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Re: 逆ギレマスカット【8話 更新】 ( No.102 )
日時: 2013/07/20 15:01
名前: 冬の雫 (ID: JxRurJ5z)

★☆★

「……はぁ…」

また逃げられた。
生徒会長だから、色々と罰(?)を与えなければいけないのに。

「……………」

授業に戻るのも面倒だから、久々に屋上に行こうかな…。

そんな軽い気持ちで、オレは屋上へ足を進めた。



階段を上って重い扉を開けると、一気に風が流れ込んできた。

「………っ、」

生徒会長なのにな。
なんでこんなことをやっているんだろう。

「……、…はは」

いつもの優等生はナシにしよう。

今だけ……───


「……しょ、う……?」


……え?

振り向くと、そこには目をウサギのように赤くした弥生がいた。

「───……弥生?なんでここに…」
「それはこっちのセリフよ。なんで生徒会長が授業サボってこんなとこにいんのよ」
「いや……」

何て言ったらいいのか分からなくて、とりあえず笑った。

弥生は一瞬顔を顰めて、「あんたさ」といつものようにツンと言う。

「…昔から、変わってないよね。困るとすぐ笑う」
「……そうか?先生の前だといつも笑っているような気がする」
「それは優等生の特権よね」

そう言って、弥生も、笑った。

強かった風も、なぜか柔らかい。

「弥生はなんでここに?」
「あたしは……、傷を癒やす為よ」
「傷?傷って」

“傷”という言葉に引っかかり、横にいる弥生を見た。

弥生は、「傷は傷よ」と鼻をすすりながら言う。

「泣いてたのか…?」
「別に。あんたには関係ない」
「目も赤い。何があったんだ?」
「……話聞いてる?」

そりゃ聞いてるさ。

弥生は昔から 少し強引にすればぽろっと出してしまうから、ちょっとだけ強引に言ってみただけ。

「彼氏にフられた、とか?」
「彼氏なんていないわよ」
「じゃあ…、失恋?」

冗談混じりにそう言うと、弥生はなぜか押し黙った。

一瞬思考回路が巡らなくて、え、と少し目を開く。

「……ホントに?」

そう言うと、弥生は沈黙の後にコクンと頷いた。

………ウソだろ。

「相手は?」
「だから、あんたには関係ない」
「関係ある」
「ないでしょ」

弥生はそう言うが、心には絶対何かを溜めてる筈だ。

弥生の心は まるでもう少しで破裂しそうな風船みたいに、ふわふわと漂っている。

それを破裂させてあげるのがオレの役目だと、小さい頃に既に学んだ。

「………弥生」
「…なに?」
「教えて」

目は合わせないものの、確実に弥生を狙うように見た。

弥生は驚いたようにオレを見て、そして口を開く。

「……誰にも言わない?」
「言っても何の意味もないと思うよ」
「……だね。……相手は、」

弥生が口を動かす。

オレはただ、青く澄み渡る空を見ていた。

「……鬼灯 舞透よ。あなたの天敵の」

………ぇ。

あの、鬼灯に…?

弥生が、フられた……?

「……笑えない冗談」
「冗談じゃないわよ。───あたし、舞透にフられちゃった」

弥生の掠れた声が聞こえると同時に、弥生の瞳にはじわりと涙が滲む。

……やめてくれ。

そんな辛い顔をしないでくれ……

「……弥生」

そう零すと同時に、体はもう動いていた。

───弥生の、強がっていてもか弱い体がオレの腕の中にすっぽりと収まってしまう。

まるで、すぐに壊れるワレモノのようだ。

「…、…翔……?」
「……弥生。…あんな不良みたいな奴じゃなくて、オレにしろよ」
「……え?」

まだ状況を掴めていない弥生が顔を上げる。
多分今のオレの顔は真っ赤だ。

弥生にそれを見られないように、きゅっと力を込めて強めに弥生を抱きしめた。


───ずっとずっと、好きだったんだ、弥生…っ…───