました。それでは見ていってください☆
(ちなみにこれは、2013/7/7に投稿したものです)
コメ返は英検の面接が終わってからします!!しばしお待ちください((汗
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(前回の話>>90)
特別行事企画 「七夕当日」
「……ふん♪ふふふん♪」
鼻歌交じりの上機嫌な様子の少年が、笹を飾っていた。
……そう、今日はついに七夕当日。少年の待ちに待った、7月7日の夜がやって来たのだ。
「ロイー!ご飯できましたよー」
かさかさと笹をいじっていると、下からいつものように女性の声がする。
「……あー、あとちょっとだけ待って!!これだけ飾ったら行くかr「不味くなりますよ?」
「……分かったよ……今行く」
女性の凄んだ声に負け、最後の一枚の短冊を机の上に置くロイ。部屋を出る前にもう一度名残惜しそうにその短冊を見ると、ゆっくりとドアを閉めた。
「……お待たせー!」
下に降りると、珍しくエプロン姿の女性が 手を洗いながら
「いえいえ、七夕竹の装飾お疲れ様でした。今日は七夕ということで、素麺を用意しましたよ」
と言って笑った。
テーブルの上に乗っていたのは、涼しげなガラスのお皿の上に 星型の薄焼き卵やイクラで彩られた真っ白な素麺だった。
「……わぁ……!!おいしそうだねー」
「でしょう?今年は少し凝ってみましたから」
自慢げに言う女性と目を輝かせるロイ。二人共、席に着いて箸を持つと、同時に
「「頂きます!!」」
と言って、素麺に箸をつけた。
麺を軽くつゆにくぐらせ、そのままつるつるっと食べる。みるみる頬がピンク色に染まっていくロイ。喉を細長い麺がなめらかに通っていくのを感じながら、感嘆の声をもらした。
「んー、おいしい!!」
同意を求めようと、ほころびた顔を女性の方に向けたロイ。しかし、女性はまだ麺を口にしていなかった。
「……あれ、お、お母……さん!?な、何してるのッ!?」
「…………ふふ、これだけじゃあ、物足りないですからねぇ……♪」
すごいスピードで手を小刻みに上下に振り、自分の素麺に一味唐辛子をかけていく女性。真っ白な素麺が、真っ赤に染まっていく。女性は少し、狂気と化していた。
「お、お母さん、怖い!!怖いって!!」
「……ふふふ。あなたは自分の素麺だけを食べてればいいのよ、ロイ。別に食べさせようって訳じゃないんですから♪」
……そういう訳では無いんだが。
とにかく、そう言いながらも手の動きを止めない女性。元の白かった麺は、唐辛子のせいで原色がわからなくなるほど赤くなっていたのだった。
「……ごちそうさまでしたー!」
真っ赤になった得体の知れない物体を、美味しそうに食べる女性。そして、それを横目で見ながら平静を装って自分の素麺を食べる、という極めて高度な技をなんとかやってのけたロイは、『普通』に美味だった素麺が盛られていた ガラスの容器を台所へと運んでいった後、そのまま自室へと逃げるように駆け込んで行った。
……ぱたん。
ドアを閉めると、少年は力尽きたようにその前に座り込んだ。
「……見るだけならまだしも……。……あの匂いまではキツいよ、お母さん……」
ふぅ、とため息をつくロイ。あの唐辛子の匂いが相当こたえたようだ。しばらくぼーっと天井を眺めていた。
「……はっ」
慌てて頭を強く振る少年。思わず寝そうになったのに気づいたようだった。
「まだ寝ちゃダメだ!……せめて、あの短冊だけは飾っておかないと……!!」
気力だけで自分を奮い立たせ、やっとのことで立ち上がる。机まで、あと2メートル。
「……うう……。机がいつもより遠く感じる……」
そろそろと、足を動かす少年。机まで、あと1メートル。
「……あと……。あとちょっと……」
机まで、あと50センチ。
「ぬうううっ!!」
手を伸ばすロイ。短冊まで、あと10センチ!
「……掴んだッッ!!」
その瞬間、安心してしまったのか、少年はいきなり力が抜け、短冊を握り締めたままガクッと机に突っ伏して寝てしまった。スースー、と柔らかな寝息を立てるロイの寝顔は、とても幸せに満ちていた。
……数分後。彼の背中に、ふわっと布団がかけられた。かけたのはモチロン、さきほどまで真っ赤な唐辛子素麺をすすっていた金髪の女性だ。
女性は、ロイが気持ちよさそうに寝ているのをもう一度確認すると 部屋から去ろうとする。……しかし、ふとロイが何かを握りしめていることに気づいた。
「…………これは?」
ロイを起こさないように、そっと短冊をロイの手から抜き取る。不思議そうな顔をしていた女性だったが、そこに書いてあった内容を読んで ふっ、と笑った。
そしてそのまま入口付近に置いてあった笹に引っ掛けると、今度こそ部屋を出ていった。
電気が消されて闇に包まれた室内に置かれた、七夕竹。
『お酒が飲みたい』『辛いもの大食い選手権に出てみたい』『世界一周旅行をしてみたい』『宇宙人に会いたい』とかいう大人が書くとは思えないような願いが飾られた笹の中に、一枚だけ 明らかに雰囲気が違うような願いがあった。
女性が今さっきみたロイの願い。……それは。
『来年も、今年と同じように お母さんと一緒に七夕を過ごしたい』
夏の大三角と天の川が、晴れた夜の空で綺麗に輝いていた。
特別行事企画 ■七夕編■〜END〜