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Re: ロイ〜ケダモノと呼ばれた少年〜 ( No.4 )
日時: 2013/06/29 20:53
名前: ぴんくのうさぎ ◆v8I1Bhr5SU (ID: t7vTPcg3)

#4 「蒼の双子」

〜マドリナ学院 試験会場 控え室C〜

ガヤガヤと騒がしい室内。
友達と話していたり、お菓子を食べていたり、フレンドの世話をしていたり。
皆、それぞれ思い思いのことをしていた。

そして、その中にはもちろんロイもいた。

「う、うう……。緊張してきたね、マーム……。僕、ちゃんと合格できるかなぁ……?」
「大丈夫やて、ロイなら。なんてったって、あのクロンド・サる」
「しぃっ!!マーム、それは禁句だってば!!」
「あ、あぁ、そうやったな。すまんすまん」
「ふぅ……。マームは口が軽いから、大事なことをサラっと言ってしまいそうで心配だよ……」
「それも大丈夫やって。なんてったって、このマーム様やからな!!安心せい」
(……よ、余計不安だ……)

ロイたちが話していると、いきなり室内が静かになった。試験官が入って来たのだ。
試験官はカツカツカツ、とハイヒールを鳴らしながら前方の台の上に立つ。

「はじめましての方も、二度目以上の方も、こんにちは。試験官をつとめています、キャシー・カルメアと申します」

その女性の試験官が軽く頭を下げる。三つ編みにしてある、紫色の髪の毛が揺れた。

「それでは、早速試験について簡単に説明させていただきます」

静かな声で、彼女は以下のことを説明した。

・試験は3回に分けて行われる。
・1回目は攻撃試験、2回目は防御試験、3回目は救出試験。(なお、3回目の救出試験で、救出する対象に怪我を負わせた場合は即失格となる。)
・武器の使用を認める。
・制限時間はなし。
・非常事態も考えて、試験官が一人、同行する。
・評価基準は、対処の速さ、フレンドとのチームワークなど。評価の結果によって、マドリナ学院でのクラスが決まる。クラスは、SクラスからFクラスまで有り、Sクラスに近いほど良い。

「……以上で、説明を終わります。質問がありましたら、後ほどどうぞ。早速、1回目の試験を1時間後に開始します。準備をしておいてくださいね。それでは試験、頑張ってください」

またキャシーは頭を軽く下げると、部屋を出ていった。
再び騒々しさを取り戻す教室。

「1時間後……かぁ……。意外とあるね、時間。何しようか」
「せやな〜……。……そうや、わい、腹が減っとんねん!!なんか食べたいわ、ロイ!」
「……あぁ!そういえば、マームはまだ食事を済ませていないんだね。行っておいでよ、待ってるから」
「分かった。10分ぐらいで戻ってくるわ」

ばいばい、と手を振るロイ。地面を這っていくマームを見送る。(忘れているかもしれないが、マームは一応、蛇の姿をしている)
ちなみに、なぜ彼はマームの後を追いかけないのか……?
その答えは一つ。マームの食すものは、普通の蛇と同じものだからだ。
前に一度だけ、ロイがマームの狩りに付き合ったとき、あまりの光景にロイは気を失ってしまったのだ。それ以来、ロイはマームの食事に同行することはなくなってしまったのだった。

「さて、僕はどうしようかな……」

再度ロイが考え込んでいると、一人の少女が声をかけてきた。

「ねぇねぇ、あなた、ロイよね??」
「……え?…………あぁ、リリー!!君も同じ控え室にいたんだ」
「ええ!!……ぐ、偶然ロイの姿を見かけてね!」

引きつった笑みを浮かべながらいうリリー。

「なーにが偶然だ。朝からずーっとはしゃいで、そいつの後を追っかけていったのは誰だよ」

そこに口を挟むリリーにそっくりな少年。

「う、うるさいわね!レオは黙っててよ!!」

真っ赤な顔で怒るリリー。それと対照的に、涼しげな顔で笑っているレオと呼ばれた少年。

「……ねぇリリー、その人は?すごくリリーに似てるけど。」
「「似てなんかないっ!!!!!!」」

声を揃えて叫ぶ二人。ビクッとするロイ。

「……ん、んん……。取り乱してすまん。俺はレオ。レオ・ウォンカ。不本意ではあるが、こいつの双子の兄だ」

こいつ、のところでリリーを指差すレオ。何が兄よ、少し早く生まれたくらいで……とブツブツ言っているリリー。
ちなみに、レオの髪の毛も青色で、ショートカット。目の色も青だ。まさに、リリーとソックリだ。

「僕はロイ・サルベルト。リリーには、さっきすごくお世話になったんだ。レオ、君もよろしくね」

笑顔で手を出すロイ。レオは一瞬ためらったが、すぐにロイの手を握った。


それは、ロイに双子の友達が出来た瞬間だった。