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- Re: 逆ギレマスカット【secret track -マスカ-更新】 ( No.79 )
- 日時: 2013/07/09 20:57
- 名前: 冬の雫 (ID: Btri0/Fl)
★☆★
お世辞にも広いとは言えない、ここの体育館。
俺たちバスケ部にとってはもっと広い所が欲しかったんだけど、やはり田舎では無理らしかった。
校長は、「部活で名を広めるより勤勉で名を広めてくれ」と俺たちバスケ部にそう言った。
「ダメだよ、ああいう人間は。俺たちのことなんにも分かっちゃいない」
俺はそう言いながら、バスケットボールをバウンドさせた。
弾んだ音が、狭い体育館には大きく聞こえる。
「そうだよなー…ああもう、おれ早くこの田舎から抜け出してぇよ。……あ、そこパスっつってんだろバカ坊主!」
横いる雛野が、田舎に対する不満を口にしながらも 試合中の一年に鋭い指摘をした。
バカ坊主、と呼ばれる一年の丸山は、「はっ、はい!」と慌ててパスをする。
「はは、お前っていい先輩だ」
「副部長はお前だろうが」
「ただの偶然だけどな」
俺は冗談めかしてそう言い、一年に視線を戻した。
───確かに、人が少なすぎる。
このままじゃ試合なんて夢のまた夢だし、何より戦力不足という重い課題ものしかかっていた。
「よーおやってるかぁ?」
俺が一年たちを見てどうしようか考えていると、そんなのんびりした声が響き渡り、俺たちは一斉に振り向いた。
───部長だ。
「部長!どこ行ってたんですか」
「はは、ちょっとな」
部長の空島 俊は笑いながら、「人、集まってないんだってな」と俺に低い声で言う。
図星を突かれ、ビクッと体が恐怖を覚えるように反応した。
「いえ…頼んでみたんですが…」
「その口ぶりじゃダメだったんだな」
「はぁ……」
部長のいうことがもっともで、反論が出来ない。
部長は急に柔らかく笑って、「ま、どうにかなるだろ」と無責任な言葉を放った。
「そうでしょうか」
「ああ、大丈夫だ。部長のオレを信じろ」
「普段の部長は信じれませんが」
「言ってくれるじゃねぇか」
部長が、俺の頭を乱暴に撫でる。
子供扱いされた気分になって、頬を膨らませた。
───と、視界に金髪がちらりと入った。
俺はハッとして、体育館の外を見る。
───そこには、舞透といつも一緒にいる宮本という男がいた。
「あ、どこ行くんだよ天道」
急に目の色を変えた俺を心配してか、体育館から出る俺を部長が呼び止めた。
「部長!助っ人、見つけたかもしれません」
そうだ。この考えがあったじゃないか。
───宮本を、助っ人として試合に参加させてみよう。
ポカンとする部長を後に、俺は宮本の元へと駆け寄った。