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- Re: 逆ギレマスカット【7話 完結】 ( No.98 )
- 日時: 2013/07/18 19:26
- 名前: 冬の雫 (ID: hAr.TppX)
8 生徒会長とマスカット
「おにーちゃん!」
ドタドタと後ろから明るい声が聞こえ、大地はビクッと体を反応させた。
「───文月」
「おにいちゃん、バスケ部に入ったんだって!?」
「いや、入ったっつーか……」
なんと言ったらいいのか迷っていると、大地の妹の宮本 文月は、「とりあえず、おめでとうおにいちゃん!」と笑顔を輝かせた。
「…あぁ、まぁ……うん」
「お祝いしなきゃだね!」
「…そんなに大事なことか!?」
「うちにとっては大事なの!」
バン、と大地の座っている机を叩く。
大地は内心実の妹に恐怖を覚えながらも、「な、なんで?」と身を引きながら言った。
「だっておにいちゃん、活躍なんて一回もしたことないでしょ?これを機会に、おにいちゃんに人気を集めてほしいと思って!」
「文月……」
なんて心優しい妹なんだ。
そう実感せずにはいられない。
「ありがとう、俺…「うちにも注目集まるからだしね」…えっ?」
大地は文月を見る。
ニコニコと、それはもう天真爛漫な笑顔をしていた。
そして大地は思った。
ああそういえば、こんな奴だったな、と。
★☆★
───弥生先輩に、告白された。
一瞬何を言われたのかよく分からなくて、ただ弥生先輩を見ているだけだった。
───でも、すぐに、弥生先輩がオレに何を伝えたかったのか分かった。
分かってしまった。
「………なんでかなぁー……」
最近は厄介なことばかりだ。
姫島は未だにオレで遊ぶし、大地は姫島を避けてるし。
───弥生先輩からは、告白されるし。
「……はぁーー…」
疲れた体が悲鳴を上げていて、いつものように遅刻している時間帯で校門を通り抜けた。
今は朝。生徒は一時限目中。
完璧な遅刻だ。
(…だって起きれねぇし)
そう開き直って、下駄箱を抜けた。
───すると。
「鬼灯」
そんな声が聞こえて、オレは振り向いた。
───そこには、オレの天敵の……生徒会長。
「また今日も遅刻か?のんきな奴だな」
「ウサミミこそ今は一時限目中じゃね?」
「オレはウサミミじゃない!
オレは生徒会長だからいいんだ」
そういう問題かよ、と呆れながら言う。
“ウサミミ”こと宇佐波 翔(ウサナミ ショウ)は、眼鏡の奥でギロリとオレを睨んだ。
「というかお前、オレは一応先輩だからな?敬語を使え敬語を」
「あんたのこと先輩と思ったことねぇし」
「弥生には使ってるだろう」
「あ?弥生?」
弥生って、弥生先輩のことか。
なんでここで…弥生先輩が…。
やめてほしいんだけど。
「弥生先輩は関係ないだろ」
「オレと弥生は幼なじみだからさ。お前といるのは目につくんだよ」
「意味わからねー…」
やっぱりこいつは苦手だ。
頭が堅いというか、もうちょっと別の角度から物事を見ろっていうか?
…とりあえず、オレは逃げる。
「あっ、待て!」
その声を背中に、オレは廊下を走った。
───弥生先輩の告白を断ったことからの何とも言えない罪悪感に、逃れようと。