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Re: 白銀の巫女姫 【オリキャラ募集中!!】 ( No.60 )
日時: 2013/08/04 22:47
名前: シア (ID: 0cRf5/D/)

第十四話

私が展開させた魔方陣は、炎、水、草、風、雷、氷の属性。
全て、スティールに向けて。
「今………何て言ったの?」
「何度も言わせんな」
「私が………王太子妃になることですって?」
「ああ」
ジルキヴィルの背の上で立ち、頭を俯かせていた私は、涙の幕が張る顔を勢いよく上げた。
「そんなことっ!どうしてそんなことを要求するのよ!!」
そう叫ぶと、スティールはため息をこぼした。
その余裕に、私は焦る。
「先代の両国の王が仲がよく、友好関係を結んでいたのは知ってるか?」
唐突な問いに、私は一瞬考える。
私の、お祖父様の代。
厳しくありながら、優しかったお祖父様。
幼き頃は、よくお祖父様の話を聞いていた。
そう。
その中にあった。
私に関わる話が。
ずっと忘れていた。
あの話。
「思い出した…………………………」
私は呟いた。
「何をだ?」
スティールが問う声も、遠くに聞こえる。
「お祖父様が言っていたわ。隣国のフェブロニア王国の第一王子の王太子に、私をいずれ嫁がせることになるだろうと、幼き頃に、言われた………」
「思い出したか」
どうして、忘れていたのかしら。
こんな大事なこと。
それ以前に、この戦が起こったのは、私を王太子妃にするため。
まさか。
「皇帝と皇后が、了承しないからこの戦を起こしたというの?」
「当たりだ」
「………っ!」
私は息を飲んだ。
ということは。
次に思い浮かんだ予想外のことを声に出すのに、口が震え、声が震える。
「皇帝と皇后は、この約束を知らないということ?」
「そうだろうな。文を送り、その返答の文の言葉からしてそうだったからな」
私はその事実に言葉を失った。
自分のことなのに、忘れていた私も愚かだが、それを伝えなかったお祖父様の真意が掴めない私も、愚か。
…………………………いいえ。
愚かなのは、私だけ。
お祖父様は愚かでは、ない。
「…………………………認めない」
「あ?」
「私は!そんなこと認めないっ!」
その言葉と共に、展開された魔方陣から攻撃を繰り出す。
涙を流しながら。
炎からは火球を、水からは濁流を、草からは相手を縛るツルを、風からは竜巻を、雷からは青い稲妻を、氷からは氷柱を生み出して。
けれど。
それを全て避けていく。
「けど、これは条約なものだ。お前にも、俺にもどうすることも出来ない」
私は、大切な人を思い浮かべた。
浮かび上がったのは、あの人の笑顔。
国が、大切な人が、目の前で奪われるのは嫌。
だから。
あなたを裏切る。
そばに居たい。
この思いは変わらない。
でも。
あなたを守るためなら。
私は自分を犠牲にする。
「解ったわ」
「は?何が」
私は頬を伝う涙を拭い、スティールを睨んだ。
そして。
震える口で、声で、言葉を紡ぐ。





「貴方の国に、王太子妃として、嫁ぐわ」





私の出した答えに満足したのか、スティールは口角を上げた。