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Re: ロイ〜ケダモノと呼ばれた少年〜 ( No.104 )
日時: 2013/07/10 21:59
名前: ぴんくのうさぎ ◆v8I1Bhr5SU (ID: /BuoBgkT)

いつぶりの投稿でしょう。かれこれ10日も本編放置してました←
久しぶりすぎて文の書き方も崩壊しかけております。いずれ崩壊します、ご了承ください(;´Д`)

本当に、投稿遅れてすみません_○/|_

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#15 「紫色の哀愁」

〜マドリナ学院 保健室〜

「……ん……」

うっすらと少年のまぶたが開く。最初に見えたのは見知らぬ天井。

——何だか……不思議な夢を見ていた気がする——

少年がボンヤリと天井を見つめていると、青い髪の少年が

「……あ、ロイ。起きたのか……?」

と少年に視線を落として、心配そうに言った。

「……レオ?」

焦点がやっと定まってくる。そこには、顔を覗き込むレオ・ウォンカがいた。
少年はゆっくりと起き上がると、不安そうに周りを見渡す。

「……ここは、どこ?」

なんだか、あの独特な病院のような匂いがする。そして自分が今寝ている白いベッド。……あぁ、もしかしてここは……。

「ここは保健室よ」
「…………!!キャシー・カルメア先生!!いらしたんですか」

レオが驚いたように言った。

キャシー・カルメアとは、控え室にてロイたちに試験の説明をしていた紫髪の女性のことだ。そのキャシーが鈴が鳴るような声でいきなり声を発したのだった。

「……キャシーさん、どうしてここにいるんですか?」

いまいちキャシーがここに居る理由が理解できず、小首をかしげて尋ねるロイ。すると、それにレオが答えた。

「……あぁ、言ってなかったが、キャシー先生は保健室の先生でもあるんだよ。回復魔法が使えるんだ。」
「…………保健室の、先生……」

そう呟いてキャシーの方に目を向けるロイ。なるほど、キャシーは白衣を着ていた。

「……ふふ、気づかなかったでしょう?気配を消していたからね。」

にこやかに笑うキャシー。

「……け、気配を消した?……すみませんがキャシー先生、いつからいらっしゃったんですか?」

丁寧な敬語で慌てて聞き返すレオ。

「……そうね……レオ君がその子を保健室に運んできたあたりから……というより、最初からずっと♪」
「……なっ……!?……ぜ、全然気付かなかった……」

驚くレオと、そんなレオの反応を楽しそうに見ているキャシー。
そんな二人の様子を見て、思わず口を挟んだ人物がいた。

「……キャシー。本職を忘れないでください」
「……!!……ダイアナ秘書〜。ふふ、もしかして、妬いてるんですか?」

少しムッとしたような顔で声をかけたのはダイアナだった。そして、それをからかうように言うキャシー。

「別に妬いてとかじゃありません。ロイ・サルベルトの目が覚めたんですから、保健の先生としてちゃんと検査するのが義務だと思っただけです」
「……え?……あぁ、その子?……その子なら平気よ、別に。外傷もないみたいだし」

イキナリ口調が変わり、突き放すように言うキャシー。その話し方から、早く帰れ、と言われているように感じたロイは、少し悲しげにうつむいて

「あ、ありがとうございます」

と言った。

その様子を見て、次に口を挟んだのはリリーだった。

「……ちょっと、キャシー先生。病人にそれはないんじゃないんですか!!??」

最も、口を挟む、というより 叫ぶ、という感じだったが。

「……『それ』ってなんですか?」

しれっとした顔で答えるキャシー。それを聞いてみるみる顔を真っ赤にするリリー。ぷちっ、と何かが切れる音がした。

「あ・の・ねぇ!あんたはレオ目的で私達に話しかけてきたのかもしれないけど、患者はロイなんだから!分かる!?ロイ・サルベルトが患者なの!!」

敬語をすっぽかしてキャシーに突っかかるリリー。まぁ、元々リリーは 誰に対しても敬語を使うのが嫌だったらしいが。

「あ、いや、いいんだよ、リリー!僕は本当にもう大丈夫だから!」

ロイが慌ててリリーに言うが、耳に入っていない様子だった。

「大体、初めて会った時からあんたのことは気に入らなかったのよ!回復魔法しか使えないくせに、いつもいつも人を見下すような態度で……。でも好みのレオには色目を使って?はっ、何それ。えこひいきしてんじゃないわよ!!!!!」

ロイは正直驚いていた。リリーがここまで声を荒げるとは思っていなかったから。
……しかしそうは言っても、ロイもこの先生に良い印象は受けられなかった。
初めて説明の時に見た真面目そうな姿とは違って、今のキャシーは自己中心的な女性にしか見えなかったからだ。

見えない火花が二人の間に散り、重苦しい空気が流れる。
ニヤニヤと笑うキャシーと目を吊り上げて睨むリリー。
また口論が始まりそうになったとき、低めの声がその空気を打ち消した。

「……とりあえずロイの目は覚めたんだ。……キャシー先生、俺たちはもうここにいる理由がないので去らせていただきます。」

レオが二人を制するように割って入って来たのだった。

「……え〜、もう?」

頬を膨らませるキャシー。

「……リリー、とりあえずお前はキャシー先生と一緒にいたくないんだろ?だからお前もここを出るぞ」
「……もちろん、そうするわよ」

思わず、そんなやつに『先生』とかつけなくていいし、敬語なんて使わなくてもいいのに!!とリリーは言いそうになったが、ここはグッとこらえた。
これをやり過ごせば全て丸く収まるのだ。そう言い聞かせて、リリーは静かに深呼吸をした。

「……失礼しましたぁーー」

心の中でキャシーに向かって舌を出しながら、わざとらしく棒読みで言って保健室を出るリリー。そして、その後をぞろぞろとロイ達がついていく。

……ただ、ある一名を除いてだが。
その人物は、ロイ達がいなくなってしばらくしてから、重たげに口を開いた。

「…………キャシー。……あなた……」
「……あら、ダイアナ秘書〜!どうしたんですか?」

そこにいたのは、視線を伏せがちにして入口付近の壁に寄りかかっているダイアナだった。

「……どうして、嫌われるようなことを、わざと言うの……?皆、誤解してるわよ、あなたのこと」
「……知ってるわよ〜それくらい。……そんなことより、行かなくていいの?置いていかれるわよ、リリーちゃんに」
「………………」

何かを言いたげにキャシーを見つめるダイアナ。しかし、しばらくするとため息をついて、ずり落ちていたメガネを上にくいっと押し上げた。

「……失礼したわね、キャシー。私もあまり長居はできないし」

閉まりきっていなかった、半開きのドアのノブに手をかけるダイアナ。……その刹那。

「……気を使ってくれてありがとうね」

不意打ちなキャシーの言葉に思わず振り返るダイアナ。そこには、泣き笑いのような顔をしたキャシーがいた。

——さすが私のかつての親友ね——

キャシーの悲しげな紫色の瞳が、ダイアナを真っ直ぐにとらえた。

「……ッッ……!!」

逃げるようにして廊下へと飛び出し、その場に崩れ込むダイアナ。

「…………っ…………あ…………ご……めんなさい…………っっ……!!」

誰もいない廊下に響く嗚咽。
とめどなく流れる涙が、ダイアナのシャツの袖を冷たく濡らしていた。