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- Re: 白銀の巫女姫 【オリキャラ募集中!!】 ( No.9 )
- 日時: 2013/06/25 22:56
- 名前: シア (ID: 0cRf5/D/)
第四話
私は今日、いつもの時間に起きられなかった。
それもこれも、イアルのこっ、告白のせい!!
ちなみに、私は今着替え中だ。
ミラージュもイアルも、部屋には居ない。
身の回りの事は、一通りミラージュに教えてもらったため、家事は得意だ。
今日は、青を基調にしたドレス。
スレンダーラインの、装飾なしの、シンプルなドレス。
「入って来ても構わないわよ」
そう言うと、ミラージュが先に入って来た。
イアルが入りかけたのを、私は止めた。
…………………………今は会いたくない…………………………。
だから私は、無理矢理に、強引に、強く、強調した。
「イアルは、入って、来ないで!!!!!」
イアルは驚いた顔をしていたが、渋々という感じで、部屋から出て行った。
「あの………フィーア皇女陛下?」
私は、椅子に腰掛けた。
そして、口を開いた。
「ミィ」
ミィ。
それは、ミラージュの愛称。
私がミラージュの愛称を呼ぶ時は、ミラージュに今だけは、幼馴染でいて、という合図。
「どうかしたの?フィ。イアルを部屋に入れないなんて。珍しいじゃない」
「そっ…それは………」
私は顔を朱にしながら、口ごもった。
ミラージュは、首を傾げるばかり。
『昨日、イアルとこの部屋で二人きりになった時に告白されたらしい』
「あら、ジルキヴィル」
「なっ、何を言って!!」
『だから今は会いたくないらしい』
「今度はシュヴィル?」
もう割り込んだら、自分が恥ずかしい思いしそうだから、やめる。
『昨夜に眠れないからとかで聞かされたわ』
「次はカーディナル?」
あぁ。
私のプライバシーが壊れていく。
『そんな悩める乙女の相談に乗ってほしいそうよ?ミラージュ』
「イグドラシルだけだね。的を射た事を言ってくれたのは」
もう、駄目だ。
「ジルキヴィル、シュヴィル、カーディナル、イグドラシル」
『『『『何だ?』』』』
「あとで血祭りね?」
私が、思いきり怒気を含んだ声でそう言うと、部屋に居た四天竜達は、開け放っている大きな窓から、飛翔して行った。
「で?どういう事?説明してもらえる?」
「小さい時から好きなんだって言われたの………」
私は、少し間を空けて言葉を紡いだ。
「でも…自分の気持ちが解らないの………。どうしていいのかも解らなくなっちゃって………。だから、さっきはあんな態度を、思わず………」
ミラージュは、私の両手を、自分の両手で包み込んだ。
それは、とても暖かくて。
温もりがあって。
心が、少しずつ落ち着いていく。
「フィ」
そして、綺麗な、澄んだアメジスト色の瞳を、私の瞳を真っ直ぐに見つめた。
「私には何も言えない。でも………」
ミラージュは、少し間を空けてから、口を開いた。
「貴女の気持ちは貴女のものでしょう?だから、貴女は、あるがままの貴女の気持ちを、イアルに伝えればいいじゃない。貴女の気持ちを、彼は理解してくれる。ありのままの貴女でいる事が、イアルにとって、一番嬉しい事だと、私は思うな」
「あるがままの、私の気持ち…………………………。ありのままの、私…………………………」
そう言い終えた私を見届け、御役御免とでも言うように、ミラージュは部屋から出て行った。
その言葉を呟いた私の心には、今まで、イアルと過ごして来た思い出が、蘇った。
一緒に笑いあった日々。
一緒に喜び合った日々。
一緒に支え合った日々。
一緒に泣きあった日々。
一緒に悲しみあった日々。
イアルと一緒に居た、一つ一つの思い出が、鮮明に蘇って、私は、初めて気づいた。
私がいつも、イアルを見つめていた事に。
私がいつも、イアルを追いかけていた事に。
私がいつも、イアルの喜びを自分の喜びの様に喜んでいた事に。
私がいつも、イアルの悲しみは自分の悲しみの様に悲しんでいた事に。
そして、一番大切な事に、気づいた。
私が、イアルのことを、愛しているという事に。
私が、イアルのことを、慈しんでいるという事に。
「…………………………っ!!」
そして、私は、その事実に、涙を流した。
私はひとしきり泣いた後、ミラージュにイアルを呼びに行かせた。
庭園に、来るように、と。
御察しのとうり、イアルからの告白の返事をする為。
ミラージュの言葉で、私は路(みち)を間違えなかった。
ミラージュに言わなければ、私は、自分の気持ちに、こんなに早く気づく事はなかった。
ありがとう。
本当にありがとう、ミラージュ。
しばらくして、イアルが庭園に来た。
「フィ?」
私は、イアルに背を向けたままだった。
恥ずかしい………。
普通に話しかけれるのがすごい。
一応、褒めてるつもり。
「いっ、一回しか、言わないからね」
「あぁ」
私は、イアルの方に向き直り、頬を朱に染めながら、返事をする。
もしかしたら、一生、気づきたくなかった気持ちかもしれない。
私は、一応皇女で、〈忌まわし姫〉と呼ばれて。
イアルは、セリファス家の跡取り。セリファス家は、有名な大公を進出している名家。私を、受け入れてくれるわけがない。
たとえ、イアルが私を望んだとしても。
けれど、私は、伝えたい。
私の、素直な気持ちを。
「私はね、イル」
イル。
何年ぶりに言ったのだろう。イアルの幼い時に呼んでいた、愛称を。
「私は、イルのことが、好きです」
一言一言、大切な言葉のように、言葉を紡いだ。
イアルは微笑み、私の方に歩みを進めて来た。
そして、私を抱きしめ、耳元で囁いてくる。
「俺も、好きだよ。フィ」
私は、その言葉を聞いて、瞳に涙の雫が溜まって、一粒の涙が頬を伝った。
「………っ!」
知らなかった。
想い合う事が、こんなに嬉しくて、こんなにも溢れ出る気持ちがある事に。
そして、涙が出る程に、嬉しい事に。
「なに泣いてるの?」
私の顔を覗き込んで、そう言った。
「泣いてなんか、ないもの」
涙を拭いながらそう言う私に、イアルは苦笑した。
「でも、周囲には、隠さなきゃいけない。ミラージュはともかく、ね」
私がそう言うと、イアルは、
「なら、会う時は、この庭園で。どう?フィ」
「それでいい。イルに会えるのなら」
「あぁ」
そして、イアルはまた、抱きしめた。
さっきよりも、少し、強い力で。
私は、そんな、イアルの鼓動を聞きながら、イアルの温もりを感じ、この上ない幸せを、感じていたのでした。
