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Re: 恋芽生え、愛咲く〜『喜恋・悲恋』恋愛〜【短編集】 ( No.49 )
日時: 2013/07/09 21:10
名前: 珠紀 (ID: ovjUY/sA)

『最後のキセキ』【オリジナル】

剛力雅 Miyabi Gouriki

松岡広樹 Hiroki Matuoka

*Start*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

空を見上げては祈ること…
それは今も変わらず一つだけ

「交通事故ですって」
「まだ若いのに、可哀想に…」

周りから、そんな会話が聞こえる。

「広樹ぃぃ…っ」
「梓…」

今日は広樹のお葬式。

広樹。
あんた、何やってんの
彼女泣かしちゃダメじゃん…
ほら早く

「笑わすのはあんたの得意分野でしょ…?」

もう一度だけ…
会いに来てよ。

「雅、おっ前…俺の葬式で泣かないとかどんだけよ」

ぇ…?

「さすがの俺でも傷つくわ」 

声の方を振り向くと、広樹の姿があった。

「な………っぇ…!?」
「あ?お前、俺のこと見えんの?」

何…


「………っ」
「うお、まじかよ」
「ほ…本当に、広樹…?」

広樹の方へ伸ばした手は呆気なく広樹の身体を通り抜けた。

「…あの世に行けねぇみたいなんだ」
「……」
「つか、見ろよ!俺浮けるんだぜ?わっはは!!」

あ…
懐かしい
広樹の笑顔。

『私に向けられた笑顔ーー…』

「さっ!雅。行くか」
「ぃ、行くってどこに…」
「俺の未練探しの旅」

は!?!?!?

「事故った日すげーしたいことあったんだけど、スコーンと抜けたみたいでさぁ。あの日の行動を辿ってみようと…」
「…彼女に関することじゃないの…?」

ついつい、トゲのある言葉を口にしてしまう。
だけど、

「まぁ、いーからいーから。付き合えよ」

広樹は笑って触れられない手で私の頭を撫でる素振りをした。

「……」

本当にいつも広樹はずるい。
そうやって私のこの気持ちを強くさせるんだから…

「そーいやさ、お前さっき飴持ってたじゃん?」
「あ…うん」  

広樹に驚いてポッケにしまったけど。

「そのお前の飴さ、俺がいつも自主練してると荷物の上にあってさ」

ドキリと心臓が跳ねる。

「その後梓が飴くれてさ、これあげるっーーってそん時にいつも飴くれてたのって梓だと分かって、それきっかけで付き合い始めたなぁと思ってな」

そんな…
付き合った理由ってそれ…?

胸がずきずきと何かに刺されたように痛い。

「そんじゃ行くか」

…苦しいよ、広樹。
なんで……

                  …***…

「ねぇ、本当にこの道なの?」

私達は…『道』…
というか…
草村を掻き分けて歩いていた。

「ここ近道なんだよ」
「…その未練が実はトイレでしたとかってオチはやめてよ…?」
「ふはっ!それはねーから」

そんなことを喋っているうちに草村を抜ける。

「ここ…きゃっ!」

石崖を降りようと足をかけたとき滑って落ちてしまう。

「いった!」
「!…大丈夫か?」
「うん」

痛みを抑え笑顔で応えると、広樹は拳を強く握りしめた。

「…もう助けてやれねぇんだからさ、気をつけろよ?」
「…っ」

なんで…
なんでそう優しくするの?
消そうともがいていた広樹への気持ちが
溢れてしまいそうになる…

「雅ちゃん?」

聞き覚えのある声に振り向く。

「あ…梓ちゃん…」

あ…
私、最低だ…
今、梓ちゃんに広樹が見えてないことにホッとしてしまった…

「雅ちゃん…私、謝りたいことあるの。…これ」

梓ちゃんが取り出したのは私がさっき広樹に見せた飴だった。

「いつも大切そうになめてたから同じのあげたくて…頑張って探して広樹君にあげたの」

やだ…
やめて

「付き合ってから、自主練の時にいつもくれる飴のこと聞いたけど、違う人だって言えなかった」

お願い…

「あれ…」

言わないで!!!!!!

「雅ちゃんだったんでしょ?」

や…め

「事故にあった日、私言われたの。別れてほしい、ほっとけないやつがいるんだ…って」
「…!」

私の想いなんかに気づかないで

「雅ちゃん!」

私は梓ちゃんに背を向け走り出す。

「雅!!」

広樹に呼ばれ私は足を止めた。

「あれ…お前だったんだな…。思い出したよ、俺…あの日俺は、お前に会いに行った」

『おっ前俺の葬式で泣かないとかどんだけよ』

泣かなかったんじゃない 
…泣けなかったの
だって泣いてしまったら…

広樹の唇が私と重なる。
温かさはない…すうっと私の唇を通りぬけた。

「ずっとこうしたかった」

広樹が本当にもういないって認めることになるから。
…生きててほしかった
どうしてもっと

『素直になれなかったのか』

「たった17年しか生きらんなかったけど、最後に雅といれてよかった」

やだ…嫌だよ

「やだ…行かないで…!」

『好きだったよ』

そう言って笑う広樹の身体がぱんっとシャボン玉がわれるように消えていった。

なんで…過去形なの?
なんで…
なんでもっと
素直に…

「「「「「広樹ぃいい…っ」」」」」

ねぇ、神様。
あなたは残酷です。

伝えられたはずの想いを…叶えられたはずの想いを…
広樹に会わせるだけ会わせて…伝えることさえも許してくれなかったのだから。

ねぇ、広樹。
私の願いは届いてますか?

優しく風が頬をなでて
いつか私の涙が乾いても

《一生かけて祈ってる…あなたの笑顔を…》

*End*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー