コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: ロイ〜ケダモノと呼ばれた少年〜 ( No.32 )
- 日時: 2013/06/30 00:23
- 名前: ぴんくのうさぎ ◆v8I1Bhr5SU (ID: t7vTPcg3)
更新遅れましたッ((泣泣泣
書く事が多すぎて時間がかかってしまって……(*_ _)人ゴメンナサイ
ちなみに今回は、番外編【ケダモノの過去】を更新します♪
ちょうどロイがケダモノ化してますし 笑。
なぜロイがマドリナ学院に通うことになったのか、
天竜ともあろうマームがフレンドなのかが、
少しでもわかっていただけたら幸いです(´▽`)
……それと……この番外編、むちゃくちゃ長くて……汗
前編、後編と分かれます。(´Д`;)
(もしかしたらそれ以上かも 笑。)
読みづらいかもしれませんが、何卒よろしくお願いします!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
#0 番外編【ケダモノの過去・前編】
=数年前=
激しくドアを叩く音。ドアを塞いでいるバリケードが破られるのは、時間の問題だった。
家の中にいたのは、女の子のような男の子と、一人の女性。
そして、女性の方は足にひどいけがを負っていた。立ち上がることもできないくらいの。出血量も尋常じゃない。
……しばらくすると、女性はある決断をして、さっきからずっと涙目で女性の足を見つめている少年に語りかけた。
「……ロイ。私はもうダメです。これ以上は、もう……。……だけど、ロイ。……あなたは……あなただけは、逃げて。台所の絨毯の下に、秘密の隠し扉があります。それで地下室に行って、外へ逃げて。……大丈夫。何も心配しなくていいのよ、ロイ。……あなたは、母さんが……」
——クロンド・サルベルトが、守るから——
ニッコリと微笑む女性。それはかつて恐れられた英雄ではなく、一人の子供の母親としての姿だった。
「さぁ、行って、ロイ。……?なぁに?……あぁ、この足のこと?……大丈夫。痛くはないわ。……それにもう、この足を使うことは、きっと2度とないから……。……いいえ、ただの独り言よ、気にしないで。……ほら、もうすぐ奴らが来る。ロイ、あなたを狙って。……だから、早くお行きなさい」
最後に彼女はそっと少年の頬をなでる。
「……さようなら。私の愛しい息子、ロイ・サルベルト」
そう言って、彼女はロイを突き飛ばすと叫んだ。
「五重防衛結界!!」
見えない壁が二人の間にできる。壁を叩きながら泣き叫ぶ少年。
「……これでしばらく足止めをする。その間に、どこか遠くへ……。安全な場所へ行って……」
弱々しく微笑む女性。彼女の眼からは、一筋の涙が流れた。
「それで、そこで……幸せに生きて……」
女性はそう言い終わると唇をぐっと噛んで言い放った。
「……さぁ、早く行きなさい!!ロイ!!あなたがいると、戦いに集中できないの!!足でまといになるだけだから早く行きなさい!!」
少年を睨む女性。その眼は、拒むことを許さないと言っている。
……でも、少年は分かっていた。もう、女性は戦えないことを。
わざと冷たくあしらうのは、自分を守るためだと。
でも、彼は気づかなかったように、一言
「……分かった。だからお母さんも、絶対に負けないでね」
そう言って、台所へ向かった。
……勝てるわけがないのに。あんなにひどいケガを負っているのに、何ができるのか。……どうして自分は、あんなことしか言えないのだろう。少年は、涙を流すことしかできない自分をただただ呪った。そして、服の袖でとめどなく溢れるそれを拭うと、地下室への扉を開けて一段一段慎重に降りていく。
半分降りたところで、最後にもう一度彼女の方を向くと、少年は言った。
「……お母さん。大好きだよ。……さよなら」
人生で一番の、最高の笑顔で。
……もう会えないと分かっていたから。これが最後だと、本能が言っていたから。
悔いのない別れを、しておきたかった。
残りの段を降りていく。もう、この家ともお別れだ。……もちろん、あのクロンド・サルベルトとも。
少年が地下室についたとき、笑顔は涙で崩れてしまった。
しばらくすると、乱暴にドアが開けられる。
「……よう、クロンド。随分と手こずらせてくれたじゃあねえか」
図体のでかい男が ずかずかと家の中に入る。
「……あのガキはどこだ」
部屋を見渡す男。
「……いないよ。ここには」
相手の目を睨んでいうクロンド。うっすらと見える涙には、まだ悲しみが残っていた。
「……チッ。先に逃がしたのか。……どこに逃がした。言えば命だけは助けてやろう」
「………………」
何も言わないクロンド。
「……そうか、口を割らないか。じゃあ、仕方ない」
剣をクロンドに向ける男。
「お前を殺す」
冷たく光る刃。それは血を欲していた。
それを見て、吐き捨てるように言う女性。
「……好きにしな。どうせこのケガじゃすぐに死ぬ」
……でも、と男に向かっていうクロンド。
「あの子には……ロイだけには、絶対に手は出させないよ!!!」
立てるはずもないのに、よろめきながらも立とうとするクロンド。そして、それを面白そうに見物する男。
……そして……。
立った。
クロンドは、立った。ふらつきながらも、しっかりと、その足で。
男をロイのもとへ行かせないために。ロイを、守るために。
「……行かせない。……あの子のもとへは、絶対に行かせない!!!」
両腕を思い切り広げる。かつて、自分の息子を抱きしめていたその腕を。
「……ロイは……私が死んでも守る!!!」
彼女の目の中では、熱い闘志が燃えていた。