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Re: 恋芽生え、愛咲く〜『喜恋・悲恋』恋愛〜【短編集】 ( No.37 )
日時: 2013/07/04 21:30
名前: 珠紀 (ID: j1BtfBJW)

『好きなカタチ』【オリジナル】

三島瑠璃 Ruri Mishima

小笠原優 Yuu Ogasawara

*Start*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

好きなカタチは色々あるけど…
私の場合は
人にはちょっと言えない。
…だって本当の私を知ったら皆引いちゃうからーー…

「瑠璃さん!好きです!つきあってください!」
「…優君、バイト中に無駄話はやめてね?」

学校近くの喫茶店のバイト中、バイトの後輩にバイト中にも関わらず告白される。
だけど、これは日常茶飯事の事。

「はぁい…」

私がそう言うと、犬のようにしょぼくれる優君。
…そんな顔したって私には効かないんだから。

「クールだねぇ、つきあってあげればいいのに」

優君がお客様のところへ行ったのとすれ違うようにバイト仲間が話しかける。

「…年下、興味ないから」
「勿体無い!優君、イケメンじゃん?」
「興味ない!ほら!仕事仕事」
「はいはい」

バイト仲間の背中を押し私はさり気なくその話題をスルーした。

                  …***…

「パーティー?」
「そう、このカフェ貸し切ってお得意様を呼んでやろうと思うんだ」

バイト終わりの時刻。
ミーティングの時に店長がみんなに向かって話す。

「だから、誰か買い出しを頼まれてくれないかなっと思っていましてですね?」

チラリとこちらを見られる。

「店長…私に行け、と」
「あはっ?悪いねぇ、瑠璃ちゃんならしっかりしてるし適任かなと思って」

…この人自分がめんどくさいだけじゃないかな…
そんなことを思ってしまう。

「…分かりました」
「いや〜助かるよ〜ありがとね〜」
「いえ…」

どーせ、誰も行かないだろうし…結局は私に決まっていただろう。

「え!瑠璃さん行くなら、俺も行く!いいですよね!?店長」

ぇっ!?
いきなり腕を掴まれ、身体が優君の方へと引き寄せられる。

「おー!青春だねぇ…いいぞー」

店長はそんな私達をニヤニヤしながら見つめて、頷いた。

「ちょっ…待ってくださ…」
「うはぁ…めちゃめちゃ楽しみ」

そんな私の止めも聞いてもらえず、2人きりで買い出しに行かなくてはならなくなってしまった。

「ほら、さっさと行くよ」
「わーぉ…スルー」

ニヤニヤしている優君を置いて歩き出す。

…違う。
スルーしなくちゃいけないの。

『お前のそーゆーとこ重い』

昔つきあっていた男の子から言われた言葉を思い出す。

…本気で好きになると、嫌われてしまう。
私はあの時思い知ったのだから。

「…瑠璃さん」
「え、何…わっ!」

呼びかけられ後ろを振り向くとマフラーをかけられる。

「外、寒いっすから…冷えないように。…ふえっくしょんっ!」

言ったそばから大きなクシャミ。

「っアハハハハハッッ…自分がクシャミしてたら意味ないじゃない」
「…………」

思わず爆笑してしまうと、優君は優しく笑って私を見つめた。

「な、何…?」
「よかった…笑った」
「え」
「俺、クールな瑠璃さんも好きだけど…笑った顔もたくさん見たい」
「ーっっ」

そんなこと、言わないでよ…

「それ…女の子みんなに言ってるでしょ…」
「?言ってませんよ!あの…何か怒ってますか…?」

…って何言っちゃってんの!

「いや!ごめん…何でもない!」

慌てて否定する。

「…もしかして…ヤキモチ?」
「…っっ!?」

ヤキモチ…!?

「…可愛すぎでしょ」

口元を抑える優君。
ほんの少し顔が赤いのが見えた。

…どうしよう…
嬉しい
嬉しくて

泣きそうだーー…

好きにならない方が、うそ

「なんだなんだ!?お前ら!いちゃつきやがってよー」
「俺の彼女なんて、すんげーヤキモチやきでめんどくせぇんだよー。お前はいいなぁ…瑠璃ちゃんみたいな奴が彼女で」
「いや、俺と瑠璃さんはそんな関係じゃ…っ」
「お前もそんなウザい彼女とか無理だろ!?」

バイトの先輩方がちゃかし始める。
優君の反論も呆気なく遮られてしまった。

「は、はぁ…」

…ウザい…。
その言葉がグサリと私の胸にささる。

…優君…なんて答えるんだろう…

「あー…重いのは勘弁っすね」

ードクンー

その言葉を聞いた瞬間心臓が大きく跳ねた。

「そーだよなぁ!そーだよなぁ!いいなぁ!お前は、瑠璃ちゃんみたいなクールビューティーでー」

ーーーーーーーバカだ私
そっか、そうだよね…
優君が優しいから 
こんな自分でも受け入れてくれる気がしてた。

「はぁ…なんなんすかね…。…瑠璃さん?」
「行かない」

肩におかれた手を振り払う。

「え…」
「買い出しは私1人で行くから…優君はこなくていいよ」

振り返りざまにそう言うと、傷ついたような顔をした優君が目に入った。

「…っっ」
「…分かりました…。迷惑だったっすよね」

ーーーー違う
だって…
だって怖いんだもん
…いつか優君に嫌われるのが。

「優くぅん!行かないなら私達と飾り付けやろぉ?」
「そーだよぉ」
「あー…はい」

女の子に話しかけられる優君を見て唇をキュッと噛んだ。

…だけど…
だけど私
それ以上に優君が

「本当は嫌なの!」
「え…?」

初めて大きい声をだして店の皆の視線が私に向く。

「優君が他の女の子と話すのもメールするのも嫌!独り占めしたいの」

周りがざわつく。
だけどそんなの気にしていられなかった。
口を開いてしまったら止められない。

「本当は全然クールじゃない…ウザい女なの!…だからっ」

涙が零れ落ちる寸前、暖かいものに包まれる。

「はぁ…あのさぁ」

耳元から聞こえる低い声。

「好きな人に言われるんならウザいわけないでしょ、むしろ嬉しいっつの」
「…」
「瑠璃さんがやめてって言うならやめるよ、当たり前じゃん。だって瑠璃さんといる方がずっといいじゃん」  

優君…

「でしょ?」
「うん」

私の好きのカタチ伝え続けるから
受け止めてね
来年もその先も

ずっと…

私たちはそっと唇を合わせた。

「やっべ…幸せすぎて死ぬ…」
「えぇ?」

*End*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー