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- Re: 【番外編*更新】ウェルリア王国物語〜眠れる華と紅い宝石〜 ( No.75 )
- 日時: 2013/07/04 12:42
- 名前: 明鈴 (ID: tDifp7KY)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1/index.cgi?mode=view&no=33552
■番外編2■ 続・ウィルア兄妹の日常-The volume on extra-
しばらくパズルに熱中していた二人は、ノックの音で時間の経過を悟った。
「ユメノお嬢様。失礼しますよー」
入ってきたのは、ユメノの乳母であるウィンクであった。ユメノが産まれた時からお世話係をしていて、年齢はまだ23歳の若年メイドである。
ウィンクが手にしているお盆には、ティーカップと、ショートケーキの乗った皿が、それぞれ二つ並んでいた。ティーカップの中にはカモミールティーが並々と注がれている。
「お二人の仲が宜しくて、乳母であるウィンクもとても嬉しく思います。はい。それではここらでいったんティータイムにしましょうね」
言いながら扉の傍らにお盆を置くと、ティーカップを両手で二つ持ち、カチャカチャと音を立てて食事用の机の上に並べていく。
ケーキの乗った皿をセッティングしているウィンクの後ろで、突如アスカの歓声が上がった。
「出来たぞっ!」
「やったのだ! 完成したのだ!」
手を取り合って喜ぶ兄妹。
ウィンクはその言葉を聞き、作業をしながら振り返った。
「何が完成したんですか?」
「5000ピースのパズルなのだ! ユメノがほとんどやってあげたのだ」
「まあ。それは素晴らしいです! お嬢様」
「違うぞウィンク。ユメノが勝手に手を出してきたんだ。これはオレが作り上げたと言っても過言じゃない!」
「何を言っておるのだ兄上。これはユメノがほとんど作ってあげたのだ」
「なんだとっ……!」
「約束通り、最後のピースは兄上にはめさせてやったがな」
「っおとなしく聞いていれば、あることないこと抜かしやがって……!」
「本当のことを言ったまでだが?」
「可愛くない妹だなっ……!!」
拳を振り上げるアスカに、ユメノが笑顔で「ひゃー」と防御する構えを見せる。
「お嬢様! 私にも見せてくださいませ」
刹那——それはほんの一瞬の出来事だった。
駆け寄ったウィンクは、ダッシュすると同時に自分のスカートの裾を踏んづけていた。
「……っあ…………!」
態勢が傾いた。
グラッ……と。
嫌な予感がして、アスカが思わずウィンクを制するように腕を伸ばす。
が、しかし。
その甲斐なく、ウィンクの身体はつんのめる様にして机にダイビングしていた。
ウィンクの眼前に、完成間近のパズルが迫って——。
——ズザザザーッ。ゴンッ。
机にウィンクの身体が投げ出される。
静まり返る室内。誰も声を発さない。否、発することができなかった。
当然、この状況下で机の上のモノが無事なわけがない。——そう、アスカが半年かけてやっと完成させようとしていたあのパズルはものの見事にバラバラになってしまったのだった。
机の上に倒れ込んで、しばし呆然と目を瞬くウィンク。
それからはっと我に返ると、慌てて机の上から起き上がった。
裾の長いメイド服から埃を叩き落す。
机の上に目をやると、机上は見るも無惨な状況と化していた。
これは……酷い……。
あまりの仕打ちに、ウィンクは伏し目がちにアスカを見た。
出来れば目も合わせたくなかった。
しかし、ここはとにかく謝るしかない。……謝ろう。
案の定、アスカも暫くの間、何が起こったのか理解出来ていなかった。——否、出来ていたのかも知れないが、受け入れ難い事実であることは一目瞭然だった。
それこそ文字通り、現実逃避である。
「あっ……あああああああああのあのあのあの、おおおおおおお王子…………様まままま………………」
小刻みに震える唇で言葉を発するウィンク。
「ももももももももも申し訳ございません王子。そそそそその、わ、ワタクシ………………」
慌ててアスカの元に駆け寄る。
「す、スミマセン、まままま誠に申し訳ございません。そそそそ、その、あの、なんとお詫びを申したら……………その…………」
ウィンクの顔はすっかり青ざめている。
アスカは俯いたまま黙り込んでいる。
「アスカ……王子様………」
半泣き状態のウィンクに、アスカが俯いたまま、言った。
「……いや、良いよ。済んでしまったものは仕方が無い」
「アスカ王子………………」
「だが、な、…………」
震える唇で微かにぼやく。
「申し訳ないが、……暫く、一人にしてくれ」
その言葉にウィンクは物凄いスピードで頭を下げると、ユメノを連れて素早く部屋を後にしたのだった。
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⇒あと少し番外編…
あれ、番外編って、どの位の長さなんだろな(‾▽‾;)ヽ
本編執筆、さ迷ってます(‾▽‾;)
2013.07.04*明鈴