コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: †4人の死神と囚われアリス† ( No.373 )
- 日時: 2013/12/04 19:21
- 名前: 珠紀 (ID: 0JVwtz5e)
「お前には、俺よりも本当に失いたくない奴がいるんじゃねーか?」
一瞬心臓が跳ねた。
【本当に失いたくない奴】
…図星だ。
「…私は皆に消えてほしくないんです」
それだけ言って口を閉ざすとトーマは手首から手を放した。
「そうか」
立ち去るトーマの後ろ姿と彼を重ねてしまう私は、なんて酷い奴だろう。
『皆に消えてほしくない』
というのは本音だ。
だけど、それ以上に彼“だけ”は消えてほしくないという自分の感情にぞっとする。
途端に愛しさが込み上げてスカートの端をぐっと握る。
Christmasまであと残りわずか。
「…っ」
無理だよ…
「嫌だよ」
どんなに願っても、祈っても、泣いても怒っても。
何をしたってこの願いは誰も聞き入れてくれない。
願うことすら無意味なのだ。
これは…
最初から…
私達が出会う前から決まっていたことなのだから。
「泣くな…」
後ろから腕が回り、私の身体を包み込んだ。
「…消えたのではなかったのですか、シン」
振り解く力もなくそっとその腕に手を添える。
「…消えるフリをしてアリスを見ていた」
「悪趣味ですね」
つうっと雫が瞳から流れ落ちる。
「お前はよく泣くな。…その涙も…涙までもあいつのものなのか」
“あいつ”
シンも分かっている。
私の気持ち
私の想い
抱き締められてるところが痛い。
「あの女も…そしてお前も…手に入らぬのか」
そっとシンの顔を見ると悲痛に歪んでいた。
「俺はお前の母親に惚れていた…そしてお前に惚れた」
「ママに…」
「どちらにもふられたがな…。あの女は父に取られ、お前はあの偽人に取られ…」
力なく笑うシン。
「シン、離して?」
素直に離してくれたシンと向き合う。
「シン…私はあなたも大事です。だって、たったひとりの兄なんですから」
そう言うとシンは目を閉じて口角をあげた。
「…そうか」
そのままその場から消えてしまった。
『俺もお前が大事だ…………………妹だから、な』
そんな言葉を残して。