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Re: 恋芽生え、愛咲く〜喜恋・悲恋〜【短編集】*アンケート実施* ( No.104 )
日時: 2013/07/26 09:17
名前: 珠紀 (ID: GC8OxdMB)

『決して花開くことのない蕾が開く時』【オリジナル】

松原蕾 Tubomi Matubara

松原圭 Kei Matubara

*Start*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

…蕾
決して花開くことなく
ずっと側で幸せに笑っていてほしい

「圭兄ーーーーー…っ圭兄、起きて!朝ゴハンできたよーーー」

朝、第一声に聞こえるのは妹の声。

「もー、また大学の講義に遅れてもしらないよ!?お父さんはもう元気に出勤したのに………!」

布団を無理やりはがされる。

「ん…ーーー…蕾、俺…今日休講…」
「…蕾、寒いよ」

なぜか隣に男。

「今、何時…?」

それを気にせず蕾に問う。

「ボ…Bl…?」

蕾の声が部屋中に響いた。

                  …***…

「誤解だって!」

「誰がこんなストーカー」
「誰がこんなシスコン」

それでも、じっと見つめる蕾。

「いいか?…よく聞け蕾。純介は本気でヤバい…深夜2時、俺がゼミの呑み会から帰宅したらお前の部屋に外側から侵入しようとしてたんだぞ!!ハシゴまでかけてっ」
「ヒドいや圭兄!俺はちゃんと蕾にメールしたもん!なのに誰も開けてくれないから」
「ゴメン、私寝てた」
「がーん」

落ち込む純介。
…ったく、彼氏でもないくせに他人の家に夜中に遊びにくんなよな。
幼なじみだからって図々しい。

俺の部屋で説教してたら寝るし…

「あ、お母さんたちにもゴハンあげなきゃっ」

蕾は立ち上がり仏壇の前に座る。
俺も横に座った。

「明ママ、瑞希ママ。今日も圭兄と蕾が元気に1日過ごせますように」
「純介が早く蕾を諦めますように、父さんのハゲが治りますように」
「…なんか違くね?」

僕と蕾は、血がつながっていません。
俺は病死した先妻の子で、蕾は事故死した後妻の連れ子。
近所の奥様たちは“松原家に嫁ぐと早死にする”とウワサした。

「いってきまーーす」

学校の準備を終え、玄関を出ようとする蕾の手を引っ張り、ドアに押し付ける。
顎を持ち俺の顔に向けた。

「………香水…つけすぎ。リップも、濃すぎだろこれ…」

唇にそっと手を添える。

「…っ…圭にぃ…」

黒いやわらかな髪
白いうなじ
長いまつげ
薔薇色のほほ
熟した実のような赤い唇

蕾…
頼むから
急いで大人にならないで
俺から、離れていかないで

「…やだっ」
「…っ」

ど突かれて我に返る俺。

「…どうせ私にはメイクなんて似合わないよ、…圭兄のバカ!」

蕾は純介と走っていってしまった。

ー数時間後

「…………どーせ、俺はばかですよーだ…」
「……………兄バカ?」

ただいま、友達に愚痴っているところである。

「…俺おかしいかな?」
「ぃやー普通でしょ、蕾ちゃん高校生にしては色っぽくて落ち着いてるしたなぁ…毎日一緒にいて血つながってないなら恋しちゃっても仕方ないさ」

………………仕方ない…か

ーーーー12年前、春
義理の母と妹ができた。
…あの日、このこを本当の妹として、精一杯大事にしようと思った。
でも…

雨に濡れて透けた下着が
寝起きの無防備な顔が
湯上がりの火照った頬が…

妹じゃなく、血のつながらないひとりの女だって思い知らされる。
……ごめんな、蕾。
こんな気持ち消えてしまえばいいのに。







「ただいま」
「おかえり」

帰ると、笑顔で迎えてくれる蕾。

「18歳の誕生日おめでと」

そう言って買ってきたものを差し出す。

「香水?」

シュッと手首につけると甘いシャンプーの香り。

「……18の女の子には子供っぽすぎない?」
「…………何言ってんだ、18はまだ子供だろ」

そう言って蕾の頭に手を置くと、勢いよく弾き返される。
そのせいで、蕾の指にはまっていた指輪がコロコロと落ちた。

「…ごめん圭兄…」
「…この指輪のサイズ、蕾には少し大きいんじゃないか?」

指輪を拾い上げ、蕾にわたす。

「………いいの」

愛おしそうに指輪を握る蕾。
ーーーーーそうか
小さいけど高価そうな石
大人っぽいデザイン
誤ったサイズは蕾に内緒で買ったから?

「……………ーーー純介とつきあってんの?」
「………」

しばしの無言。

「ーーーーーうん」

……………そうか

「蕾、…純介にたくさん幸せにしてもらいな」

俺は今…笑えているだろうか?
きちんとした笑顔を向けているだろうか…?

「ありがとう、圭兄」
「おう」

キュッと握られる俺の手。

「…手はらってごめんなさい、痛かった?でも、もう子供扱いしないで。私、圭兄が安心できるようなしっかりとした大人の女になりたいから…圭兄もちゃんと幸せになって…」


俺はもうとっくに
とてもとても…
『幸せだったよ』

ーーーこれで良かったんだ
蕾が幸せなら
こんな痛みなんてどうでもいい

純介と…

「!?」

無理やり蕾を抱きしめる。

「…………っやっぱりムリだ、行くな…!ずっとずっと好きだったんだ」

涙が止まらない。

「バカな願いだって分かってる、蕾を一番幸せに出来るのは俺じゃないってことも…側にいてくれ…遠くに行かないで……」
「………圭兄…」

唇に触れる熱。

「ーーー私もずっと圭兄が好き…っ好きで好きで…毎日苦しかった。ーーー恋はいつか消えてしまうかもしれないけど家族はずっとつながっていられるから【妹】でいるために他の人を好きになろうと思ったの…」

蕾の瞳から雫が落ちる。

「…でも圭兄じゃないとダメだった。ちゃんと恋だと思える瞬間もあったのに、純介を傷つけるだけだった…」
「おま…じゃあ、つきあってるって…ウソ…」

『間違い』なんかじゃない
汚い気持ちなんかじゃない

「俺は…蕾さえいればいい」

だってこんなにあたたかい…

君は蕾
花開いてもずっと
側で笑っていてほしい

*End*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー