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- Re: 恋芽生え、愛咲く〜喜恋・悲恋〜【短編集】*アンケート実施* ( No.105 )
- 日時: 2013/08/07 19:43
- 名前: 珠紀 (ID: OjDUGINw)
『消えない証』【実話】
町田直 Nao Machida
小枝春人 Haruto Koeda
*Start*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
学校の片隅に
「これはもうプロの領域ね…!」
「すごいよ町田さん!」
地味な料理部員がひとり。
「料理は小さい頃から作ってたので」
「あ、そーだ町田さん。美味しいマカロンの作り方教えてほしいんだけど」
マカロン?
「3組の小枝春人くん。もうすぐ誕生日でしょ?だからマカロンをプレゼントしようと思ってさ」
「…悪いけど、私甘いの苦手なの」
甘いのなんて嫌い…
『…幼なじみだからってさ、誕生日に手作りとかひくよな』
…あんなことがあったんだから…
…***…
「おはよ」
「あ!いいところに。直」
朝、寝起きの私を呼び止める両親。
ん?
「今日から私たち、社内旅行でいなくなるじゃない?旅行中の間、小枝さんとこの春人くんのごはんの面倒みてもらえない?」
はぁ?
母親の後ろになぜかハルの姿。
呑気に手をふってやがる。
「やだよ!なんでそんなこと…」
「…小枝さんはお父さんの直属の上司」
耳元で母に囁かれる。
「……………………」
「そういうことだから、ヨロシクネ。直」
笑顔のハル。
っ知るか!!
ー学校
なにが『ヨロシクネ』よ
手作りなんてってバカにしておいて
…アイツはいつもそう…
仲間内で楽しめたらいいと思ってる軽薄男
ヒトの気持ちなんて気遣いもしない…
…まぁ結局
私が同じ住宅の同級生ってだけの存在だからなんだけど
「なー、今日から食堂改装工事だったのよな?」
「えっマジ!?俺、弁当忘れたー」
ハルの話し声が聞こえる。
『弁当忘れた』…?
…ざまあ!
今日1日腹ぺこで過ごすがいい!
…なんて言ったけど。
我ながら馬鹿なことをした。
弁当をハルの机に置いてきてしまったのだ。
…よく考えたら恵んでくれる子いっぱいいるよね…
調理室
材料置いてあったかな…
ありあわせでなんか作って
「誰のものか分からない弁当、机の上に放置されても困るんだけど?直」
「!?」
なんで!?
ハル…が
後ろから急に握られた手を振りはらう。
「この弁当、直のだってバレバレ。直の嫌いな野菜が全部細かくしてある…お前昔から弁当に野菜は細かく入れてたもんな」
…そんなこと覚えてたんだ。
「直、半分こして食べよっか」
「はぁ!?」
「俺と食べるの…いや?」
でた。
ハルの上目遣い攻撃。
…こんなので私は負けないんだから。
「………………」
負けないもん。
「………………………」
負けないって。
「…………………………………」
〜〜〜〜〜〜〜〜っっ
「た…べる」
負けた…
「あ、なぁ。今日の晩ご飯何?」
席についていなや、すぐに晩御飯の話をふられる。
「まだ…決めてないけど」
「じゃあ、今決めて」
無茶ぶり!!!!
「はい、さーん、にぃーい、いーち」
ちょ…っ
「ォ、オムライス!」
「…まじで?」
ハルの顔がキラキラと輝く。
「じゃあさ、じゃあさ。今日食材一緒に買いに行こーぜ」
はい…?
「放課後一緒に帰るついでにさ」
そう言ってハルは、いつの間にか平らげていたのか…弁当を私に差し出し教室から出て行った。
数時間前まで避けてた相手と買い物行くって約束しちゃった…
…ほんと想定外の展開
「…だけど、今日友達に遊びに誘われてたし」
そっちを…選ぶよね…ハルなら。
…***…
結局ひとりで帰ってきてしまった。
…いいよね。
だってハルは、友達と遊んでくると思うし。
ーピンポーンー
チャイムが鳴る。
…誰だろ。
扉を開くと、思いっきり肩をつかまれた。
「!?」
「なんでひとりで帰ったんだよ!一緒に材料買いに行くっつっただろうが!」
「えっハ、ハル?」
なんでハルがここに。
「友達と…遊びに行ったんじゃ…」
私の手作りなんかより…友達を選ぶと思ってたのに。
「アホ」
ごつりと頭をたたかれる。
「約束したんだから、直のが優先に決まってんだろ」
…確かに
私、ハルのこと過剰に不信がってた。
「…ごめん…約束破って…ごめん、ハル」
ずっとこのままじゃダメだよね
「…許さない」
頬を両手で包まれて顔を上に向かされる。
そのせいで、目線がバッチリとハルとあう。
「約束破ったお詫びに…欲しい物があるんだ」
トクトクと心臓がなる。
「直があの時俺に渡そうとしたマカロン、もっかい俺にちょうだい」
なんで…
なんで今更、そんなこと言うの
そんなこと言われたら…
そんな目で見られたら…
消したはずの感情が沸き上がってくる
本当は怖くてたまらない
だけど、ハルの気持ちが知りたい
「うん…」
ー次の日
「ハル…いる?」
ハルの教室に行くとざわつく教室。
「うわっマジできた」
「春人の言った通りだ、町田がマカロン持ってくるって」
…なんで知ってるの?
ハルはいったいどういうつもりでーー…
「ってことは賭は俺の勝ち!」
『賭』…?
「くそーフられた相手にまた同じもの作ってくるとは思わねーだろー」
「あ、町田がマカロン持ってきたぞ!春人」
振り向くと、ハルの姿。
…ああ、そっか
「直?」
…また私をからかったんだ
「ハルなんて大嫌い」
雫が頬を流れ出す。
そのままハルに背中を向けて走り出した。
…分かってたこと…分かってたことなのに。
「直!待てよ!」
「来ないで…もう…ほっといてよ…」
もう…
「ハルといるとつらくなる!消えて…っ!」
私の前からも
私の頭の中からも
ハルに対する感情すべて
消えてしまえばいい
「…っっ」
「…もっと俺のことでつらい思いすればいい」
え…
手を引かれキスをされる。
「そうすれば直は俺を消せないだろ…」
「…っ」
「ごめん、直。誕生日の日ダチの前で調子にのって直を傷つけたこと…すごく後悔してる…手作りのマカロン、本当はすごく嬉しかった」
そんな…こと…
今頃、言われたって…
「…嫌いでいい」
ぎゅっと身体を抱き寄せられる。
「嫌いでいいから俺のこと消そうとしないで」
ーつらいことも、悲しい思い出も
ー全部消えないー
『証』となって…
耳元で囁く彼の声に沈んでいく…
*End*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー