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- Re: 白銀の巫女姫 【オリキャラ募集中!!】 ( No.56 )
- 日時: 2013/08/01 21:30
- 名前: シア (ID: 0cRf5/D/)
第十三話
ひとしきり泣いたあと、ジルキヴィルに飛翔を開始するように言った。
飛翔を開始すると、一つに結った白銀の髪が風に靡き、空に登った太陽に反射して輝く。
それから、私とジルキヴィル、カーディナル、イグドラシルは会話をせずに、ただひたすら飛翔をしていたその時だった。
「お前が〈忌まわし姫〉か。確かに、噂通りだな」
背後から聞こえた声に、ジルキヴィル達はその巨体を反転させる。
「お前………誰だ」
私は怒気を含ませた声で、問う。
少し長い金髪で、藍色の瞳を持つ彼に。
何処かで見たことがある姿に、何処かで聞いたことがある声に。
「そんなに怒らなくてもいいんじゃねぇの?」
「だったら名を名乗りなさい!」
私は、ジルキヴィルの背の上で私は立ち上がった。
そして、背後で魔法陣を展開する。
いつでも、戦闘ができるように。
「スティール・セラン・フェブロム。フェブロニアの第一王子で王太子だよ」
呆れたような声を出す、フェブロニアの第一王子で王太子と名乗った青年、スティール・セラン・フェブロム。
大体の予想はついていたけれど。
「驚かねぇのな」
「予想はついていたから。あと、貴方魔法が使えるのね」
「この魔法だけだがな。主に弓だけどな」
「今は愛用してる弓は無いのね」
「まぁな」
予想通りの返事だった。
なんせ彼の背には、矢が見当たらなければ、弓だってない。
攻撃のチャンス。
だが、
「俺は戦闘をしにきたわけではないぜ?」
「じゃあ、何のため?」
戦闘をしにきたわけではない、と聞いても、魔法陣を解く気にはなれない。
そう簡単に気を許せない相手なのだから。
なんせ、隣国であり敵国でもあるフェブロニア王国の第一王子で王太子なのだから。
一発魔法陣を撃ちたい所だが、彼の戦意がなければ、私は何もできない。
戦意がない者に、戦いを挑んでも、何の意味もない。
「宣戦布告………って言うより、戦況の報告だな」
「………何ですって?」
「第一王女のエーヴ・シュトラ・フェブロムは知ってるか?」
「えぇ」
「そいつが〈アイドル〉を出してきたぜ」
私は顔面蒼白になっているだろう。
「ち、〈超戦闘形態〉ですって!?」
「そうだよ。ま、まだエーヴしか出してないから安心しな」
「安心なんてできるわけないでしょう!?」
フェブロニア王国が王族一人一人に与えられたという〈超戦闘形態〉。
それは恐るべきもので、それを纏えば国一つを一回の攻撃で滅ぼす程の威力を秘めた鎧。
私はその事実に、声を荒げた。
「そんなものを使ってまで、ヴァイシュバル皇国の土地を手に入れたいの!?こんなことをして土地を手に居れても、国民の傷は癒えることはないわ!」
「………俺らの目的は国じゃねぇよ」
「じゃあなんなの!?」
「今は教えられねぇな」
「………っ!………〈聖火〉!!」
私は魔法陣から無数の火球を生み出した。
もう、知らない。
何を言われても。
「行けっ!」
私の言葉で、一斉に飛ぶも、すべて避けられた。
「じゃあな。また戦場でな」
そう言うと、戦場へと向かって逃げられてしまった。
〈超戦闘形態〉………。
急がなければ………!
私はジルキヴィルに飛翔を開始するように命じた。
全速で飛ばすように。
胸に込み上げる不安を抑えながらも、あの第一王子の言葉が脳裏に焼き付いて離れなかった。