コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 幼き頃の約束は永遠に ( No.6 )
- 日時: 2013/06/20 21:10
- 名前: 明衣 (ID: J7xzQP5I)
3.地震
真っ暗な世界に浮いている自分。
ここはどこだろう?何でここにいるんだっけ?そんな疑問が次々に現れる。
何も見えない暗い世界の先に真っ白に光る環が現れた。
何故かは分からないが、直感的に【リング】という文字が頭に響く。
(アレは何かな……。気になるけど、危険な気もする)
近付きたいと思った瞬間に体がふわっと飛ぶようにして、光のもとへ進んだ。
近くで見ると白というより、虹色が怪しく蠢いている。
再び脳裏に危険と思う自分が横切った。が、幼い好奇心が更に体を動かす。
(あ……)
とうとう光の環が目先まで近付くと、すうっと糸に引かれていくかのように吸い込まれていった。
【リング】の奥へ行くと抜けたあとにあるはずの暗闇は存在しなくて、パッと閃光にのみ込まれた。
ほんのニ、三秒の間に炎が上がり、風が舞い、水が渦を巻きいた。
鼓動が早くなる。腕の血管が飛び出しそうなくらい、脈の動きが感じられる。
そして、最後に電気と尾を引いた線香が走り抜た。
————っ!
眩しくて目を開いていられなくなってしまい、瞬時に目を強く瞑る。
辺りが落ち着いたのを感じた時、そっとまつ毛を持ち上げた。
訳も分からないのに、暗闇に戻りたいと思う。
光の中の危険を身体中で感じているからだ。
(……良かった。静かになってる)
音まで聞こえてきそうだった心臓の激しい動きも静まってきて、安心する。
まだ環の中であったが、これを初めて見たときと同じようにただ、光る環である。
もちろん、外には真っ暗な世界。
(とにかく出よう)
そう思って【リング】を出ていった——。
「……まだ……はい。でも、もう少し……」
「ううん」
今のは、彩月の声……?
現実世界に戻ってきたのかなあ。というか、夢から醒めたのかなあ。
まだ頭の芯が痺れてるから、アレが何だったのかはっきりしない。
「あれ、愛花?!愛花、目覚めたの?」
「彩月、私どうしたの?」
この薬の匂いと水色がかった黄緑のカーテンから考えて、ここは保健室だよね。
考えは比較的しっかりしているのに、口の中が乾いて話し方が少しおかしい。
でも、彩月は気にもせずに答えた。
「あ、うん。あのね、掃除中に倒れて保健室に運ばれたんだよ」
「は、運んだって誰がっ?」
「えっと、晃太郎と佐紀先生」
「佐紀先生はいいけど何で晃太郎?!彩月運んでくれなかったの?!」
- Re: 幼き頃の約束は永遠に ( No.7 )
- 日時: 2013/06/21 21:44
- 名前: 明衣 (ID: J7xzQP5I)
彩月に運んで欲しかったなあ。
「彩月が良かったなあ」
思ったことを口にする。すると、彩月は顔を歪めて言った。
「愛花のそーゆうとこ、末っ子だよね」
「あら、和宮さんって末っ子なの?私と一緒ね」
ソプラノが保健室に響く。声の主は黄緑の入った水色のカーテンの隙間から顔をのぞかせている。
養護の今泉京子先生、だったかな。
「はい」
一応先生だから、しっかり敬語を使わなくては。
「よし、元気そうでいいね。軽い風邪かな。ところで、何人兄弟?先生は三人の一番下なんだ。
今どき三人兄弟も少ないわよねえ」
若い先生なのに、ちょっとおばあさんに見えてしまった。
答えようとしたら、私より先にしゃべった人がいた。
「愛花は今どき珍しい四人兄弟ですよ」
「うっそお?!四人兄弟?!」
「あ、はい、って晃太郎?!運んでくれたんだってね、ありがと」
「良く言うよ。聞こえてたぞ、全部」
「お、晃太郎いたんだ〜。愛花のことが心配で心配でって、ちょ、こ、恐いよ?!」
幼なじみの目付きに彩月の額に汗が浮かんだ。
晃太郎が私達二人に向けてかため息をつく。
すると、今泉先生が面白そうに笑う。
「あなた達仲が良いいのねえ。じゃあ、吉川くんが知ってるってことは渡辺さんも和宮さんの兄弟知ってるの?」
「はい!愛花のお兄さんめっちゃカッコいいですよ!」
彩月がやけに嬉しそうにお兄ちゃんのことを語っているけど、どうかなあ。
「そうなの?!会ってみたいな。何歳なの?」
先生、そのノリは付き合いですか、それとも本音ですか……。
「十七歳です。お兄ちゃんのこと嫌いじゃないけど、私は鈴花ちゃんが一番好き」
「レイカちゃんってお姉さん?」
「そうです!あと、鈴花ちゃんの双子の妹の唯花ちゃん。この三人が愛花の兄弟ですよ〜」
はい、そうですよ、正しいですよ。
まったく、彩月も一度乗っちゃうとこうだからなあ。
晃太郎を見ると、口を結んでちゃっかり椅子に座っている。
「和宮ファミリー会いたいわぁ、あ?!」
先生の声で何事かと思ったのはつかの間、すぐに自分でも理解できた。
この場の私だけベットに座る状態だったけれど、近くの柱が軋み、自分自身も揺れている。
「地震……?」
彩月の口からみんなの気持ちをまとめて出た言葉だと感じられる。
最初の方はちょっとだったのに、だんだん強く揺れてきたっ?!
え、ちょっとヤバくない?だって結構揺れてるよ?
彩月と先生は長い机に手を置いて、晃太郎は軋む柱に手を添えて立っている。
みんな立つのに精一杯だ。