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Re: 逆ギレマスカット【secret track -ヤヨイ-】 ( No.57 )
日時: 2013/07/01 20:40
名前: 冬の雫 (ID: sjVsaouH)

★☆★

「…全く、あいつら逃げたわね」

残された弥生という先輩らしき人は、疲れたように息をついた。
前髪を掻き上げ、「ねぇあんた」と席に座ったままのわたしを見る。

「え、わたし?」
「そうよ。あんた以外誰がいんの」
「(…イラッッ)……なんでしょうか」

さすがのわたしも今のにはキレるわ。
…いや、いつもキレてるんだけどね。

「…あんた、舞透の何なの」

突然そんなことを言うので、わたしは少し驚いて生意気先輩(よし、これでいこう)を見た。

生意気先輩は、「いや、答えなくてもいいんだけど」と少しツンとして目を逸らしながら言う。

「…はは〜ん」
「………ナニよ」
「いや〜、なんでもないですぅ」

わざとらしく口笛を吹いてみせる。

…さては生意気先輩、舞透のこと好きだな…!?

最初に舞透が「先輩に会いに行く」って言ってたときから怪しいとは思ってたんだけどさ。

…ふふん、この勝負(?)わたしの勝ちかもね。

「…マスカッ…、コホン。
…舞透は、わたしのカ レ シ」
「……!!なっ…!」

そう言うと、生意気先輩の顔が何らかの感情でみるみる上気していくのがわかった。

やっぱわたし、Sだね。

「…なっ…、あんたが!?あたしに全て負けているあんたが!??」
「…………。」

…ぁ、やばい。
ムカつきすぎて何も言えない。

「…っありえない。まだあんた転入してきたばっかでしょ?
じゃあ」

生意気先輩が頭を抱えながら言う。
わたしは黒い笑みを浮かべながら、でもまだ無言だった。

「…まだ、奪えるわよね」

カッチーン。

わたしの頭は、まさに言葉通りそうなった。

……もう、何なのこの人。
イラつくったらないわ。

…というか。

あの二人、どこ行ったんだろう…?

★☆★

「…え?姫島のこと好きって…」
「……うん…」

驚くマスちゃんに、俺は少し照れて頷く。
少し、といっても、顔は真っ赤なのだろうけれど。

「……そうか。良かったじゃん」

マスちゃんは、そんな俺に優しく声をかけてくれた。
やっぱり、マスちゃんの友達で良かったとつくづく思わされる今日この頃。

───俺は昔から、それなりに恋愛はしてきたつもりだった。

いつも向こうから告られてきて始まるんだけど、成り行きで付き合ってみると俺も楽しいと思えるようになってきて。

それが別に嫌ではなかったし、むしろ嬉しかった。

だって、ロミオとジュリエットみたいに、恋って素敵なもんなんだ。

男の俺が言うのもなんだろうが、大体がそういうものだろう?

「でさ。姫ちゃんには、あんまり告白なんてしたくねぇんだ」
「…はぁ?なんで」
「だってさ…」

姫ちゃんは、強がってながらもいつもマスちゃんのこと見てる。

本人は気付いてるのか知らないけど、第三者から見れば、姫ちゃんがマスちゃんに興味を持ち始めてるのは確かだ。

───そんな中、告白なんてしたら、混乱するのは当たり前だろう。

「……まぁいいや」

なんだか考えるのが面倒くさくなって、俺は息をついた。
マスちゃんは困ったように俺を見るが、すぐに「無理しいて言わなくてもいいんだけどさ」と芽を細めて屋上から下の景色を眺める。

「とりあえず、元気出せよ」
「…ってぇっ!」

バン、と背中を思いっきり叩かれ、俺は背中からくる痛さに悶えた。

そんな俺を見て、マスちゃんは「はっ、ざまーみろ」と舌を出す。

……こいつ、人をバカにしやがって…っ

「このやろっ」
「…っあぶね!ナニすんだよっ」
「ははっ、仕返しー」

マスちゃんの顔めがけてパンチを組む。

まぁケンカ上等な感じのマスちゃんはもちろんそんなパンチは避けるのだが、俺のことを思ってかオーバーに反応してくれた。

「バーカバーカ」
「子供かてめぇは」

あっかんべーをすると、マスちゃんが冷たく吐き捨てる。

「そっちもしてたじゃんか」
「オレのはもうちょっと大人のヤツなんだよ」
「さほど変わりないけど!?」

そう言いながら、二人でふざけ合う。
さすがバカな男子高校生といったところか、それだけでも俺は十分に楽しかった。

……ああ、姫ちゃんのことどうすっかな……。

そうぼんやり考えていると。

屋上の扉が突然開いて、俺とマスちゃんはそちらに視線を向けた。


「あ。マスカットと大地みーっけ」


これは哀れな俺の幻想か?