コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 地獄はドSの手によって。【アンケート中です♪( ´▽`)】 ( No.110 )
- 日時: 2013/07/29 21:12
- 名前: 冬の雫 (ID: iXLvOGMO)
11地獄女子会
[地獄、商店街]
地獄の商店街のある一角では、朝早くからぞろぞろと女性の妖怪たちが集まっていた。
普段集まることのない振袖姿は実に美しく華やかであるため、男性諸君は立ち止まってその光景をぽーっと見ている。
丁度その時、商店街に偵察に来ていた戒徒が 横にいる小鬼に、三色団子を咥えながら「何があるんだ?」ときょとんと訊いた。
「今日はねぇ、年に一回の女子会があるみたいだよ」
「女子会?」
「そう。地獄の代表の女妖怪が集まって、代表者だけで女子会をするの」
「ふーん」
男である戒徒は女子会の内容は検討もつかない為、興味なさげに帰ろうとする。
すると、丁度三色団子の最後の団子を食べ終わった時に女妖怪のある言葉が聞こえた。
「ねェ女子会ってさ、イケてるオトコは誰かも語り合うんでしょ?閻魔様の使いの戒徒ってのはどうかしら?」
───刹那、戒徒は固まった後、凄い早さで商店街を出て行った。
[地獄、広場]
「舞夢さん舞夢さん!!」
「うるさい」
戒徒がそう叫びながら広場に出て行くと、広場にいた舞夢に一喝され戒徒は途端に黙った。
広場には、舞夢と、その周りに小鬼が何匹か群がっている。
「聞いてください!今日!女子会があるそうなんです!!」
「女子会…?ああ、アレか。どうりで女がいないと思った」
舞夢が周りを見渡す。
言葉通りそこにはひとけがなく、いるとしても男妖怪だけだった。
「そうです!で、その女子会でイケてるオトコが誰かも語り合うらしいんですが」
戒徒はチラッと小鬼を見て、すぐに目を逸らした。
「女子会……隠れて聞いてみません?」
[地獄、商店街]
商店街の小さな某商店。
そこでは、女妖怪が酒を前に女子会を始めているところだった。
「はーいやっと始まりましたー、地獄女子会!
司会は、化け猫代表のわたし鈴娯が務めたいと思いまーす!」
マイク代りの酒瓶を持ちながら、化け猫の鈴娯がそう叫ぶ。
周りの女妖怪は既に酔っ払っていて、「いぇーい」と酒を高々と上げていた。
「まずは女子会の定番!彼氏できた人手ェ挙げろーい!」
「はーい」
鈴娯がそう言うと手を上げたのは、遊女代表の蜂乃。
「えー遊女が彼氏作っちゃっていいんですかぁー」
「そうだそうだー」
「もっと言えー」
「いやぁアタシね、男で遊んでるだけじゃ駄目かなって思ったの…。抱かれるのにも飽きちゃったし」
「ひゅー言うじゃん!で、相手は?」
「えー…!……えっとぉ…、小豆洗いの息子さん…」
「えーーーっ!!めっちゃイケメンな男じゃん!」
キャーキャー言って酒片手に盛り上がる女妖怪たち。
地獄の女子会というのは、やはり酒がないと盛り上がらないのだろうか…。
「ところでさー、イケてるオトコは誰だと思う?」
そう言ったのは、肌の白い雪女。
皆はそれを聞いて、「うーん…」と考え出した。
「やっぱ小豆洗いの息子…?」
「いや、もう彼女もちじゃん。蜂乃め、散々遊び回ってたクセに羨ましい…」
「あはは」
「他に誰かいるー?」
「あっ、戒徒とかどう?」
───その時、商店の外側の窓脇では。
───舞夢と戒徒が(特に戒徒)、耳を壁にくっ付けて中の女子会の様子を聞いていた。
「キタ!俺の話!!」
「なぁもう帰っていい?」
「ダメです!!」
「えー……」
中では、二人が聞いていることなど知らずに、女妖怪が男について熱く語っていた。
「あー戒徒ね。まぁ顔は悪くないわね」
「でもさぁ、最近舞夢さんに引っ付いてない?」
「あーー……」
「ちょっ…、なんで俺舞夢さんに引っ付いちゃダメなの!?」
「それは当たり前だろ。せめて女に引っ付けよ」
「ヤだ!!」
「……………」
それだったら恋愛運対象に見られなくない?と蜂乃が頬を膨らませた。
鈴娯は、「じゃあ舞夢は!」となぜか自信満々に言う。
「舞夢さんねぇ。こっちも悪くはないけど」
「Sってのがいいわよね」
「あーそれわかる!一度S発言 言われてみたくない?」
「あーー!!」
「…俺Sになろうかな…。そしたらモテるかも」
「やめとけお前はドMだ」
「舞夢さんの前だけです!!」
「……………」
「え、じゃあじゃあ、如月は?」
「如月?アノ悪魔の?」
「そう!ヘラヘラしてる人!」
「ヘラヘラしすぎて浮気しそう」
「あーー!!」
「如月…ドンマイ」
「俺悪魔あんまり好きじゃないんで知らないんですが」
「あいつは不法侵入者だからな。見つけたら取り締まっていいぞ」
「イエッサー!」
二人が耳を壁に付けたままそう話していると。
「あなたたちが不法侵入者じゃないの?」
そんな声が聞こえたと同時に舞夢の肩に手が置かれ───舞夢は、背筋に寒気を感じた。
「さーて、そろそろ終盤に差し掛かってきたねー!!」
女子会というよりはただの宴会になり、どんちゃん騒ぎも多く見られた商店内。
鈴娯はそう言って、ぐびりと最後の酒を飲み干した。
そして───
「ねぇねぇ、これって神様からのプレゼント?」
鬼代表のパンチパーマのお婆さんの鬼がそう言って連れてきたのは、縛り付けられた舞夢と戒徒だった…。
「きゃーなんで二人がここにっ!?」
「男来たら宴会になっちゃうじゃーん」
「外から盗み聞きしてたのよぅ。まったくやんちゃな子たち☆」
お婆さんの鬼は ドス、と戒徒の腹部にパンチをかまし、戒徒はうめき声と共に魂を出した。
「あ〜らこっちもいいオトコじゃなぁい」
「……………」
「舞夢さんさっきから無言じゃーん」
女妖怪たちはキャッキャと舞夢の周りに集まってくる。
舞夢は無言のまま、隣にいる戒徒を恨んだ。
「さーこっからが本番よーーっ」
そう鈴娯が叫ぶ。
ここからが───そう、地獄の始まりだ。
第十一話、完
翌日。
(今日舞夢さんと戒徒さんいないね。どうしたんだろ)
(二人そろって寝込んでるらしいよ。悪夢にうなされてる)
(二人に一体何が……)