コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 幼き頃の約束は永遠に ( No.10 )
- 日時: 2013/07/04 08:06
- 名前: 明衣 (ID: J7xzQP5I)
5.落雷
「あら。吉川くんと渡辺さんも一緒に帰れるわよ。どうする?」
佐紀先生が引き取りの名簿を探りながら訊いてきた。
「え?どうゆうことですか?」
「二人の保護者欄にも和宮さんのお姉さん達の名前があるのよ」
あ、そうだったんだ……。全然知らなかったんですすけど。
「そうなんですか?僕は聞いてないけど」
お兄ちゃんが佐紀先生と鈴花ちゃんに訪ねる。
「ええ。そうなってるわ」
「私も初耳。ちょっと待ってて」
そう言うなり鈴花ちゃんがブラウンのケータイを取り出す。
そういえば、鈴花ちゃんスマホじゃないんだよね。
「……あ、お母さん?…うん、そう。あのさ、彩月ちゃんと晃太郎くんって連れて変帰ればいいのかな?」
しばらくすると、分かった、と言って鈴花ちゃんはケータイをしまう。
どうなったのかなあ。てか、もし一緒だったらいろいろと面倒だなあ……。はあ。
「二人も連れて帰るって。お母さんとおばさん達、今秩父にいるらしいよ」
「え?だって、お母さん東京で仕事じゃないの?!」
思わず埼玉にいるなんて驚きで叫んでしまった。
その声を聞いて来たのか、彩月と晃太郎が小走りに近付いて来た。
何故かいつの間にか大きな集団が出来ているのに気付いたけど、まあいいや。
「愛花、絶対に朝のお母さんの話聞いてなかったでしょ?」
唯花ちゃんが呆れた感じにため息をつくのを見ると、朝にお母さん言ったんだろうなあ。
何か考えてて聞いてなかったのかな?あれ?何を考えてたんだろ?
「あ!七海ちゃんと晃太——……ん〜、聞いてなかったかも」
ヤバいヤバい。危うく言いそうになったよ。
まあ、ともかく、吉川晃太郎と帰る方向性に変わりはないんですよね。
「あのっ」
「どうしたの?」
彩月の突然の声に、鈴花ちゃんが可愛く首をかしげる。
「私、龍樹と一緒に帰らないといけないんだけど、連れてきて良いかな?」
遠慮がちな彩月にお兄ちゃんが笑って言った。
「それはおいてけないね。早く連れてきな」
お兄ちゃんの言葉に彩月は、弟の渡辺龍樹のクラスの方へ走って行った。
龍樹くんって一年生だったかな。黄色のあの帽子が可愛いんだよ〜。
ちょっとして龍樹くんの手を引いた彩月が帰って来た。
「龍樹くん〜!相変わらず可愛い〜!」
私も弟欲しいなあ。龍樹くんを見るたびに思うんだよね。
どちらかというと私は下の子で龍樹くんと一緒なんだ。
- Re: 幼き頃の約束は永遠に ( No.11 )
- 日時: 2013/07/09 17:42
- 名前: 明衣 (ID: J7xzQP5I)
そういえば、低学年のときにお母さんとかお兄ちゃんたちに妹か弟が欲しいってずぅっと言ってたな。
私って結構わがままだったんだよね。まあ、今でも彩月や晃太郎によく言われるけど。
「じゃあ帰ろう。ね、晃太郎くんはマンション一緒だから良いとして、彩月ちゃんたちはどうするの?」
唯花ちゃんが鈴花ちゃんに訊いた。
あ、確かにどうするんだろう。そうだ!家に来てくれないかな〜。
「家で迎えが来るまで預かってるよ。多分、おばさん達より彩月ちゃんのお父さんの方が早く帰ってくるから」
そう言うと何故かみんな正門の方へ進む。
やったぁ!って喜んでる場合じゃないね。
置いてかれる〜。何で先に行くのよ。まったく、もう。
「さつきちゃん」
「ん、なあに?」
龍樹くんが男の子にしては小さくて可愛らしい声で手をにぎる姉を呼んだ。
「まだおひるなのに、くらいよ……」
「あ、確かにそうね」
彩月は今気付いたかのように言うけど、この暗さは尋常じゃないよ。
一雨降るのかなあ。嫌だな。今日私傘持って来てないんだよ〜。
「なあ、鈴花傘持ってきてるか?」
お兄ちゃんも同じことを考えていたのか、鈴花ちゃんに訊く。
て、ていうかさ!
「何で私に訊かないの?!」
「何で私に訊かないの?!」
うわぁ。唯花ちゃんとハモるとかぁ。
「あ、いや……。その……。鈴花が一番持ってそうだから……」
どうせ私は持ってなさそうですよ!
お兄ちゃんってこういうとこあるんだよねえ。まったく。
「それより、傘は持ってるけど降ってきてもささない方がいいかも」
「え、なんで?」
濡れて帰れってこと??
鈴花ちゃんがそんなこと言う訳ないよね……。
「だって、この音って雷じゃない?」
鈴花ちゃんの発言にみんながしんとする。
黙って聞くとほんの少しだけゴロゴロと聞こえた。
「本当だ……。鈴花ちゃん良く分かったね!私全然気付かなかったよ」
彩月の言う通りだよ〜。私も言われるまで気付かなかったな。
鈴花ちゃんって耳良いんだなあ。頭も良いけどね。
町一番の大通りを抜けた頃にサァーっと霧雨が降りだした。
そのニ、三分後に鈴花ちゃんの言ったことにみんな感謝することになる。
ピカッと稲妻が走ったと思うと、地響きに似た鈍い音が轟いた。
広場の大樹に雷が落ちたのだと思う。
「きゃっ」
雷が落ちた場所に一番近い彩月は慌てて、身を縮めた龍樹くんの頭を庇ってる。
光が消えて暗く元通りになると、ギシッとさっきとは違う鈍い音が聞こえた。