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Re: 白銀の巫女姫 【オリキャラ募集中!!】 ( No.7 )
日時: 2013/06/25 22:52
名前: シア (ID: 0cRf5/D/)

第二話

なにはともあれ、無事、謁見の間に辿り着いた。
私は、謁見の間のすぐそばに居る兵士に声をかける。
「皇帝陛下にお取り次ぎを」
兵士は一礼し、その場を足早に去り、謁見の間の近くにある、小さい扉を使い、中に入って行った。
行動があからさまに解りやすい。
「フィーア皇女陛下、斬って参りましょうか」
物騒な事を言うのは、イアルだった。
この場でこんな物騒な事を言うのは、四天竜達か、イアルしか居ない。
「いいわよ。いつもの事だから」
『フィーア』
今度は、私の心に響く声。
この声は、イグドラシルのもの。
「なぁに?」
『じき、よくない事が起き、そなたも巻き込まれる。充分に注意を怠らないように』
「解ったわ」
イグドラシルは言い終えたら、私の空いている左肩に乗って来る。
いつの間にか、四天竜達が集まっていたみたいだ。
ジルキヴィルとシュヴィルは私の周りを飛んでいる。
「フィーア皇女陛下」
「どうかした?ミラージュ」
「謁見が済んだら何をしますか?」
「庭園でお茶を飲むわ」
「解りました」
そう言い終えたら、ミラージュは一礼した。
やがて、さっきの兵士が扉から出てきた。
そして、重々しい謁見の間の扉を解放した。
私は、歩みを進める。
謁見の間の中央に辿り着くと、重々しい扉が音をたてながら閉まった。
「下がれ」
威圧感を含むその声の主は、玉座に座り、この国の政治を行う、ヴァイシュバル皇国現皇帝、ゲイル・ギル・シュヴァルツヴァイス。
その傍らには、皇帝の補佐として、政治に関わる、ヴァイシュバル皇国現皇后、シラヴィル・リィル・シュヴァルツヴァイス。
そう。
私の父君様と母君様である。
父君様の命令により、私達以外のーこの場では、私、ミラージュ、イアル、四天竜達の事を指すー者達は、謁見の間の奥にある、小さな、それでいて大人が背筋を伸ばしたまま通れる大きさの扉から、ぞろぞろと出て行く。
小さいと評したのは、単に、謁見の間の扉と比べたから。
こうやって人払いをするのは、わたしの為。
別に、秘密裏な話をするのでは無い。
謁見の間で、私と父君様が話した事が漏れないように。
また、私が、これ以上理不尽な噂で、傷つかないように。
そんな、父君様と母君様の意が込められている。
私は、謁見の間に居た者達が、全員退室し、完全に扉が閉まったのを確認してから、口を開く。
「御呼びと伺い、参りました」
その言葉が私の口から紡がれるや、イアルは右膝を床に付け、ミラージュは深く一礼し、頭を垂れる。
「よい。ミラージュ、イアル、頭を上げよ」
父君様の言葉に従い、二人は頭を上げ、元の体制に戻る。
本来なら、二人の主である私の謁見が終わるまで、二人は頭を垂れて居なければならない。
が、ミラージュとイアルは例外だ。
それは、私の心を知る者達だからだ。
私は、生まれた時からそばに居る、ミラージュとイアル、そして、父君様と母君様、四天竜達以外には、心を開いていない。
家族にも、親族達にも、貴族達にも、皇宮で働いている者達にも、心を開かない。
私が心を開いているのは、私が命をかけて護りたいと願う者達。
それを父君様と母君様は知っている為、配慮をしてくれるのだ。
「来るのが遅かったな、フィーア」
「少し足止めを喰らいましたので………」
そこまで言うと、父君様も母君様も気付かれたようだった。
「またフィアレスイルですか」
「はい」
母君様の言葉に、私は肯定する。
「フィアレスイルにも困ったものだ………。どうしてこうも姉妹で性格が境遇が違い、性格が違うのだろうか」
「父君様。私は気にしておりません。私は大丈夫です」
そう言って、私は微笑んだ。
そして、父君様から私を呼んだ理由を聞き出す。
「あの、父君様。私を御呼びになったのには、理由があるのでしょう?」
そう私が言うと、母君様の顔から笑顔が消えた。
それは、私にとっても、父君様にとっても、母君様にとっても、辛い選択をした事を物語っていた。
「フィーア、よく聞きなさい。今、この国が、隣国のフェブロニア王国と戦をしているのは知っているね?」
「はい。存じております」
今この国は、隣国のフェブロニア王国と戦をしている。
それは、フェブロニア王国がこの国の領地を奪う為だと、この場で一ヶ月前に教えて頂いた。
双方、天空ではドラグーン(竜騎士)と、ドラゴンと盟約を結んだ乙女達(竜の巫女)が、地上では、互いの国の戦士達が、魔導師達が、何万人という規模で、戦っているという。
だが、圧倒的にフェブロニア王国の方が優勢らしく、こちらは劣勢を強いられている。
「そのため我は、フィーア、そなたと四天竜達の力を借りたい」
その言葉に、私は驚いた。
それが意味するところ、つまり、父君様は、こうおっしゃったのだ。
私が戦場に行く事を望んでいるという事だった。
私が戦場に出た事は、一切ない。
けれど、いつか、こういう事が言われると、覚悟を決めていた。
「フィーア………無理をしなくてもいいのよ?貴女の意思で、これは決まるのだから」
私は、俯いていた顔を上げ、父君様を見て、母君様を見て、微笑んだ。
「行きます。私の力が、役に立つのであれば」
「「っ!!」」
父君様と母君様が、息を飲んだのが解った。
「フィーア………断っても…」
私は、首を横に振り、母君様の言葉を遮った。
「いつかは、そう言われる事を、覚悟しておりました。故に、私は戦場に赴くのです」
私は、意を覆さなかった。
私は、命をかけて、護りたい。
父君様と母君様。
ミラージュとイアル。
そして、四天竜と共に、戦い、生き残りたい。
明日を生きるために。
この世を生き抜くために。
「そなたがそう言うのであれば、我は止めぬ」
母君様の瞳には、涙の雫が溜まっていた。
そして、父君様は座っていた玉座から、立った。
「フレミアイル・フィーア・シュヴァルツヴァイスに四天竜の加護があらん事を」
その一言は、謁見が終わった事を、意味していた。