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Re: 逆ギレマスカット【4話完結 】 ( No.50 )
日時: 2013/06/29 22:48
名前: 冬の雫 (ID: MSa8mdRp)

5 マスカットは何色?

「疲れた〜…。マスちゃん大丈夫?」
「なめんなよ、オレは運動神経バツグンだ」
「天道と話してた時はバスケ無理って言ってたのにな」
「それはそれ、これはこれ」

他に誰もいない屋上で、オレと大地は並んで息をついた。

優しい風に髪をなびかせながら、「ねぇ」と大地が言葉を零す。

「何?」
「あの先輩さ、弥生っていうんだよな」
「うん。加藤 弥生」
「……だよなぁ〜〜…」

掠れた声で疲れたように大地が声を発する。
オレは、「どうした?」と大地に視線を向けずに空を見たまま言った。

「いやさぁ、あの人、どっかで見たことあるんだよね」
「同じ学校だからじゃねぇの」
「違うんだよ。なんかもっとこう…」

大地がそう説明しようとするが、言葉の先が出てこない。
ぐっと口を閉じると、「はぁ〜〜〜っ」ともう一度今度は深く息をついた。

「あーもう、やめろよソレ。厄が移るだろうが」
「厄なんて出てないし。オレは真っ二つに切れば幸福しか出てこないし」
「じゃあ今すぐ切ってやろうか?そしてオレに幸福とやらを分けろ」
「…ごめんなさい」

オレと大地は十分に笑える会話をしている筈なのだが…なぜか、笑みが零れてこない。

───しばらく、沈黙が続いた。

オレはずっと、空を眺める。
だがその視界に映っているのは空ではない。

結衣だ。

自分でも、だらだら引きずりすぎだと思う。

いくら結衣が自分の名前を最後に残して死んだからって
いくら自分が結衣のこと好きだったからって

───ここまで、結衣を愛していたとは。

「……バカみてぇだよなー…」

ついそんな言葉が零れて、オレは大地を見た。
大地も同じく、オレを見ている。

「は?何が?」
「いや、別に」
「何かあったのかよ」

大地が少しだけ心配そうにきくが、オレは「いや…」としか答えなかった。

それもそのはず。

大地は結衣のことは知らない。

「……なぁ、舞透」
「なんだよ」

大地が息を吸う。
空はまた、オレを置いて輝いている。


「……俺、姫ちゃんのこと好きになっちゃったかも」


ほら、空はオレを置いて綺麗だ。
そうだろう? 姫島。