コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
- Re: 紫は私の道をかえるカギ ( No.76 )
- 日時: 2014/03/14 23:10
- 名前: チャルトン (ID: axyUFRPa)
涙は止めようとしてもなかなか止まってはくれない。
回りの人はどうしたどうしたとざわざわと騒ぎ始めた。
ダメだ、早く涙を止めなきゃ………
そのときだった。
「実衣菜?」
………私の名を呼ぶ声。
その声に私は顔をあげる。
たくさんの人の中から声の主を探した。
「やっぱ実衣菜じゃん。」
一人、見覚えのある顔が。
「なんか、久しぶりだね」
人の目を惹く茶色がかった髪。
私よりひとあたま分くらい高い背。
「……慶…ちゃん……?」
安堂 慶一。
私のひとつ年上の幼馴染み。
小さい頃はよく遊んでいた。
慶ちゃんは私と同じ学校の二年生だ。
家も隣なのに最近はまったく顔を会わせることがなかった。
「なに?泣いてるの?」
「な、泣いてないよ!!」
首をこれでもかというように横にふる。
「………実衣菜、誰?そいつ。」
さっきまで黙っていた永輝が口を開いた。
「あ、え…と、私の幼馴染みの安堂慶一くんです…。同じ学校の二年生なんだけど知らない?」
「あー、なんか見たことある気がするかも。バスケ部のエース?」
永輝は慶ちゃんを見ながらそう言った。
「そ、そう!慶ちゃんはバスケがすごいの」
「実衣菜。俺にも彼を紹介してよ。まさか、君の彼氏…?」
慶ちゃんは永輝を睨んでいる。
険悪な雰囲気があたりを包んでいた。
「か、彼氏なんて!そんなんじゃない…よ。」
最後の方はどんどん声が小さくなってしまった。
いつのまにか止まりかけていた涙がまたこぼれ落ちそうになった。
「クラスメイトの、永輝だよ。」
“クラスメイト”
自分で言っておいてなぜか胸が痛んだ。
この痛みで私は実感する。
ああ、私はやっぱり永輝のことが……
「ふーん?ただのクラスメイトには見えないんだけどな」
慶ちゃんは怪しそうな目でそう言った。
ボソッ
「“アイツ”が遠くにいったからって油断してたけど……」
……え?
何て言ったのかよく聞こえない。
「実衣菜、俺の気持ち忘れたわけじゃないよね?」
慶ちゃんの…気持ち……?
「気持ちって…?……あ!!」
思い出した。
それと同時に自分の顔が赤くなるのがわかる。
「そう。実衣菜が里桜と付き合ってるときに言ったアレだよ。」
慶ちゃんはにこりと笑っていった。
「…里桜?」
永輝は呟く。
誰だ、それ と。
そんな永輝を無視して慶ちゃんは言った。
「今も気持ちは変わってない。…好きだよ、実衣菜。」
- Re: 紫は私の道をかえるカギ ( No.77 )
- 日時: 2013/10/09 23:17
- 名前: チャルトン (ID: qiixeAEj)
突然の言葉に野次馬たちはざわついた。
「青春だねぇ〜」
「いいなぁ、あんなカッコいい人に好きって言ってもらえて」
「羨まし〜」
いろんな声が飛び交う中、私はただ慶ちゃんを見つめることしかできなかった。
…よみがえる記憶。
中2のある日だった。
その日は雨が降っていて私は傘をささずに家に向かって歩いていた。
家の前には慶ちゃんがいて、急に抱き締められたのだ。
現状についていけなくて慌てていると慶ちゃんが耳元でささやいた。
『好きだ』
小学校の頃から…ずっと前から好きだった
“アイツ” なんてやめて俺にしろよ
そう言って涙を流していたのだ。
返事はNO。
私は“アイツ”のことが大好きだったから。
それからあまり顔を合わせる機会が少なくなって。
私が中3で慶ちゃんが高1のときに一度だけ顔を会わせたくらいだった。
………あれから二年はたっている。
もうとっくに他に好きな人ができたと思っていた。
なのに慶ちゃんは今も私を好きだと言っている……。
普通なら喜ぶべきなのに、なぜか悲しくなったのだ。
「……永輝…くんだっけ?これからよろしくね。いろいろと。」
そう言って慶ちゃんはにこりと微笑んだ。
それを永輝はずっと睨み続けていた。
「三角関係か〜」
「いいなぁ、いいなぁ!あの女の子!」
「ねぇねぇ、あんたはどっちが好み?」
「うーん、私は茶色がかった髪をした好青年っぽい人かなぁ」
「えー!私は黒髪の方のちょっとやんちゃそうな子がいいけどな!」
ざわざわと相変わらずまわりはうるさい。
「あの…さ、話ならこんな場所で話さないで学校で話さない…?」
こんなに視線を集めるのはもう我慢の限界だ。
恥ずかしくて、死にそう。
私がそう言ったときだった。
「なんだぁ〜!実衣菜と小倉くんじゃん!」
人混みを掻き分けて人が現れたのだ。
愛奈だ。
「人だかりが出来てるからなんだと思えば……」
……愛奈はある人に気づくと急に黙り混んだ。
「あれ?愛奈じゃん。久しぶりだね」
「…ッ…け、慶一…さん……」
愛奈の顔は分かりやすいくらい青くなっていた。
…どうしたんだろう?
「なんで…ここに?」
愛奈が首をかしげながら慶ちゃんに問う。
「偶然ここを通りかかったんだよ。そしたら実衣菜が泣いていたから」
「え!?実衣菜、泣いてたの?」
慶ちゃん!また余計なことを!
「え、えーと…。目にゴミが入っちゃって…アハハ」
目にゴミとか…無理があったかな…?
愛奈は私がそう言うと不適な笑みを浮かべ、
「…よかった。計算どおーり♪」
長いふわふわとした自分の髪を手で弄びながら小さな声で言ったのだった。