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Re: 白銀の巫女姫 【オリキャラ募集中!!】 ( No.48 )
日時: 2013/07/23 22:03
名前: シア (ID: 0cRf5/D/)

第十二話

私はジルキヴィルの背の上から地上を眺める。
隣にはイアルを背に乗せたシュヴィルが飛翔している。
四天竜達が羽ばたく度に、一つに結った白銀の髪が風に靡き、私の心の中の不安を煽っていく。
彼にはああ言ったけれど、怖いものは怖い。
なんせ私とイアルが向かっているのは、死が待つ場所。
私は彼を命をかけて護りたい。
彼だって、そう思っているはず。
戦場と一括りにしてしまえば、もし、戦う場所が同じだったら、護れたかもしれない。
けれど、戦う場所が違いすぎる。
私は天空で、彼は地上で。
もし、魔法の類、ドラゴンの属性ブレスが地上に当たったら。
それを想像するだけでも鳥肌が立つ。
けれど、もし、そうなってしまったら。
最悪の場合。





死なせてしまったら……………………………………………………





私は生きていけくなってしまう。
誰だってそうだ。
大切な人を失って、正気を保てる人など居ない。
人は、誰だって一つの命を持ち、この世に生を授かる。
そしていつか、大切な人を見つける。
その大切な人が戦場に行くとなった時、自分はどう思うのだろう。
…………………………考えたら、簡単なことだった。
私は必ず、自分の命を犠牲にしてイアルを助ける。
自分の命を犠牲にして、彼を生かしたい。
その願い虚しく死んでしまえば、私は三つの選択肢のどれかを選ぶ。
けれど、この三つの選択肢は、どれもがイアルが止める方法でもある。
一つは、後を追い、自殺を図ること。
全力で四天竜達は止めようとするだろうが、私は四天竜達の盟約者。
言わば、彼ら四天竜達の主。
結果として、私を実力行使で止めようとはしないだろう。
もう二つは、魔法の類に当たるが、二つとも禁術とされている禁忌の魔法だ。
一つは蘇生魔法。
その名の通り、命を体に戻す魔法。
命だけでなく、肉体を無傷の状態で再生することも可能。
が、この魔法の使用者は魔法を使った代償として、自らの命を捨てることになる。
故に禁忌の魔法として、魔導師達の間では、使用することは禁じられている。
最後の一つは禁忌の中の禁忌、悪霊魔法。
これは、天から命を呼び戻し、永遠に自分のしもべとして使用する魔法。
蘇生魔法と同じくして、肉体を再生することも可能。
蘇生魔法と悪霊魔法の違い。
それは、魔法をかけた相手の心。
蘇生魔法なら、死ぬ前の心も、感情も、命と肉体と共に戻ってくる。
それに対し悪霊魔法は死ぬ前と同じ命と肉体は戻ってくるけれど、心も感情も無いただの人形のようになり、使用者に絶対の服従を誓う。
言わば、魔法の使用者の言葉には必ず従うということ。
結果、命の尊厳を踏みにじっているということになる。
故に、この悪霊魔法は禁術とされている。
私は、イアルの命を踏みにじりたくない。
それに悪霊魔法は、使用者の心を狂わせ、正気ではいられなくなる。
悪霊魔法を一度使えば正気を保てなくなり、禁忌の魔法をもっと使用したいという欲が生まれ、終いには他の禁忌の魔法などに手を染めるという。
そんなこと、イアルは望まない。
私は、イアルが望まないことはしたくない。
これらの結果から、私とイアルは、自滅する道しか無いということ。





認めたくない





私の心をもっと煽る事実に、私は目を背けることしかできない無力な存在だと、改めて悟ったのだった。