コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 逆ギレマスカット ( No.168 )
- 日時: 2013/08/08 18:00
- 名前: 冬の雫 (ID: 5VUvCs/q)
12 試合は実力と勇気と恋心【前半】
そして、時は過ぎ───ついに。
試合、当日。
「いいか、今日は全力を出すぞ!」
「「「おーーーーっ」」」
バスケ部員は円陣を組み、もちろん大地もその中に入っていた。
今思えば、試合なんていう騒々しいものは体育祭ぐらいでしか経験したことがない。
ましてや、今日は花も自分を観にやってくる……。
「……あーっダメだ緊張してきた!」
大地はむしゃくしゃして、部員が水分補給をしている横で髪を掻き乱した。
「おい宮本ー、リラックスリラックス」
高良はヘラヘラと笑って、ペットボトルを渡す。
大地はそんな高良に感動して、「ありがとう」とペットボトルを受け取った。
「…あれ?なんか妙に軽……」
「だってカラだもん」
「ぅおい!!」
そんなこんなで、大地の緊張は少しほぐれたようだった。
★☆★
『セット開始ーーっ』
熱の篭った声がマイクから貫き、次には、ダン、というバスケットボールの弾む音が大きく響いた。
それが引き金になるように、観客からの歓声が一気にとどろく。
「……うわ、大地発見」
観客席では───姫島 花が、オレンジジュースを両手にそう呟いた。
「へぇ、ちゃんとやってんじゃん」
横にいる舞透はそう言いながら、選手たちの動く姿をぼーっと見つめていた。
「優勝してほしい?」
「姫島は大地に優勝してほしくないだろ」
「…よくわかってんじゃん」
だってキスしたくないもん、と花が頬を膨らます。
舞透は「言い出したのは自分じゃん」と相変わらずぼーっとしながら言った。
「それはそれ、これはこれ!」
「はいはい」
無責任にそう言い流す舞透。
花はもう一度頬を膨らませて、言葉を発そうとした。
───すると。
「おにーいちゃーーーん!!!!」
そんな元気な声が聞こえて、二人は「「はっ?」」とほぼ同時に声のする方を振り向いた。
そこには───「お兄ちゃん」と大声で連呼しながら手を振る、大地の妹、宮本 文月がいた。(>>98参照)
「…あ、大地の妹」
「!! えっ、大地に妹とかいたの!?」
「うん」
驚く花を横目に、舞透は「文月、久しぶり」と声を発する。
「…あっ、不良の人!」
「なんだその認識…」
「今日はお兄ちゃんを応援しに来てくれたの?
…あれ?そっちのかわいい人はどなた?」
「……エ、わたし?」
文月に指を差されて、花は一瞬戸惑う。
だが横で舞透が、「初対面だろ?自己紹介でもしとけば」と無責任に小さく言った。
「…わたしは姫島 花よ。大地のお友達」
「姫と花が名前についてるの?いいなぁ〜!」
「ちっともよくないわよ」
花はふてくされたように言って、「ていうか、大地にこんな妹がいるなんて信じられない」とプレイをしている選手たちを見下ろしながら言った。
「なんで?」
「だって一人っ子っぽくない?大地」
「ああまぁ……」
誰でも納得する言い分だ。
文月は「よろしくね、花ちゃん」と花に笑った。
そうこうしているうちに───前半終了の笛の音が、響いた。