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Re: 逆ギレマスカット【大地のイラスト描いてみました(*≧艸≦)】 ( No.181 )
日時: 2013/08/10 22:16
名前: 冬の雫 (ID: vKymDq2V)

14 金髪王子の運命


試合が終わったあと、俺は一休みをするために、建造物の裏の方へ来ていた。

そこは昼間の太陽に照らされて明るく、しかもあまりひと気がないため休むには最適な場所。

姫ちゃんへの告白は、ここでちょっと休んでからしようと思っていた。

「……あ〜…疲れた…」

他の誰かが、最後の点を入れてくれるのかと思っていた。
誰かに頼った自分がいた。

……今思うと、俺はチームというものを分かっていなかったような気がする。

誰かに頼ろうとした罰があたって、俺が最後の試合の命運を握るハメになった。

……ま、最終的に勝ったんだからいいけどね。


…ていうかお腹すいた……。


「……あ、そういえば」

ポン、と頭に浮かんで、持っていた小さなお弁当を取り出す。

───これは、試合が終わったついさっき、文月がくれたお弁当だ。

俺のために、朝早くから準備してくれていたらしい。

さすが我が妹……。

多分中には、タコさんウインナーやら卵焼きやらが入ってるんだろうな。
文月が一生懸命作ってくれた、大事なお弁当。

…味はわからないけど。

恐る恐るお弁当のふたを開けてみると。


───そこには、ぎゅうぎゅうにされたとてつもなく大きいおにぎりが入っていた。


「はぁっ!?」

おにぎりだけ。
そう、お弁当の中に入っていたのはタコさんウインナーなんていうジャンクなものはなく、ただのでかいだけのおにぎりだけだった。

「で…でけぇ……」

しかも嫌いなモノばっかだし。

文月…お前実の兄になんてセコい嫌がらせを…。


仕方なく手に持って、内心うんざりしながらおにぎりを一口含んでみた。

ちょっとはおいしいかなー、なんて。

「……ぅ…、」

───でも、やっぱり嫌いなモノが入っているおにぎりは嫌いなわけで。

そのまま、口を抑えて硬直していた。

───すると。


「わっ、ナニそのおにぎり!でかっ」

「うぉおっ!?」


斜め上からそんな声が聞こえて、俺は持っていたおにぎりを危うく落としそうになった。

……あぶねぇ…!


「……ひ、姫ちゃん!?」
「あんた一人でお弁当とか悲しいわねー」

───そう。

姫ちゃんだった。

「…な、なんでココに…!」

俺は姫ちゃんに告白するためにここで心の準備をしようと思っていたのに。

「マスカットが『大地探して祝ってやれよ』とか言ってきたのよ。…てか、なんで一人?高良は?」
「いやそれは……、」

姫ちゃんに告白する準備してた、なんて言えない。
俺はホント臆病なんだな。

「……ったく、バカねー、あんたは」

姫ちゃんは息をついて、自然に俺の隣に座った。

それにびっくりして、またおにぎりを落としそうになる。


「…まぁいいわ。


───おめでとう、大地」


姫ちゃんは笑った。

俺に向けて───とても温かい、笑顔を。


俺はさっき遠くから見た時とは違う、間近で見た笑顔に、胸が締め付けられた。

───……言わなきゃ。


俺は、姫ちゃんが好きだってこと。
姫ちゃんは強がってはいるけど、ホントはとても優しいってこと。


「……っあの、さ…、」
「ん?」


つい言葉が出てしまったのはいいけど、この先を考えていなかった。
なんて言ったらいいのかわからない。

「……俺、さ…、えと…、」

あーダメだ俺のいくじなし!
まるで乙女じゃん!俺!

俺はそう自分を一喝して、今度こそ「好き」を伝えようと、姫ちゃんと向き合った。


どく、と心臓が波打つのがわかる。


俺は、口を開いた。


「俺、じつは…っ…、……」

「……ホント、あんたってバカよね」

「…………はっ?」


………ん?
今なんと?


「…ば、バカ?」
「そう、バカ。」
「……え、ちょ、なんでこのタイミング!?いやバカなのは知ってたけどさ!」
「はは」

姫ちゃんが笑う。
まぁその笑いはさっきの温かい笑いとは違うのだけれど。

「…ホントバカよ。わたしは、言いたいことをなかなか言えないヒトは嫌いよ」

………え?

驚く俺に、今度は姫ちゃんが向き合った。



「───わたしのこと、好きなら好きってちゃんと言いなさいよ」



神様。

まさか姫ちゃんは…人の心を見透かす超能力者ですか?