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コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 逆ギレマスカット【6話更新】コメ50!Thank you★ ( No.73 )
- 日時: 2013/07/07 12:06
- 名前: 冬の雫 (ID: JxRurJ5z)
【secret track -マスカ-】
「…結衣、結衣…っ…───」
視界がぼやける。
声も掠れる。
涙なんかもうすでに枯れてしまって、どうしたらいいのか自分でもよく分からなかった。
「…鬼灯くん、ありがとう、結衣のためにここまでしてくれて」
横で、結衣の母親が涙を抑えながら同じく掠れた声で言った。
オレは、「……っはい…、」と声にならないくらいの言葉を息と共に吐き出す。
「……よかったら、結衣の話を聞かせてくれない?あの子、あなたにしか心を開かなかったから」
ここは結衣の葬儀場。
視界に見える物は全て真っ黒。
結衣の母親も、知り合いも…オレも。
…唯一明るい色と言えば……、結衣の、まだ生きている頃の写真だけだろうか。
「……はい…」
オレはそれしか言えなくて、乾いた笑顔で笑った。
───そうするしか、なかったんだ。
初めて会った頃の結衣には、オレはそんなに興味を示さなかった。
普通に学校に行って、普通に過ごして。
それだけかと思っていた。
だけど、それが必然的ではないというかのように。
それは、当たり前ではないかというかのように。
結衣に出会ってから、オレの中の“何か”が変わった気がした。
この気持ちは、なんだろう。
オレにはそんなこと分からなくて、典型的なカタチで、相当迷路をさまよった。
そして、いつの間にかオレと結衣は一緒にいるようになっていて。
でも結衣が居なくなった今では、オレは別の感情を抱いていた。
後悔というよりも、それは願望というような感情だろうか。
───好きだと、伝えたかったな。
今のこの気持ちは、オレがこれより先に進むのを止めるような存在でもあった。
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