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Re: 白銀の巫女姫 【オリキャラ募集中!!】 ( No.8 )
日時: 2013/06/25 22:54
名前: シア (ID: 0cRf5/D/)

第三話

私は、当初予定していた庭園には行かず、自室へと戻った。
呑気にお茶をする時間が無いとでも言うように、今の状況がそうさせてしまった。
「フィーア皇女陛下!なぜあの話を御受けになられたのですか!?あの話は貴女様の命がかかっているのです!なぜ…っ…なぜ…っあの話を…」
自室に着き、広い部屋の大きな窓の近くに置いてある椅子に、私は腰掛けた。
声を荒げているのは、イアルだった。
ここまで感情を露わにするのは、私にとっても、始めての経験だった。
「ミラージュ」
「はい」
「少しの間、席を外してくれないかしら?」
「承りました」
ミラージュは一礼し、部屋を出て行った。
そして、扉の外からミラージュの気配が無くなったのを確認してから、私は口を開いた。
「イアル」
「………はい」
「貴方が声を荒げるのは、よく解るわ。でも、私は、命をかけて護りたいの。父君様と母君様。そして、ミラージュと貴方を」
「フィーア皇女陛下………」
私は、自分の素直な気持ちを、決意を、イアルに話した。
イアルの、済んだ空色の瞳を、見つめながら。
「私が戦に出れば、四天竜達の封印を解放し、戦う事ができる。それは、四天竜達と盟約を結んだ時から、ずっと思っていた事。だからこれが、私の定められた運命。それに………」
私は、イアルの瞳から、視線を自分の膝の上に落とした。
私の膝の上に乗り、スヤスヤと眠っている四天竜達の内のイグドラシルを、私は、優しく撫で続ける。
「イグドラシルからも言われていたの。じきに、よくない事が起き、私も巻き込まれると。………イグドラシルの予知は絶対だから。まさか、こんなに早いとは思っていなかったけれど。でも、私も驚いたわ。何せ内容が内容だから。でもね、イアル」
私は間を空けて、言葉を紡いだ。
もう一度、視線を、イアルの瞳に戻した。
「後悔はしていないわ」
「っ!」
イアルが息を飲むのが、この静寂に包まれた部屋の中では解る。
そしてイアルは、悲しそうな表情になると、顔を俯かせた。
それに私は、苦笑した。
「予知の全てが、運命だとは言わない。でも、予知はいつか必ず、どんな形だろうと現れる。それが予知。私の場合は、予知が現れたのが、早かっただけ。どんな理由であれ、どんな形であれ、私の予知だから、現れたの。戦と言う、不吉なもので」
私は、自分の右手で、イアルの右手を握った。
その行動に、俯いていたイアルの顔が反射的に上がり、イアルの空色の瞳が、私の瞳を捉えた。
私は微笑んだ。
「私は大丈夫。だから、心配しないで?」
「そうじゃ…そうじゃない!!」
イアルは、口調が変わった。
あの、幼い時みたいに。
「え?」
「フィ!俺は…」
フィ。
何年ぶりに聞いたのだろう。
それは幼い時に、幼馴染のミラージュとイアルから呼ばれていた愛称だった。
「俺は、フィのことが、小さい時から…好きなんだ…!」
…………………………。
私は、思考が停止して、何も考えられなくなった。
「嘘っ!嘘っ!」
私は、反射的にそう言っていた。
私の頬は、朱に染まっていることだろう。
いや、絶対朱に染まっている。
私は、両頬を両手で抑えていた。
…………………………熱い…………………………。
ふと、イアルを見ると、イアルは耳まで朱に染まっていた。
それを見たら、私は、余計にイアルを見れなくなってしまった。
「あ…フィ?」
「な、に?」
「待つから、ゆっくり考えて、答えを出して?」
「……………うん…解った」
私が頷くと、イアルは、部屋から出て行った。
「ど…どうしよう………」
その日私は、なかなか寝付けなかったのでした。