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- Re: 恋芽生え、愛咲く〜『喜恋・悲恋』恋愛〜【短編集】 ( No.5 )
- 日時: 2013/06/23 22:05
- 名前: 珠紀 (ID: uM6Nt9B0)
『君の存在を失ってはじめて』【実話】
三浦瑶 Tama Miura
石橋拓哉 Takuya Ishibashi
*Start*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『誰…っ?その人…!何してるの!?』
『は?…ちっ、うっぜ…お前もういらねぇわ』
…あんな思いするなら、恋愛なんてもうしない…
私はそう誓った。
あいつに会うまでは。
…***…
「綺麗…」
放課後、私は1人で天体の雑誌を見ていた。
星は飽きない。
いろんな色、形…
私は昔から星が大好きだった。
「ん?何、何??ここのスポット俺と行きたいって?もち、OKですけど?」
後ろからムードもなく話しかけてくる男。
「…」
「無視!無視ですかぁっ!さすが俺の瑶!」
うざい…
うるさい…
本当に。
「誰が『俺の』だ」
拓哉が半年前告ってきて断った。
だが拓哉は『諦める』という単語を知らなかった。
「もう、何度も何度も私のところに来ないで。返事は一緒なんだから…」
…あんな思いはもうしたくないの…
私は拓哉に背を向け、歩き出す。
「ちょっ!瑶!待って!一緒に」
「ひとりで帰る」
「待てって!」
グッと腕を掴まれ、振り解こうとしたが力が強い。
「…俺…昔の瑶を捨てた男と一緒にされてんの?俺なら瑶をっ」
「うるさい!!!!!」
何が…『俺なら』よ…
男はみんな最初はそう言って…
あっさり裏切るんだから。
「あんたモテるんだし、テキトーに彼女作ればいいじゃん…」
「…ハァ?うぉい…だから俺はっ」
「もう!いい加減にしてよ!!ーっっ何度も断らせないでっ」
…一瞬…何かを踏み潰した音がした。
拓哉の気持ちを踏み潰した音。
そんな顔…させたかったわけじゃないのに…っっ
私は背を向け走り出した。
…***…
家についていくら時間がたっても拓哉のあの顔が頭から離れなかった。
傷つけたかったわけじゃない…
ただ私が…怖いだけなの。
ーピロロロンー
着信音がなり、涙を拭いて電話に出る。
「…はい」
「瑶!すぐ来て!!」
友達の千尋からだった。
「拓哉が事故った!!」
な…に
事故った…?
嘘。
だってさっき普通に話してて…
何で…
「何で!!」
私はすぐさま病院へ駆けつけた。
「拓哉っ!」
病室に入ると、元気にはしゃいでいる拓哉の姿。
「ぇ…」
急に力が抜け、その場に座り込んだ。
「ぁ、瑶!」
千尋がそれを支える。
「…拓哉…あんた無事だったの?」
そう拓哉を見上げた。
だが、
「ねぇ…この人、誰」
返ってきたのはそんな言葉だった。
「…は?」
病室にいたクラスメートがざわつく。
「な、何言ってんの?この子は瑶だよ?記憶喪失ってやつか?」
千尋が私を立たせながら拓哉に問いかける。
「は?何言ってんの。正常だっつの、千尋だろ?伸之に晴香に志穂、智に向井。パーフェクト♪」
拓哉は私の存在だけ消していた。
もう傷つけたことを謝ることすらできない…
それも、もう…消えてしまったんだから。
ー次の日
「うぉっはよー!」
拓哉は擦り傷だけだったらしく、いつもどうり元気に登校していた。
だけど…
「拓哉…瑶のところに来ないね?いつもうざいくらいに瑶にまとわりついてたのに…」
半年前に戻っただけ…
それだけ。
千尋の言葉をそう片付けた。
ードンー
「ぁ、わりっ」
ふざけて遊んでいた拓哉が私の机にぶつかる。
と、ひょうしに筆記用具が落ちようとして、拓哉が間一髪で止めた。
「あっぶねー…」
「ぁ、ありがと。拓哉」
「こっちこそごめんな、三浦さん」
…一瞬『三浦』って誰だと思った。
名前で呼んでいた拓哉の声が頭に響く。
「おーい拓哉っ!」
「へーい、今行く!」
目もあわさずに駆け出す彼の背中が、はじめて…
遠いと思った。
ー月日は2ヶ月たち、だけどなお拓哉の記憶は戻らないままだった。
「そーいやさぁ…拓哉、彼女できたらしいよ!」
「ぇ!?マジで!?瑶のこと好きだったんじゃないの?」
「瑶の記憶だけ2ヶ月前の事故でなくしたんだってぇ…」
クラスメートの話が耳に入る。
「はぁ?何そのドラマチックなシナリオ…」
「ま、いんじゃない?瑶、相手にしてなかったしぃ」
…拓哉に彼女。
『好きだよ』
そういう拓哉の顔が頭に浮かんだ。
『諦めるとか?俺の辞書にありませーん』
いつもふざけてたけど、拓哉は私を見てくれてた…
これは…そんな拓哉を傷つけた、罰だ。
いても経ってもいられなくなり、私は『あそこ』へ向かう。
「ぇ!?瑶!?どこ行くの!」
「展望台!!」
拓哉が事故にあう前、話していたパワースポット。
神様、私ならどんな罰を受けてもいいです…
だけど。
展望台についた私は息を大きく吸った。
「拓哉をかえしてくださぁぁぁぁい!!!!」
拓哉から私を消さないでください…
今頃気づくなんて…バカだ。
『好き』なんて…
「声でけぇな」
後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「拓哉」
そこには爆笑している拓哉がいた。
「だっはははっ!おまっ!ひーっ!デカすぎだろ!!」
ぽかんと拓哉を見つめる。
「ってかさぁ…何で1人できてんの?あんなに誘ったのに」
『あんなに誘った』って…
「拓哉…記憶」
私がそう言うとバツが悪そうに下を向く。
「あー…ごめんなさい。記憶喪失とか嘘です」
「はぁ!?」
「いやいやいや!ごめんって!!怒らないで?瑶ちゃん?」
「何…で…」
いつもどうりの拓哉に涙が溢れる。
「何で…嘘なんか…ついたのぉ」
「…俺が瑶のこと忘れるわけねーじゃん」
抱きしめられて拓哉の香水の香りに包まれる。
「俺に好きって言われることで、瑶が傷つくんなら…事故利用して瑶を忘れた振りをしてずっと片思いでいいかなぁと思ったんですよ」
ポンポンと背中を叩かれ、わざとらしく敬語で話す拓哉。
「でも、ぁ、あんた…彼女できたって」
「はぁ?誰がそんなこと言ったんだよ!!そんなんいねーしっ」
『俺は瑶だけだっつの』
そう拗ねたように呟く彼を愛しく思った。
そっと抱きしめ返す。
私が彼に想いを伝えるのはそう遠くない話。
私が勇気を出して言ったときはちゃんと受けとめてよね…?
*End*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー