コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 地獄はドSの手によって。【コメください!】キャラ募集中です! ( No.54 )
- 日時: 2013/07/03 21:48
- 名前: 冬の雫 (ID: b92MFW9H)
6 舞夢の正体【1】【募集キャラ使用!】
ある夜の地獄。
広場では、ゆっくりとした速度で何かが擦れる鈍い音がそこら中に響いていた。
「んん……?」
その音で目の覚めた銘地が、眠たさから目を擦りながら家から出て来た。
───そして銘地は、目を疑う。
「…雷地、彩地っ!来て来て!!」
爆睡中の兄弟二匹を急いで叩き起こし、眠さを訴える二匹に構わず強引に広場に引きずり下ろした。
───そして二匹も、目を疑う。
「……なんだアレ…」
「でしょっ!?」
三匹が目を凝らす。
目を疑ったのは───闇に溶けるような黒の全身ローブの服装ではない。
裸足、だということでもない。
───大鎌を、ずりずりと引きずって歩いているのだ。
小鬼兄弟は無言で、見つめていた。
───すると。
「…おい待て、他に誰かいる…」
彩地が、低い声でそう言った。
二匹は、彩地のその言葉に余計目を凝らす。
そこにいたのは───他でもない、地獄一のサディストで有名な、舞夢だった。
「なんで舞夢さんが…?」
三匹が見ていると、舞夢は闇の中大鎌を引きずり歩く女の前に歩み寄った。
「……誰だ」
低い声で、そう言う。
夜の静寂に似合うその声が、女を少し反応させた。
「……その鎌…死神か…?」
少しだけほっとしたように舞夢が言う。
すると女は、「……お前は…確か舞夢と言ったな」と思い出すように言葉を紡いだ。
「オレのこと知っているのか」
「ああ。私ら死神の中では有名人だ」
「はっ、嬉しくない情報どうもだね」
舞夢は鼻で笑う。
女は、「私は祁衣だ」と男のような口調で言った。
「…?」
「私と、勝負しないか」
「勝負…?」
舞夢が声を発する。
…だが、言い終わる頃には鎌が夜の闇を斬っていた。
「……気が早いな」
「答えは聞かないタチなんだ」
「……そうか」
自分の横にある大鎌を見て、舞夢は呆れるように息をつく。
舞夢が帯から刀を取り出す。
祁衣はピクッと反応して、一歩後ずさりをした。
───刹那、ひゅ、と風を斬る音が聞こえた。
今度は祁衣の顔の横に、細く斬れ味の良さそうな刀がくる。
「……私が女だから手加減をするのか」
「手加減なんかしてないが」
「…だったら、殺られないように注意しとけ」
「ご忠告どうも」
舞夢はそう言って、慣れた手付きで刀を直す。
祁衣は、「これは初対面の挨拶がわりだろう」と目を細めて言った。
「ああ」
舞夢のその言葉を聞いて───祁衣は、口端に笑みを零した。
[地獄、ハウシング]
「ねぇねぇ聞いた!?昨晩のこと!」
地獄───ハウシングでは、朝早くから住人たちがざわざわと集まっていた。
閻魔から頼まれたパトロールで通りかかった戒徒が、「どうしたんですか」と人混みへ問う。
「あなた、舞夢さんの舎弟になったんですよね?」
「…?はぁ……。(まだ決まってないけど)」
「じゃあビッグニュースよ!舞夢さんが、昨晩───」
[地獄、門]
「女性の死神と戦っていたとネ?」
閻魔は目を丸くし、前にいる戒徒を見た。
以前よりかしこまってはいないものの、戒徒は「はい」と丁寧に答える。
「どうやら、そんなに激しいものではなかったようです。『挨拶代わりだ』と彼女は言っていたようですが」
「そうか…。いや、舞夢クンも大分落ち着いてきた頃だと思っていたんだがネ」
「? どういうことです?」
戒徒が話の意が掴めずに首を傾げる。
閻魔は「いや……」と控えめに言った。
「これは私と舞夢クン本人、如月という悪魔、そして死神しか知らないんだがネ…」
「いいです、言ってください」
ここまでくると気になるじゃないですか、と戒徒が言い張る。
閻魔は困ったように眉を下げるが、次にはのっそりと言葉を紡いでいた。
「君がまだ来ていなかった頃かネ。
……舞夢くんは実は、5歳くらいの頃 死神によってココに連れてこられていたんだネ」
戒徒は耳を疑う。
閻魔は「つまり」と目を閉じて首を振りながら言葉を紡いだ。
「つまり?」
「……舞夢くんは、今も昔も、地獄に元から住んでいる妖怪ではない。
───……“人間”なんだ。」
第六話、完