コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 幼き頃の約束は永遠に ( No.18 )
日時: 2013/07/23 22:06
名前: 明衣 (ID: J7xzQP5I)

7.親友


七海ちゃんの後ろ姿はどう見ても、普通の可愛い女の子だった。
100均で買い物って何買うのかなあ?まあいいや。帰ろう。
家は直ぐ先にあるのに、なんっか遠く感じるんだよねぇ。

「愛ちゃん」

「はいっ?!」

反射的に答えちゃったけど、誰だ??
呼ばれた方向には、おばあちゃんが立っていた。
別によぼよぼでもないけど、溌剌とした元気おばあちゃんでもない。
考えてみれば私のこと、愛ちゃんって呼ぶのは祖父母だけであったぁ!

「うん、元気だね。一緒に帰ろうか」

私はおばあちゃんと歩き出す。
紹介が遅れたけど、私たち和宮家は祖父母とほぼ同居してるんだ。
ほぼって言うのは、全く同じとこに住んでる訳じゃないから。
おじいちゃんがお金持ちで、マンションの所有者はおじいちゃん。
だから、私たちの住む七階は全部おじいちゃん、篠崎俊郎のもの。篠崎はお母さんの旧姓でもあるの。

「元気だねって私はいつも元気だよ!?」

あえて元気っぽく言ってみる。本当は、すごい気持ちが沈んでいた。
でも、おばあちゃんに無駄な心配はかけられない。

「……そうなのかい?いやあ、さっき鈴ちゃんや唯ちゃんに会ってね。心配してたよ」

「ちょっと驚いたことがあっただけ。もう大丈夫」

おばあちゃんにそう言うと、それならいいんだよ、と笑ってくれた。
私はこのおばあちゃんの笑顔が好き。心の奥からほっとする。

いつの間にか、ホテルのように綺麗な管理人室前に来てた。
おばあちゃんは丁寧に鍵を取り出して、鍵穴に入れる。
ほんの少しで自動横開きドアがウィーンと開いた。
そして、二人の足が中に入ろうとした時——。

「愛花!」

一つの音で聞こえたけど、実際には二人の幼なじみの声が混じりあってた。
おばあちゃんは、にこり、と笑って中にそのまま入っていったけど、私の足は固まって動かない。
次の瞬間、私は自分でも予想しなかった行動に出た。

「彩月——!晃太郎——!」

くるりと後ろを向いて二人の名前を呼ぶ。二人いるけど、私は女子である彩月に抱きついた。
どうしてかな。涙が溢れて止まらないよ。さっきとは違うの。さっきは寂しかった。悲しかった。
でも、今は————自分が分からないくらいに。

「ありがとう」

嬉しいよ。

彩月は黙って微笑み、私を受け入れてくれた。
はたから見ればすごい可笑しい図なのに、和宮愛花にとっては最高の場所だった。

「愛花さ、俺達にどう思われるかなんて気にしなくていいからな」

晃太郎は唐突に言った。追いかけて来てくれただけで伝わった二人の優しい気持ち。

Re: 幼き頃の約束は永遠に ( No.19 )
日時: 2013/07/25 20:43
名前: 明衣 (ID: J7xzQP5I)

「うん。ありがとう、晃太郎。晃太郎って男子なのに何で優しいの?」

「彩月、男子なのにって、愛花が何を言ってるのかが分からないんだけど?」

「男子がみんな愛花のこと好きだからちょっかい出してるのよ」

「え……。そうなのかよ」

「あ、驚いた〜!晃太郎笑える〜!」

「なんだ嘘かよ……」

「さあ。どうでしょう」

「え、おい、彩月正直に言えよ!」

「ふふ」

楽しい。嬉しい。私は二人と居るのが幸せだよ。
つい笑ってしまった。すると、二人も笑い出す。

「小学生って大変ね」

ふいにお姉ちゃんの声がした。
お姉ちゃんっていうのは、鈴花ちゃんか唯ちゃんか分からないくらいに笑って話してたから。

「ほんっと。笑って泣いてケンカして落ち込んでの繰り返しなんでしょ?」

さっきのが鈴花ちゃんで、今のが唯花ちゃんだと分かった。
二人には悪いけど制服で判断しました。あは。
二人は全部知ってるかのように言うけど、本当は知らない。でも、分かるのだ。

「忙しいんだよ」

私は言った。でも、その先は晃太郎と彩月に取られた。

「なんたって俺たち、幼なじみでもあるけど」

「親友、ですから」

見事な連携プレーにか、彩月が少し<親友>を強めて言ったことにか、私の姉と兄は微笑みをもらした。

「あのね、雷で電車止まってるんだって。だから、今日は家でみんなとお鍋パーティーだよ」

鈴花ちゃんが言った。
その後ろからちょこっと龍樹くんが現れて、たったったっと小走りで彩月に近付いた。

「おねえちゃん。おいてかないでよ」

「あー、ごめんごめん」

彩月は甘えん坊の龍樹に慣れてるらしい仕草で龍樹くんの頭を撫でた。

「鍋か。材料ありますか?俺、なければ買ってきますけど」

晃太郎は男同士で話しやすいって前に言ってたお兄ちゃんに訊いた。
そうしたら、お兄ちゃんは少し考えてから答えた。

「隣にもらえば良いから大丈夫だ。晃太郎くんは一度家に戻って荷物置いて来な」

お兄ちゃんの言葉に晃太郎は頷くと、ポケットから鍵を出して、おばあちゃんより少し雑に扉を開けた。
晃太郎は先に行ったけど、私たちもぞろぞろとエレベーターに向かう。
私は七階のボタンを押す。それから唯花ちゃんと私がおばあちゃんの部屋に行くことになった。

七階には大きなスイートルームが一つと、小部屋が三つとそれなりに広いリビングの部屋が三つある。
スイートルームをおばあちゃんとおじいちゃんの篠崎家が使い、残りの三つは和宮家が使っているんだよ。
スイートルームに行って野菜やお魚をもらうと、私たちはにぎやかな自宅に戻った。