コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 逆ギレマスカット【6話完結!】 ( No.83 )
- 日時: 2013/07/13 16:07
- 名前: 冬の雫 (ID: JxRurJ5z)
7 マスカットとバスケット
大地がなぜかダッシュでわたしの元から逃げて行った…。
いじめか?
怖いのか?
それとも…、何かあったのか?
「……マスカット」
「…あ?」
「あいつ、どうしたの」
「………さぁ」
友達だというのに、鬼灯はそっけなく答える。
普通は、大地の身を心配してやるんじゃないの?
「あんたそれでも友達?」
「…あいつの悩みのタネは、もう聞いた。オレにどうこう出来る問題じゃねぇ」
「……ふーん…」
大地の悩みのタネは、わたしには分からない。
なにがあったかも、知らない。
そりゃあまだココに来たばっかりでまだ友達って感じはしなくても…、悩みくらいは、聞いてあげられるのにな。
………というか。
「なぜわたしの顔を見て逃げるの!」
わたしにとっては、それが最重要項目だ。
「お前の顔が怖かったんじゃねぇ?」
「うっさい!わたしそんな怖いカオしてないわよ!」
「そうか?」
「意外と…、…」と鬼灯から顔を近付けられる。
───鬼灯に頭を撫でられた(?)あの時を思い出して、わたしは「うっ……」と身を引く。
多分、わたしの今の顔は真っ赤だ。
「? なんだよ」
「…あんた、自覚ないの?バカなの?」
「お前に言われたくねぇし」
「いやいや、あんたバカでしょ」
うん絶対そうだ、と嫌味のごとく繰り返す。
鬼灯は「やめろよ」とまるで自分でそれを認めるように、目を逸らした。
……いじけてんのかな?
「あはは、かわいーヤツ」
「からかってんのかよ」
「いや別にィ?」
それでも、笑ってみせる。
鬼灯の新しい一面が見えたようで───少し、嬉しかった。
……あ、大地のこと忘れてた。どうしよう。
★☆★
「みーやーもーと〜〜っ!!」
「!! …な…、うおわっ」
高良が大地の名前を叫びながら大地に突進すると、大地は派手に押し倒された。
砂ぼこりが舞い、煙たさに大地は顔を顰める。
「いって……、何してんだお前………」
「はっはー……ごめん★」
ごめんじゃねぇよ、と自分の胸元にいる高良の頭をどつく。
高良はごめんごめんと言いながらも、あまり悪気はないように見えた。
二人は倒れたままの状態で体育館の裏にいる。
…はたから見れば…、いや、はたから見ても、なにをしているのか分からない。
「…なぁ!頼みがあるんだけどさ!」
唐突に、高良がガバッと顔を上げる。
大地は驚いて反応が遅れるが、「頼みィ?」と高良を見た。
「そう、頼み!」
「なんかロクでもねぇこと考えてねぇよな」
「違う違う」
そう高良は言うが、大地は信じきれなかった。
……ムリもない。
高良の手が、逃がさせまいと大地の制服を掴んで離さないのだから。
「は…頼みって……?」
若干引き気味に真上にいる高良に言う。
高良は「実はな」といつも通りニコニコしながら言った。
「宮本に、バスケの試合の代理をやって欲しいんだ」
「代理?…って……、はァ!?」
ガバッ、と大地が起き上がった。
その拍子に真上にいた高良の額に大地の額がぶつかり、二人して「「いってぇ……」」と悶える。
「…む、ムリだよ!マスちゃんに頼んだんじゃなかったのかよっ」
「いや、鬼灯には頼んだけどさ、結局断られたじゃん?だから、宮本、お前にやってもらおうかと思って」
「俺がOKする理由がねぇよ」
「逆に断る理由もないと思うけど?」
高良は相も変わらずニコニコと笑っている。
───大地は息をついて、面倒くさそうに高良を見た。
「ん?やる気になってくれた?」
「どうなっても知らねぇぞ」
「おーけー、無理も承知」
「………わかった」
「いえーい!!」
大地がボソッと呟くと、高良は更に明るい表情になった。
元気だな、と諦めと同時に感心する大地。
「じゃあ明日の放課後!この時間で体育館に集合な!」
「あっ、ちょっと待……っ」
大地が呼び止める前に、高良は凄い速さでその場を去って行った───
「…ったく、のんきなヤツだな」
大地はため息をついて、空を見上げたのだった。