コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

Re: 恋芽生え、愛咲く〜喜恋・悲恋〜【短編集】『最後のキセキ』更新 ( No.55 )
日時: 2013/07/12 15:46
名前: 珠紀 (ID: 6AakIVRD)

『もし、あのトキに戻れるのならば』【オリジナル】※今回は男視点と女視点を書きます。まずは男視点から。

島村まどか Madoka Shimamura

佐伯一馬 Kazuma Saeki

*Start*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

もしも奇跡が起こるとしたら
お前は何を願うんだろうか。

今日は文化祭準備。
俺は後夜祭のお知らせの紙をじっと見ていた。
そこには『我が校の後夜祭では好きな人と一緒に同じ願いを唱えると叶うと言われています』と書かれている。

「…」

ちらりとある女子生徒を見つめる。

「やばっ!私このあと委員会の集まりがあるのに…」
「ぁ、じゃあ私がやっておくよ!」
「本当に!?ありがとう!まどか!」

またか。
溜め息混じりにまどかに近づく。

「おい、まどか」
「ん?何?」

にっこりと微笑みながら振り向く。
…こいつは本当に…

「ほんっとお人好しだな。お前も委員会あるんだろ?」
「そ、そうなんだけど、困ってたし…それにほら!間に合わなくても委員会の後にやればすむでしょ?」

本当にバカなやつ。
結局自分の首締めやがって。
…でもまぁ。

そんなとこが好きだったりするわけだけど。

「手伝ってやるよ…暇だしな。あとでジュース奢りな?」
「う、ぅん!」

満面の笑みを向けてくるまどか。

「あ…のさ、まどか。明日の後夜祭なんだけど…」
「一馬君〜!」

いきなり後ろから誰かに抱きつかれる。

「ゆ、有里ちゃん」
「ね、明日の後夜祭。私と過ごさない?」
「えっと…俺は」

チラリとまどかを見る。

「ぇーいいじゃん!ね、まどか?」
「う、うん。2人ともお似合いだよ?」

え!!!
ガーンと俺の頭に鐘の音が鳴り響いた。
お、お似合い…

「ねぇ、まどかは?委員会の先輩のこと誘った?好きなんでしょ?」
「ちょっ…有里っ」

…え?
好きな男
いんのかよ…

「応援してあげようね!一馬君」
「ぁ、あぁ…頑張れよ…」

俺、バカだな。
全然眼中に入ってねえじゃん…

俺が一番あいつのそばにいると思ってたのに
俺が一番あいつのことを想ってんのに

『なんでだよ』

                  …***…

ー後夜祭当日

「一馬君!もぉ探しちゃったよぉ。何を願い事する?」

《皆さん、もうすぐ18時です。鐘の音と共に祈りましょう!》

放送と有里ちゃんの声が耳に入ってこない。

…俺、まだあいつに気持ちすら伝えてない。
傷つくのはまだ早い
あいつに『好き』って言いたい。
もう遅いのか?
あいつが先輩のものになる前に

『戻らせてくれ…っ』

ーゴーンー

金の音が響き渡った。





「…ん。一馬君!」

誰かに呼ばれ目を開ける。

「一馬君、こんなとこでサボっちゃだめでしょ?」
「ゆ、有里ちゃん。ん…あれ?後夜祭はもう終わったの?」

有里ちゃんは『はぁ?』というような顔をする。

「何言ってるの?文化祭は来週でしょ?」
「はっ…?」
「ほら、早く教室戻ろ?」

いやいやいや
何言って…
だってさっきまで後夜祭だったよな?

教室に戻ると文化祭準備をしているクラスメイト達。
…あれ?
俺、夢みてたのか?

まさか…
俺があの時願ったから… 
まさか…まさか
まどかに好きだって…伝えられるのかーーーー…

「危ない!」

いきなりの大きい声に驚き振り向いた。
…そこにいたのは高くつまれてある机の上から落ちそうなまどかの姿。

「!!」

とっさに落ちてくるまどかを抱き止める。

「ーーーーッッ!!」
「ごっごめん!あのっ一馬さっき」
「怪我は!?」

勢いよくまどかの肩をつかむ。

「私は…大丈夫…でも」
「ーーこのバカッ!!ムチャしてんじゃねーよ!」
「ご、ごめん」

やべ
思わず怒鳴っちまった。

「ワリィ…」

こんな時、あの先輩なら優しい言葉とかかけたりすんのかな
…なんかヘコむ

「じゃあ行くわ」
「あっ待って」

まどかの声も聞かず俺は教室を出た。

                 …***…

「いってぇ」

中庭に腰を下ろした俺はさっきまどかを抱き止めたときに壁に思いっきり当たった肩をさする。
案の定、赤く腫れていた。

「もうっ!一馬!」
「え…!?まどかなんで」

俺を追ってきたのか、声の方向には息をきらしたまどかの姿。

「怪我してるんだったら言わなきゃだめじゃない!心配になって見に来たの」

気づいて俺は急いで赤く腫れた肩を隠す。

「あ!!これは別に」
「隠してもだめ!手当するから肩見せて」

…かっこわり…
好きな女守るのに、怪我するなんて。

「ありがとうね。一馬…一馬のそーゆー優しいところすごく好きだよ」

え…

「…な、なんてね」

俺の肩に湿布を貼り、ポンポンと叩いて照れたように笑うまどか。

…まどか。
好きだ。
ちゃんと伝えるから

ギュッとまどかの手を握る。

聞いてーーー…

「ぁ、あの!私手当ても終わったし先輩に呼ばれてるから、行かなきゃ…」

握った手を思いっきりはじかれた。
拒絶…

『先輩』
…ああ
そうなのか
結局こうなるんだな

「…そっか。お前、先輩のこと好きだもんな」

違う…嫌だ。

「ほら、先輩待ってんじゃね?早く行ってやれ」

行くな。

「………うん」

好きなんだ
誰にも渡したくねぇよ

なぁ、まどか
結局何をやっても
奇跡が起きようとしても
だめなもんはだめなんだな

きっとこれがーー…

「俺の運命…」

*男子視点End*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー