コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: ロイ〜ケダモノと呼ばれた少年〜 ( No.41 )
日時: 2013/06/30 00:23
名前: ぴんくのうさぎ ◆v8I1Bhr5SU (ID: t7vTPcg3)

また間が空いてしまいました((汗
でも、なんとか終わらせられたので……ε-(´∀`*)ホッ
それにしても……今回は長いですよー((汗汗
(※ちょいグロ注意)

それでは、後編です!!どうぞ☆

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#0 番外編【ケダモノの過去・後編】

……走っていた。少年は、ただひたすら走っていた。
裸足で、冷たいコンクリートの上を。下水から漂う、汚臭の中を。
それが義務であるかのように、少年は、ただただ走っていた。

ここは下水が流れる地下道。どうやら、地下室から外にすぐ出られるわけではなかったようだ。
延々と続く一本道。
ここを完走しなければ、外の空気は吸えない。

……足を動かすことしかすることがないと、嫌でもいろいろなことを考えてしまう。
少年の頭を何度もよぎる、地下室に着いた、少し後の記憶。
かすかに、だがはっきりと少年は聞いてしまっていた。


彼女の……クロンド・サルベルトの悲鳴を。


嫌な考えばかりが少年の頭を駆け巡る。
頭をどんなに振っても、その考えは消えうせようとはしない。
逆に、根強くはりついてしまう。

「……お母……さん……」

だんだんと走るスピードが落ちていく。それはやがて歩くような速さになり、そして最後はうつむきながら、止まった。

「……ッ……!!!」

つうっ、とまた涙が頬を伝う。
この涙はさっきとは違う。別れることからの悲しみの涙じゃない。悔し涙だ。
自分の無能さを悔やんだ涙だった。

「……そんなわけ無い!!お母さんが……そんなわけ無い!!」

そう叫んで無理矢理沈んだ気持ちを振り払い、目元をゴシゴシとこする少年。

まだ、望みはあるかも知れないのだ。
……そう、クロンドが、ロイの居場所を教える、といったときの場合だ。
となると、クロンドは、ロイのところまで案内してくれる大事な人物となる。殺すわけにはいかないだろう。

「…………大丈夫。きっと、お母さんは……」

——生きている——

そう信じて、前を見据えるロイ。
もう、出口はそこまで見えていた……。

かすかな希望を抱いて出口を抜ける。
しかし、そこに広がっていたのは。


夕立を降らせる真っ黒な空と、期待を粉々に打ち壊す、絶望的な光景だった。


30人は超える敵が出口をぐるりと取り囲んでいる。
そして、ニヤニヤと笑うリーダーらしき男が座っていたのは……。


屍と化した、クロンド・サルベルトの上だった。


「……っ……お……母さ……!!」

声が上手く出ない少年は、目の前の出来事を信じられないでいた。

(……嘘だ)

——お母さん、なんで黙ってるの?——

(嘘だ)

——変な男の人が、お母さんの上に乗ってるんだよ?——

(嘘だ)

——重たくないの?——

(嘘だ)

——なんで、いつもみたいに——

(嘘だ)

——怒ってやっつけないの…………——

(嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ死んでない嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だありえない嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ死ぬはずがない嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁあぁぁぁぁあああ!!!!!!!!!)

目を閉じて静かに横たわっている女性。そこには威厳の欠片も感じられなかった。

ガクン、と膝をつくロイ。足が、腕が、体が、震えて動かないようだった。
それを見て、ゲラゲラと笑うリーダーらしき男。

「本当に無様だと思わないか、ロイ・サルベルトさんよぉー?この女、散々シラ切っておいて、あっけなく死にやがったんだぜ!!!」
「……………………!!!!!!!!!!!」

ドクン、ドクン、とロイの心臓が大きな音を立てる。

「これが天下のクロンド・サルベルトだったなんて、聞いて呆れるぜ!!」

立ち上がって、やれやれ、とクロンドを見おろす。

「こんなの、ただのクソ女だよッ!!」

無抵抗の死体を蹴り上げる男。

「!!!!!!!!!!!!」
(や……めて)

声にならない心の声が虚しく空回りする。笑いながら蹴り続ける男。

(やめて……)

ドスッ ドスッ

「めろ……!!」

ゲシイッッ

「やめろぉぉおおぉおぉッッッッッ!!!!!!!!!!!」

次の瞬間、サッと少年の目の色が変わった。血のような真っ赤な色の瞳。
次に、右手の白と黒の紋章が怪しく光り出す。溢れ出す黒い魔力。
最後に、段々と金髪の髪の毛が闇に溶けるような黒に変わった。


もう、少年に理性などない。


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すみません、文字数の制限の問題で、一旦切ります!!

Re: ロイ〜ケダモノと呼ばれた少年〜 ( No.42 )
日時: 2013/06/30 00:25
名前: ぴんくのうさぎ ◆v8I1Bhr5SU (ID: t7vTPcg3)

続きでございますm(_ _)m

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無数に少年の周りに出現する、黒い矢。
……次の瞬間。それらが一斉に飛び散った。
少年が認識した、全ての敵に。
ぎゃあああああ!!!!と悲鳴を上げながら倒れていく敵達。
ほぼすべての敵が倒れ、夕立が静かに去っていく。

そこに残されたのは、真っ赤に染まった屍と、返り血で真っ赤に染まったケダモノだけだった。

「……いや、まだだ」

静かに呟く少年。

「……あと一人、残ってる」

少年は、睨むように、ある方向を見た……。

そして、そのはるか視線の先に、男はいた。例の、リーダーのような男だ。

「……ハァ、ハァ……。……な、なんとか逃げ切れたぜ……。なんだよ、あの魔法。……まぁ、とりあえずあの方からのミッションは達成した。報告するか」

袖で汗をぬぐいながら、通信機器を取り出す男。仲間に連絡をしようとしたらしい。
……しかし、それは叶わなかった。

「させないよ」

突如男の真後ろに現れ、斬りかかる一つの影。あの矢と同じ、真っ黒の剣が光る。

「うわあっ!!」

シャッと赤い血が飛ぶ。吹っ飛ばされる男。腰のあたりに、赤く血が滲んだ。

「ヒッ」

小さく悲鳴をあげる男。ガクガクと震えている。

「こ、殺さないでくれッッ!!あの女を殺ったことは謝るから!!」
「……あの女?なにそれ」

無表情で首をかしげる少年。

「……え?な、なにって、クロンド・サルベルトのこと……です」
「…………ふーん?誰だっけ、それ」
「……え?」

尚も何か言おうとする男の声を遮って、ロイは剣を振り上げる。

「まぁ……どうでもいいか。君は死んじゃうんだから」

勢いよく腕を振り下ろす。キラリとルビーのような眼が光った。

「さよなら」

ぐしゃっ

思い切り返り血を浴びる少年。その顔は、かすかに笑っているように見えた……。

しばらくすると、髪の闇は消え、元の金髪に戻りはじめた。
それを合図に、黒い矢も剣も、手の紋章の怪しい光も消えた。
真っ赤だった眼が元の茶色に戻った時、辺りはいつもの空気の流れを取り戻した。

その時だ。妙にその場に不釣合な音が響いたのは。

……パンッパンッパチパチパチ……

誰かが……誰かが、拍手をしていた。
拍手をしている”誰か”は、知らない間に少年の少し後ろに立っていた。フードを深くかぶっていて、顔はよく見えない。

「……さすが、ロイ・サルベルトだね。すごい魔力」

魔力を使い切ったのか、荒く息をしながら”誰か”を睨む少年。

「……でもね。こんな魔力の使い方じゃ、ダメなんだよ」

いきなり、少年の方へ突っ込んでくるローブの人物。当然、少年に避ける隙などなかった。
少年の胸のあたりに相手の右手が触れる。思わず目をつぶる少年。

……しかし、何も起こらない。……

「……え」
「…………ふふっ、あははははっ!!!!本当に無防備なんだね、君。もし僕が君に敵意を持っていたら、どうするつもりだったんだい?」

可笑しそうに笑い出す相手。困ったように相手を見る少年。

「……でも」

不意に笑うのをやめて、顔を少年に近づける相手。初めて顔が見える。

「死んじゃうよ?そのままじゃ」

その目は、ものすごく真剣だった。思わずドキリとする少年。
スッ、と右手を少年の胸から離す相手。

「じゃ、ついてきて」
「……え?」
「いいから」

そのままスタスタと歩き出す。

「……え、ま、待って!!」

慌てて追いかける少年。楽しそうに話し続けるローブの人物。

「教えてあげるから」
「……何をですか」
「魔法の使い方を」
「……魔法の使い方……?」
「こう見えても、マドリナ高校の校長だから。」

得意げに話す相手。一方、話に全くついていけない少年。
しばらく黙って歩くこと数分。いきなり、校長が立ち止まって少年の方を向いた。

「……あぁそういえば」
「え?……なんですか」

いきなり話しかけられてどもる少年。

「君、なんで戦ってたの?」

なんとなく聞いてみただけの質問。
しかし、下を向いて言いたくなさそうな顔をする少年。黙ったまま、話すのをためらっているようだ。

「……いや、言えないんならいいんだけど、ね」
「…………んです…………」

ポツリと呟く少年。

「え?よく聞こえなかっ」
「覚えてないんです……」
「……え……?」

ザアッ、と風が吹く。


「戦う前の記憶が、ないんです。なぜ戦っていたのかも、覚えていません……」


しばしの沈黙。しばらくして、溜息をつく校長。

(これは……長い旅になりそうだな……)

雨に濡れてこぼれた花の雫の音が、地面に落ちて静かに響いていた。


番外編【ケダモノの過去】〜END〜