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- Re: 恋芽生え、愛咲く〜喜恋・悲恋〜【短編集】*アンケート実施* ( No.98 )
- 日時: 2013/07/24 20:22
- 名前: 珠紀 (ID: 0JVwtz5e)
『ブラックガムは恋の味』【オリジナル】
宝美里 Misato Takara
藤沢颯 Hayate Hujisawa
藤沢龍 Ryuu Hujisawa
*Start*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
甘くて優しいミントガム
ニガくて大人なブラックガム
恋の味を教えてくれるのは、どっち…?
「う゛ぅ…」
高校に入ってはじめてのバス通学
酔っちゃう私には憂鬱な毎日。
こんな私を癒してくれるのはーーーー…
「ん、大丈夫?おはよ、美里」
後ろから『ミントガム』を差し出される。
「っ…颯くんっおはよ…!」
付き合い始めて1ヶ月のハツカレ、藤沢颯くん。
はじめて会ったのも、このバスの中
中学3年の高校入試の日
バス酔いしている私にガムをくれた人
…ヘンに緊張してガムの味も分かんなかった
ただ鼻先はツンッて痛くて
甘いミントの香りに胸まで苦しくなって…
初めて知ったの
こういう気持ちを
『恋』っていうんだって
春
同じ高校の制服を着たーーーー颯くんと
またバスで会い
人生初の告白はなんとOK
あぁ…本当に幸せ
こんな素敵な彼氏…
ードカッー
いきなり太ももに誰かの鞄が置かれる。
とぉぉぉぉぉぉぉぉ!?!?
「朝っぱらから見せつけてくれんなぁ」
「龍っ」
「おハヨ、カノジョさん」
で…出た!!
「ねーねー、颯って真面目すぎてつまんなくね?俺にすればいーのに」
そうだった、問題はこいつ…
颯くんの双子の弟、藤沢龍!!
「なぁ、お前ってガム好きなんだろ?ホラ、やるからさ」
「!」
口にほおりこまれるガム。
「かかか辛!!!」
「みっ美里!?こら龍ーっ」
何このガム、スーパーブラックっ!
チャラくてイジワルでジャマばっかりしてきて…
颯くんと同じ顔なのにまるで正反対!!
「ったく、ごめんな美里」
優しく頭を撫でてくれる颯くん。
ほんと…
兄弟なのにこうも違うものなんだなぁーー
2人はまるでガムのよう
爽やかで甘いミントガムみたいな颯くんと
イジワルでビリってニガいブラックガムみたいな龍
…ブラックガムなんて嫌いだよ。
…***…
「美里、今日なんか買うの?ってか男モン?」
「うんっ」
放課後、帰り道にある雑貨屋に入った私達。
「今日ね〜颯くん、塾なんだけど帰り迎えにきてくれるんだーなんかお礼したくて…こんなのどう?」
ウォレットチェーンを取り出す。
「全然ダメ」
こ…っ
この声…!!
「りっ龍…!!」
「どーも、カノジョさん」
龍だった。
後ろに友達らしき人が数人…
ほ、ほんとチャラそうーっ
「先に帰ってて、お前ら」
そう言うと、ぞろぞろといなくなる。
「ちょいついて来い、悪い今日こいつ借りるわ」
手を引かれる私。
「ちょっやだっ待って、放してよ龍!」
「ヤダ。」
どうしようーーー…っ
颯くんの見てないトコでこんな
男の子と2人きりで
いくらなんでも、彼氏の弟だからってこんなのダメじゃん…っ
なのに…
なんで私この人のこと無視できないのーーーー…?
ー数時間後
え、エンジョイしてしまった…
「……なぁ」
「…………」
「おいって、無視すんなよ」
バス停の椅子に離れて座る私達。
「もーすぐ、颯くん迎えに来てくれるんだから早く帰ってよっ」
「…」
沈黙が続く。
「…何で、何で颯?」
「…」
「これ聞いたら帰るから…」
「…ガム」
私はポツポツ話し出す。
「ガム…くれたの、中3の受験の日に…バス酔いしている私に。あの日からずっと好きなの…笑われるかもしれないけど…」
「ーーーーー…笑わねぇよ…」
なぜか、悲しそうな笑みを向ける龍。
「……龍ーー…?」
「美里」
「!あっ…」
颯くんがすぐそばに立っていた。
「…じゃーね」
手をヒラヒラ振って立ち去る龍。
…胸が苦しいのはなぜ?
ーー龍のブラックガムの香りが私をおかしくさせる…
「美里」
「え?」
私の手を握りしめ、俯く颯くん。
「中学受験の日のさ…ガムをあげた人、俺じゃないんだ」
え?
「あの日バスに乗ってたのは龍」
…う…そ…
うそ…じゃあ…
私があの日恋した人はーー…
「…………俺さ本当は気づいてたんだ、美里が龍と俺を間違えて告白してるなって………嬉しかったんだ、美里に告白されて、一目惚れだったんだーーーーー…」
龍ってこと……?
「…けど違うよな、美里がいつ本当の気持ちに気づくかビクビクしながらつきあうなんておかしいよな…」
「…っ颯くんーー…」
ぽんっと背中を押され前に出る。
「龍のこと、よろしくな」
颯くんーーっ
「…っ」
走り出す。
彼の元へ。
「龍…!!」
走って、走って
「龍っ」
「…え」
驚いたように後ろを振り向く彼。
「……っう……ちっ中3のあの日ガムくれたの龍だってなっなっ何で言ってくれないの〜わ、私ずっと間違えて颯くん傷つけて本当にバカーー…っ」
ボロボロと涙がこぼれる。
「ーー…っ俺だって…っ颯がお前にマジになってんの分かってて、カンタンに言えるかよ…!」
何の隙間もないくらいに身体を抱きしめられる。
「…けどもームリ、ガマン限界。誰にも渡したくねーー…」
ブラックガムの香りーー…
ほんとは甘くて優しくて
「だっだめだ…っ彼氏と別れたばっかりでこ、こんなことしてちゃ…っ」
「…悪いけど、俺は今めちゃくちゃうれしーー…」
そっとキスをされる。
恋の苦さも辛さも教えてくれる私の初恋の味
*End*ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー