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- Re: 逆ギレマスカット【大地のイラスト描いてみました(*≧艸≦)】 ( No.234 )
- 日時: 2013/08/22 20:41
- 名前: 冬の雫 (ID: kgjUD18D)
17 変わらずに、変わっていく ※長め
いつか、彼女のことを思い出す。
優しく笑った、彼女のことを。
でもそのイツカは、消えてしまった。
この世界から失くなった。
でも…その悲しみを紛らわせてくれるのは、とても、とても愛しい人と出逢うことだった。
その愛しい人に出逢うために、多分生きてきた。
いや、そうであってほしい。
───そして、オレ、鬼灯 舞透は、愛しい人と出逢うことが出来た。
存在意義を勝ち取ったも同然だ。
───オレは、やっぱり姫島が好きなんだ。
★☆★
大「おっはー」
花「おはよ」
舞「おはよう」
いつも通り、眠そうに。
朝、三人は何事も無かった様にアクビをした。
いつもと少し違うのは───遅刻魔の舞透が、今日は珍しく二人と同じ時間に着いたということ。
「…あっ、わたし紗江ちゃんに教科書借りっ放しだった!」
突然、花が思い出したようにそう言った。
舞透と大地は「「は?」」と同時に言葉を零す。
「お前に友達なんか居たのかよ」
「失礼ねマスカット!いるわよそのくらい」
「ウソつかなくていいって姫ちゃん」
「黙ろうか、あだ名なし男」
花は悪どい笑みでにっこりと笑った。
途端に大地は「は、はい…」と縮こまる。
「じゃあ行ってくるから」
「「遅れんなよ〜」」
「黙れ!」
花は最後に言葉を零して、教室を出て行った。
そのときの花が少し嬉しそうに見えたのは───多分、気のせいではない。
「……なぁ、」
花が教室を出て行くと、それを見計らったように舞透が少し低く大地にそう言った。
大地はワンテンポ反応が遅れて、「…うん?」と舞透を見る。
「…あのさ、オレ…大地に話したいことがあるんだ」
「………えっ」
「HR始まるまでには終わらせるから」
「え、ちょっと急にナニ……、」
大地が言い終わる前に───舞透は、「行くぞ」と大地を教室の外へと促したのだった。
★☆★
二人が屋上に着くと、いつもよりはあまり風が出ていなかった。
いつものように、舞透と大地はフェンスによりかかる。
ひとつ息を吐いて、舞透は顔を上げた。
「…なんか懐かしいね、こういうの」
「………そうだな」
静かに言葉を発する。
大地は少し笑って、「用ってなに?」と舞透を見ずに言った。
「あー……ナイ。」
「えっ?」
「用なんてねぇよ。ただ来てみたかっただけ」
「えーなにソレ…」
思いがけなかった舞透の言葉に、大地は苦笑いをした。
舞透は目を細めて、どこまでも蒼い空を見上げる。
「…最初にさ、姫島が転入してきたとき」
「………」
「オレ、一番最初にマスカットってあだ名言われたのが、ココだったな」
「…うん」
今ならわかる。
あの時、花が舞透に何を伝えたかったか。
「………ねぇマスちゃん」
「うん?」
「俺の話…聞いてくれる?」
「……ああ」
大地が顔を伏せる。
舞透はそんな大地を横目で見て、空を見上げた。
もう空を見ても結衣は思い出さない。
絶対に。
「俺さ…花ちゃんに告白したんだ」
「えっ、…いつ?」
「試合の後」
舞透は驚いて、大地を見た。
大地は苦そうに笑う。
「見事にフられたよ。花ちゃんは……本当に恋してる目をしてた」
「…………」
「…で、俺決めたんだ。もう引きずらないって」
…大地のその言葉に、舞透は「同じだ」と思った。
もう決めた。
結衣を、引きずらないと。
大地は笑って、「マスちゃん、姫ちゃんを幸せにしてあげてね」と舞透を見た。
舞透は「……え?ああ、うん」とあまりよく考えずにそっけなく答える。
いつもと変わらない舞透に安心しながら、大地は続けた。
「余談だけどさ…俺の昔の彼女……死んじゃったんだよ」
「そうなのか…。
…実は、オレの彼女も死んだんだ」
「えっ」
「えっ」
───……終始、沈黙。
しばらくして重苦しい沈黙を破ったのは…舞透だった。
「…彼女の名前、同時に言ってみる?」
気まずそうに舞透がそう言うと、大地は「う…うん」と恐る恐る頷いた。
「じゃ、いくよ」
「せーの」
「「沖宮 結衣」」
……どうやら、そうらしい。
★☆★
───その後、放課後。
人はまばらになり、大地はバスケ部に顔を出さないといけないため、教室には舞透と花だけになっていた。
舞透の後ろに花が居て、二人の視線が交わることはない。
「…マスカットってさ、死んじゃった彼女いたんでしょ。」
───唐突に、花がそう言った。
舞透は突然のことに驚いて、慌てて「はっ?」と後ろを振り向く。
「…お前…っそれどこで…!?」
「それは内緒。ふふ」
「…………」
絶対大地だ。
舞透はそう直感した。
今は花が好きなのに、以前の亡き彼女を知られてしまった。
ましてや、自分がそれを引きずっていたことも……───
「……なぁ、姫島」
「うん?」
「オレのこと、変な奴だと思ったろ」
「………ううん」
花は首を振って、舞透の首に腕を回して抱きついた。
舞透は一瞬反応が遅れて、「姫島…?」と振り向かずに零す。
「……マスカットはさ。その子のことがそれだけ大切だったんでしょ。別におかしいことじゃないわよ」
花は舞透の首に自分の顔をうずめる。
舞透は目を細めて、下に視線を落とした。
「どれだけマスカットがその子を引きずっても。
───わたしは、倍以上にマスカットを愛せる自信あるから」
花は舞透の耳元で笑う。
舞透は、愛しい人の声を聴きながら目を閉じた。
「……それはオレのセリフだよ…」
オレは昔から、自分の名前が嫌いだった。
自分の名前を掠れた声で呼びながら亡くなったアノヒトを思い出すのが、怖くて、怖くて。
───でも。
そんなものは嘘だというように、ある小生意気な女に出逢った。
「大好きよ、マスカット」
愛しい人の声が聴こえる。
オレは……───
「オレも大好き」
今日からは、マスカットでもいいよ。
舞透は首もとにある花の手に触れて、愛しく笑った……───
*・゜゜・*:.。..。.:*・'・*:.。. .。.:*・゜゜・*END
◆あとがき◆
ここまで読んでくださったみなさん、本当に、本当にありがとうございました。
完結するのは初めてなので、多分これからは完結祝いが大げさになると思います。(笑
───ありがとうございました!
あ、コメント大歓迎です( ´ ▽ ` )ノ笑
p.s.冬の雫