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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 逆ギレマスカット【5話更新 】 ( No.53 )
- 日時: 2013/06/30 17:49
- 名前: 冬の雫 (ID: JxRurJ5z)
【secret track -ヤヨイ-】
───桜は、春の中では一番綺麗。
散っても散っても 美しさは耐えず、足元で輝いている。
一生懸命生命を尽くす、桜が好き。
「とうとうあたしは先輩か……」
自分が先輩になったということは、あまり自覚がない。
いや、今日はまだ新一年の入学式の日なのだから、自覚出来るはずがないのだけれど。
足元に落ちる桜を見て、頭上に咲き誇る桜に視線を移した。
───やっぱり、綺麗。
そうやってぼんやりと桜を見ていると、ふとした瞬間に、誰かの声がした。
あたしはゆっくり、声のした方角へ顔を向ける。
───そこには、ネクタイの色からして新一年の男子生徒が居た。
「───…、……」
言葉を発しているのだが、うまく聞こえない。
まぁあたしに言っている訳ではないのだが───なんだか、気になった。
近付くと怪しまれそうなので、その場で耳をすませる。
すると、少しだけ言葉のかけらが聞こえた。
「───……、…───…綺麗だな」
その言葉が聞こえた瞬間、あたしの心臓はどくりと波打った。
何の変哲もないその言葉が、あたしには何か別のものに聞こえた。
その男子生徒は、友達と話しているらしい。
「綺麗だな」そう言って、目を細めた。
その瞳に映っているのは、多分、桜ではない。
何が映っているのか分からない。
だから、映して欲しいと思った。
あたしを、その瞳に映して欲しいと思った。
───映して。
この感情が何なのかは分からない。
ただ、わがままな自分がどこかにいて。
後から知ったことだが、この男子生徒の名前は、鬼灯 舞透らしい。
じゃあ。
どうすればいいのか。
答えはひとつ。
───好きだと、伝えたい。
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