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Re: 逆ギレマスカット【コメ下さい!】 ( No.41 )
日時: 2013/06/29 19:10
名前: 冬の雫 (ID: JxRurJ5z)

4 ライバルとマスカット

「マスちゃ〜ん俺寂しかったよ〜〜」
「よしよし」
「姫ちゃんもヒドイよね、俺をあんな扱いだよ」
「よしよし」
「マスちゃんは『よしよし』しか言わないの!?」
「あ、うん」
「…、…えー……」

子供のような大地をなだめる舞透は、ひとつ息をつく。

───横から、ウザいほどの視線が舞透と大地を邪魔してくるのだ。

「さっきから何見てんだよ、姫島」
「いや別にぃ?男二人でイチャイチャしてるのに笑いを堪えてなんかいませんけど?……ぷっ」
「(…イラッ)おもっきし笑ってんじゃねーか」

三人連なっている席で、大地が舞透の席に来ているため真横に花が居る。
花は机に頬杖を付いて、哀れみの目で見るように二人を見ていた。

「あぁ?やんのかコラ」
「えー女子に対してそれはないと思いますー」
「お前女子かよ」
「アレ?わたしにあんなことして『こんなんで驚くくらい女じゃねえか』って言ったの誰だっけ??」
「えっ、マスちゃん何したの!?まさか何か変なコト……、俺の姫ちゃんに!」
「カッチーン、誰が俺の姫ちゃんだ」

げし、と花が大地に蹴りを入れると、大地はオーバーリアクションをして舞透の机の上に倒れた。

「ねぇねぇそこの鬼灯さん」

三人(正確には花と舞透)がギャーギャー騒いでいると───そんな声が聞こえて、三人は同時に振り向いた。

───そこにいるのは、天道 高良(テンドウ タカラ)。

花は転校してきたばかりの為 見知らぬ高良をただ見つめ、舞透と大地は「ああ、天道か」と少し安心したように息をついた。

「今オレのこと呼んだか」
「鬼灯。ゴメンな、三人で仲良くしてるトコ邪魔して」
「いやいや、どう見ても仲良くしてねぇから」

舞透がありえないようにそう言うと、大地と花も同意するようにウンウンと頷く。
高良は笑って、「鬼灯に頼みがあるんだけど」と少し真剣な顔をして言った。

「なに?」
「俺、バスケ部の副部長やってんだけどさ。…今度の試合、人が足りないみたいなんだ。だから、助っ人として出てくれないか?頼む!幼なじみに免じてさ!」
「……はぁ?」

なんでオレが、と明らかに面倒くさそうに舞透は声を漏らす。
一方の花は、「アレって鬼灯の幼なじみなの」と高良の言うバスケット部の内容には興味を示さずに言った。

「ああ。小学も中学も一緒。…っていっても、田舎だからこのケースは結構多いんだけどな」
「へぇ。…というか、バスケ部ってどこと試合すんの?」
「音高」
「うわ」

花は「音高って相当強いんでしょ?」と半ば同情するように、舞透と話す高良を見た。

───音高とは、音奔オトハシ高校のこと。

音高はこの田舎の中ではトップらしく、花が校長先生から聞いた話では、田舎を出て都市にまでバスケットの試合の出場権を手にしたらしい。

───まぁ結果は、僅差で負けたそうだが。

「…とにかく、オレはやらねぇ。そこら辺の男子にでも頼んでみればいいじゃねぇか」
「それじゃダメなんだよ」
「なんで」
「…みんな、相手が音高だからって怖がってやがる。唯一怖いもの無しは、鬼灯、お前しかいないんだよ」

高良の目は本気だった。
舞透は少し驚くように高良を見るが───すぐに、言葉を発した。

「ムリ。」
「…え、なんでだよっ!?」
「だって、オレバスケとか得意じゃねぇもん」
「そんなこと言わずにさ〜…、俺の部長の座がかかってんだよ」
「ムリだよ、他に頼め」

舞透はなぜか高良の頼みを受け入れない。
高良は「そこをどうにか!」と顔の前で手を叩いてとことん舞透に頼み込んだ。

───だが、やはり舞透は「NO」と言うだけで受け入れてくれないらしい。

挫折したように教室から出て行く高良を見て───花は、「うわ、カワイソー」と高良を同情の目で見た。

「お前にはカンケーねぇだろ」
「だからって、あそこまで言う必要ないじゃない。何か恨みでもあんの?」
「あのなぁ」

文句を言うように舞透が口を開く。
花は聞く体勢に入ったが───舞透は、口を閉じてしまった。

「ナニよ、言いなさいよ」
「…いや、やっぱヤメた。お前と話してるとキリがない」
「余計気になるじゃない!」
「気にすんな。───あ、そういえばオレ用事あるんだった」

唐突に、舞透が立ち上がる。
花は 逃げられた気がして、「どこ行くの」と少しだけ睨んだ。

「呼び出しくらってた」
「はァ?誰から」
「先輩だよ、知り合いの」

面倒くさそうに舞透がひとつ息をつく。
花は少しふてくされたように頬を膨らめ、「……行かないでよ」と強がって言った。

「なに?」
「……行くな、って言ってんの。どうせ女でしょ、その先輩とやらは」
「お、当たり。なんで分かるんだ」
「女の勘よ」

花が少し冗談めかしてそう言うと、舞透は「こえー…」と半ば本気にしながら言葉をつぶやいた。

「───分かったよ、じゃあ行かない」
「ありがとうマスカット」
「………やっぱ行こうかな」
「あ、ウソウソ!ごめんって」

花は慌てながら謝る。
舞透は なぜ行かせないのか、と首を傾げながら、頭の隅では「先輩ごめんなさい」と申し訳ない気持ちでいっぱいだった。


───その頃、音楽室前では。

いつまで待っても来ない舞透にしびれを切らした加藤 弥生(カトウ ヤヨイ)が、舞透たちのクラスに向かっているところだった…───