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Re: 恋芽生え、愛咲く〜喜恋・悲恋〜【短編集】*アンケート実施* ( No.97 )
日時: 2013/07/24 00:28
名前: 珠紀 (ID: GDqE8wiB)

『一歩踏み出す勇気』【実話】

蛭子愛美 Manami Hiruko

佐々木拓人 Takuto Sasaki

*Start*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

待ってるだけじゃダメなのは分かってる
一歩踏み出す勇気が必要だ。

「愛美ーー」

野球ボールが靴に当たったかと思うと、声をかけられる。

「投げて」

拓人…

「はい」

ボールを拓人めがけて投げる。

「あれ、今日女バス休みって言ってなかったか?」
「自主練〜」
「へぇー無理すんなよ」

拓人だっていつも無理してるくせに。

「じゃあな」
「あ、今日一緒に…」

『帰ろう』
…の一言が言えない。
拓人の背中はもう見えない。

佐々木拓人
私は彼に
3年も片思いをしている。
…そして最近もう一つの悩みが

                  …***…

「次〜ランニングシュート〜」

あ、まただ。
部活中、他はペアを組んでいるのに1人だけぽつりと立っている。
そう、この子が問題の新入部員。

彼女は今年入った1年生でまりあという。
とにかく可愛くて、1年の男子をあっという間に虜にしたとか…
上級生の間でもすでに有名。
おかげですっかり女子からハブられている。

なんであんな子がバスケ部に…
キャプテンの立場上
正直つらい

ー次の日

「なーお前新しいバッシュ買いたいとか言ってたけど、もう買った?」

廊下を歩いていた私に話しかける拓人。

「ううん、まだ」
「今日一緒に買いに行かね?」

え!?!?!?

「俺もそろそろスパイク買い代えたいし、2人なら安くしてもらえるかもじゃん」
「それが目的か」

無邪気に笑う拓人。
本当、人の気も知らないで…
ドキドキしてるのなんか、私だけなんだろうな。

「せんぱぁぁぁい!!愛美先輩!!」

甲高い声に振り向くとまりあちゃんの姿。

「あ、まりあちゃんだ」

え?
『まりあ』ちゃん?

拓人の言葉に反応する。

「わぁっ!こんな素敵な彼氏がいたんですねー」
「あ、それは…」
「俺、彼氏じゃないよー」
「……っ」

『彼氏じゃない』という言葉に傷ついてしまう自分がいる。
…本当のことなのに

「あ、そうなんですかー」
「うん」
「わっ手、大きいですね」
「そう?」

やめて…

楽しそうに話す2人の姿を見て心臓がドクドクと脈打つ。

私は…

「ほら、こんなに違いますよ」

手と手を重ね合わせる2人。

私は、触れることすらできないのに
この子は私の3年間を一瞬で飛び越えた…

「あ、じゃあ私はこれで」

そう言って私に手をふり、まりあちゃんはいなくなった。
残ったのは私と拓人

「あーなんかまりあちゃん、ハブられているんだって?」
「うん」

やめてよ

「お前になついてるみたいだし、色々助けてあげろよ」

まりあちゃんの話しないでよ
そんなこと言わないで、よ

「……気になるの?」
「ーーーーー…は?」

とまれない

「まりあちゃんのこと好きになっちゃったとか?」 
「…意味わかんねぇし、なんでそうなんだよ」

とめなきゃ…

「だってなんか気にしてるし、まりあちゃん可愛いからムリないけど」
「そんなんじゃねーよ」
「あやしーよー」

とめなきゃっ!!!

ーガンッー

近くの壁を殴る拓人。

「…やめろ…そういうのムカつく」
「ッッ!」

そのまま背中を向けて歩き出す。

私…何がしたいの
どこまでバカなのよ

もうやだ、こんな自分
いつまで待ってるつもりなの
まりあちゃんなんて関係ない
…チャンスはいくらでもあるのに、それをダメにしているのは全部自分じゃない

『自分から動かなきゃ何も変わらない』

「待って!拓人」 

グッと腕をつかむ。

「ごめん…」

ずっと振り向いてくれなかった拓人が私の顔を見る。

「私、きっと拓人が思ってるよりずるいし…性格も悪い。自分ができないのを人のせいにして、逃げて、拓人を怒らせちゃうし…」

だけど…

「本当はいつだって心の中で想ってること、言葉にしたいの」
「ーーーー…何?今言えばいいじゃん」

「好き、拓人が好き」

腕を引かれ、拓人の腕の中に埋もれる。

「誰だって汚いとこあるって、恋とかすると尚更じゃん…お前はいい子だよ。俺はいつも見てたもん」

ポンポンと頭を撫でられる。

「あ、あとさーお前、勘違いしてない?」
「え?」

「まりあちゃん、他校に彼氏いるから」
「…………………………………………………え」

本当に人騒がせだけど…
私が今こうしていられるのは
彼女のおかげ、だよね

*End*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー