コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 幼き頃の約束は永遠に ( No.8 )
日時: 2013/07/31 21:57
名前: 明衣 (ID: J7xzQP5I)

4.避難


とうとう私もベットの上だと大変になってきた。
晃太郎を支える柱に掴まろうとすると、一度大きく世界がねじまがったように感じるほどの揺れが。

「あっ——」

倒れそうになったのを晃太郎の腕に掴まれて何とか体勢を戻す。

「ありがとう」

「しっかり掴まってろ」

そう言って柱に手を伸ばさせた。
ちょっと乱暴でムカついたけど、意外と優しいよね。

「ふう。落ち着いたかな」

先生の声と共にみんなの顔もほっとしたようにやわらかくなった。
もしかしたら私の表情も固くなってたのかも……。

「……今の地震、結構大きかったのに放送かからないの変じゃないか」

しばらく静かな時が過ぎると晃太郎の声が響いた。
そう。私が黙っていたのはその放送を待ってたからなんだけど、かからない。
どうしたんだろうって言おうとした瞬間、廊下から教頭先生の声がした。

「ええ、今の地震で放送器具に不具合が生じたため、放送はありませんが、校庭に避難してください。
繰り返します。校庭に避難を開始してください。余震の可能性があります。気をつけて行動してください」

「了解ですっと。先生は怪我人のために緊急セット持って行くから。三人は先にそこの戸から出れるよね」

今泉先生は校庭に直接つながる扉を指差す。
私達が頷いたのを見ると準備を始める。
訓練では走るなと言われてるけど、そんなの無理だから小走りで戸の方へ向かう。
そこで、私は自分が何故保健室に居たかを思い出した。
若干目眩がして座ってしまう。どうしよう、これじゃ二人に迷惑かける。

「愛花、大丈夫?ほら、手」

彩月の励ましが聞いたのかな。少し楽になって彩月の手を握れた。
立ち上がると、晃太郎が扉を開けて先に行けと促す。

「もう避難しに来てる人がいるよ……」

びっくりして思わず声に出しちゃった。
大きな地震があると近くの学校に避難する決まりだけど、さすがにこんな早く集まり始めてるなんて驚きでしょ。

「えっと、クラス別に並んでるみたいだな」

六年三組はうさぎ小屋の方で少し遠い。
朝礼台の上で生活指導の遠藤先生が説明を始めてる。
話を聞きながら担任が先頭にいる列に向かう。

「ウソ?!家の人が来るまで待つとかありえない……」

「彩月、仮にも大きな地震があった日くらい良いじゃない」

彩月は引き取り訓練でも文句を言ってるけど、まさか本番までとはね。

Re: 幼き頃の約束は永遠に ( No.9 )
日時: 2013/08/08 08:19
名前: 明衣 (ID: J7xzQP5I)

「愛花、調子まだ悪い?」

彩月が心配そうに訊いてくる。
本音を言うと笑って誤魔化したいんだけど、そんな力は今の私に蓄えられていないんだよ。

「まだ良いとは言えないかも……」

苦笑いで返したとき、七海ちゃんの声が聞こえた。

「愛花ちゃん!大丈夫だった?!」

七海ちゃんの方を見ると、怪我はしてないみたいで少し安心。
大丈夫じゃないんだけど、まあ長い付き合いの彩月とは違うから笑って誤魔化せるかな。

「うん、大丈夫だよ。心配かけてごめんね」

「良かったぁ!じゃあ、先並んでるから。バイバイ」

七海ちゃんは手を振って小走りに佐紀先生の元へ近付いていった。
私達も少し歩いたら着いたけど、クラスメイトは集まりが早くて後ろの方だった。
若干しめっている校庭に座る。
二十分くらい彩月と話してると、何故かあまり口を開かない晃太郎がしゃべり出した。

「愛花、どうして彩月と加藤への言うことが違うんだよ」

「え?ああ、だって、本当のこと言って心配させたら嫌だから」

「じゃ、何で彩月には本当のこと話すんだ?」

「あーもうっ!彩月だと嘘ついたらバレるからだよ。これでいいでしょ」

やけに加藤七海につく晃太郎にムカついた。
自分の状態からしてムカついてる場合じゃないのは分かってるんだけどさあ。

「ていうかさ、七海ちゃんのことふったのに何でそんなこと訊くの?」

勢い余って言ってしまった……。
明らかに白けてる。晃太郎だけじゃなく、彩月もだよ〜?!

「それを何故、愛花が知ってる」

おも〜い幼なじみの声が頭に響く。
ああ、ここから去りたい。

「まあ晃太郎、その話は後にしよう。今は引き取り本番だしね、うん」

「何気に話剃らすなよ。」

「あー、楽しそうなところ悪いんだけど、良いかな」

聞き慣れた優しい声がかかった。
後ろには思った通りお兄ちゃんがいる。

「お兄ちゃん!それに鈴花ちゃんと唯花ちゃんも!どうしたの?」

お兄ちゃんのそばにどうしてか一緒にいる二人にも訪ねる。

「どうしたの、じゃないのよ。ひ、き、と、り!」

唯花ちゃんが三人を代表して言った。

「お母さん達が無理だからって頼まれたの。みんな今日は午前授業でさ。ちょうどここ通ったから、四人で帰ろうと思ってね」

次は鈴花ちゃんが言う。
性格は似てないのに交互にしゃべられると良く分からなくなってくる。
あれ、そういえば、交互にしゃべらなかったら私って二人を見分けられるのかなあ?

高校生以上の引き取り者欄に名前があるらしい三人とともに佐紀先生に帰宅することを伝える。