コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 幼き頃の約束は永遠に ( No.26 )
日時: 2013/09/07 23:38
名前: 明衣 (ID: cm34dabg)

10.旅行


あははははは。私って未来予知の能力もあったのかな〜。
予想的中って感じですよね。つ、う、ち、ひょ、う!
紙の分際で私に精神的ダメージを与えてくれちゃって。

「愛花……呆然としちゃって……」

「そんなに悪かったのか?」

「…………良いですよねっ!お二人は成績優秀者さんでっ!」

もう、やけくそーの帰り道です。
だって、この二人ったらとても良いばっかで……
良いは片手で数えるくらいで……もう少しなんか一つもなくて……

「いや、だから、愛花は——」

「自分の目でご覧になってください!」

バッと『よいこのあゆみ』と書かれた通信簿を見せた。
彩月の唖然とした顔が私の胸にグサッとささってきますよ、うん。

「な、なんで……っ」

晃太郎がめっちゃ笑いを堪えてってか堪えてないけど。
私の睨みに笑いを止めて口を閉じて声を絞り出した。

「体育、音楽、図工、家庭科はオールとても良いなのに……他が……っ」

「あ、愛花、小学校の成績なんて大丈夫だよ!」

途中で吹き出す晃太郎。必死にフォローする彩月。
あ〜成績ネタはヤだけど、こういう風に普通の話をずぅっとしていたいんだけどなぁ。

「それにっ!愛花には凄い力があるし!」

彩月の言う、凄い力。それが何を指すのかは分かる。
でも、あんな話をされたばっかりでこれを言われちゃったら、重い沈黙も訪れちゃう訳だよね?

「そ……それよりさっ!夏休みだよ?楽しもうよ!」

「あ、一応言っとくけど」

「何?」

「おれ、今年の夏休みほぼ日本にいないから」

「ええっ?!どういうこと」

晃太郎が妙に真面目な顔で言うから驚きも大きくなる。

「なんか父さんが海外での避暑旅行を計画してたんだよ。で、決まったのがカナダへのお得長期旅行らしい」

カナダ……良いなぁ。私も行きたいな〜ってそうじゃないわ!
てか何で自分に自分で突っ込んでるんだか。壊れかけだなぁ、愛花。

「晃太郎良いな……。私は龍樹の面倒みて、プール行くくらい」

彩月の、毎年のことだから、という声と一緒にため息が聞こえた。
優しいお姉ちゃんも大変だねー。鈴花ちゃんも大変なのかな?

「明日から八月の最後の週を残して、ずっと向こうだから」

「良いねぇ〜…………そんなに、乗り気じゃあない訳?」

嬉しい、という雰囲気があまり感じられないことに彩月も気付いていた。
嫌だって訳ではないのかもしれないけど、お楽しみ感が少ないっ!

「うーん、どうだろ?」

Re: 幼き頃の約束は永遠に ( No.27 )
日時: 2013/09/08 22:43
名前: 明衣 (ID: cm34dabg)

「…………ふ……うふふふふ!晃太郎の考え分かっちゃった〜!」

彩月がしばらく晃太郎を観察してから声を上げた。
あまりにも可笑しかったから、私も晃太郎も思わず吹き出して笑った。

「夏休みに愛花が他のヤツにとられたくないなぁ、あ?!」

晃太郎が彩月の頭をぽかっとやった。

「いい加減にしろ、と言ったの忘れたか?」

見事な突っ込みです。内容は例のごとくスルーです。
まあ……本当にそう思ってくれてたら……って私何考えてるの?!
顔も火照ってる気がするぅ……。

「あ、愛花も離れたくないの?」

「真剣な顔でそういうこと言わないでよ〜」

「あは。ごめんごめん」

ニコニコと笑って謝る彩月ちゃん。
…………何か、五七五になったよ。偶然だよ。
まあ、そんなことどうでも良いわけで。

「晃太郎、いつまで向こうにいるの?」

「えっと、夏休みが終わるのが九月二日だよな。じゃ、八月二十六日だと思う」

「長いね〜。ホントに羨ましいっ!」

私もロシアで長期滞在したいなぁ。避暑とか最高!
このあっつい場所で四十日以上も過ごすとかダルすぎでしょ。

「え?愛花の家はお金持ちだから外国くらい行けるでしょ〜」

彩月の発言には訂正が必要だね、うん。

「家はお金持ちじゃないよ」

「マンションの最上階全部自分の家なのにぃ?」

「お祖父様とお祖母様のものですよ、渡辺さん。あなたは何度これを言わさせるのですか?」

実は、彩月と出会って……何年前だっけね?
とにもかくにも、真実自分の家じゃないというのは何度目かって感じなのよ!

「はいはい。じゃ、晃太郎がロシアなんか行っちゃってる間に夏休み満喫しちゃおうね、愛花!」

「いぇす!」

「…………」

なるべぇく元気にたのしそぉうに返事をした。
案の定、幼なじみの晃太郎くんは沈黙ですね。
だって、今まで毎年ずっと三人で夏休みは過ごしてきたから、ちょっと寂しくて。
別に晃太郎が旅行に行ったって私に何を言う権利もないよ。
でも、幼なじみとしては、毎年一緒に過ごしてきたから、同じことは出来ないとね。
宿題してプール行って花火見に行ってってことが出来ないのは悲しいんだよ、一応ね。

「……おれが、帰ってくる日って南地区の祭りがあるんだ……」

「ふーん?だから何なんですか、吉川くん?」

晃太郎が呟くと、彩月が意地悪にそう言う。まったく……。

「だから……一緒に行こう」

「え〜聞こえないなぁ?」

「もう彩月、良いじゃない。晃太郎だって私たちと遊びたいって思ってくれてるんだからね」

晃太郎に笑いかけると、彩月は遊び尽くした赤ちゃんみたいに屈託のない笑顔を浮かべた。